Facebook、Microsoft、Kik、Telegramなどが先日発表したチャットボットは熱狂的な支持を受け、消費者と直接チャットを行うビジネスツールのゴールドラッシュが始まった。このような新しいチャットボットの登場により、多くのスタートアップがすべての領域に対応できるスーパーボットの開発に取り組み始めた。
しかし、近頃発表されたボットの多くはインパクトに欠けている。
新しいチャットボットサービスSensayはスーパーボットではない。だが、ユーザのどんな依頼に対しても厳選された人物が対応するこのチャットボットのユーザ数は主にSMSベースのサービスだけでも100万人を超えており、共同設立者でCOOのCrystal Rose氏によるとその数は増える一方だという。
同社は着実にトラクションを獲得している数少ないボット企業のひとつだ。
Sensayの仕組み
どのような使い方をするのか見てみよう。SMSやSlack(また現時点ではKikでも)で登録すると、Sensayはどのような分野、話題や要望に応えてほしいかなどを質問する。その後、具体的に依頼内容を記入する(内容について調査が始まるが、軽いかんじで、このプロセスでお互いの摩擦が起こり過ぎないようになっている)。
例えば、クリエイティブデザイナーにロゴの制作を依頼したいと入力したとしよう。Sensayはその依頼内容を認識し、データベース上のクリエイティブデザイナーや要望にマッチする人物を紹介してくれそうなSensayメンバーに呼びかける。該当人物がチャットに応じれば、コネクションは完了だ。
同社によると、コネクションにかかる時間は平均90秒以下だ。
同社の発表では、Sensayは近日Facebook MessengerやTelegramでも使えるようになるという。
つまり、どのチャットプラットフォームからも使えて、どんな質問にも対応し、適切な人物に繋げて実際の人間が質問の回答を得る手助けをしてくれるのだ。
毎月倍増しているユーザ数
カリフォルニアのベニスビーチに拠点を構える同社によると、プラットフォームでメッセージを送る人の数は継続的に増加しており、9月にSensayの公式ベータ版をローンチしてからは毎月倍のスピードで増えている。ただし、トラクションを得ているメトリックは他にもあり、ユーザがメッセージを送る頻度は高くなり、メッセージを送る間隔は短くなりつつあるとRose氏は語る。
秘訣があるとすれば、それは同社が早い段階で、ファウンダーたちがお互いに助け合っているロサンゼルスのスタートアプコミュニティに足を踏み入れたことだろう。このサービスにおけるイノベーションは、Sensayがすべてを制御する仲介役ではないということだ。メッセージングが実際にはP2Pで行われるコミュニティでチャットインターフェイスが活用されているのだ。
秘訣は「P2P」
一通りのチャットが終わると、Sensayはお互いを評価するよう両者に呼びかける。Uberにおける乗客と運転手のレーティングと同様、Sensayの評価によって信頼性が高まるのだ。評価が低ければ誰も見向きはしない。スコアを落としたくないので嫌がらせをする理由もない。
アプリ開発者のSri Pulakanam氏は定期的にSensayで仕事を請け負っていると感想を述べている。ある時、ユーザの質問に答えて連絡先を交換したところ、自身がテクノロジー部門のトップを務めるテックエージェンシーNeurlabsで6ヶ月35万米ドルの開発プロジェクトを手掛けることになったという。Sensayは次週、彼の体験をブログポストで紹介する予定だ。
Sensayは常時質問に答えてくれる人手を十分に集めてスタートしているので、このサービスが浸透しても回答を得られずがっかりするということは起こらないだろう。多くのネットワークが直面する、「鶏が先か、卵が先か」という例の問題だ。
実際、同社には特定の質問に対して回答できるユーザ数が一定のレベルに満たない「sub-Sensay」と呼ばれる領域がある。同社によるとその割合は約8%であり、Sensayはユーザに別の機会に再度試すか、依頼の言い方を変えてみるようアドバイスを送っている。
Sensayの課題は、今後どのように拡大していくかということだ。
Rose氏が言うには、メッセージの半数はクーポンコードやアフィリエイトリンクといった「商業的」商品で対応できる。例を挙げると、SensayにLyft(初回利用20%割引コードを進呈)のプロモコードをもらう方法や、ラスベガス旅行の割引、プレゼント企画の有無をユーザが尋ねる場合だ。
とりわけ、Sensayユーザの約10%は健康に興味を持っているとRose氏は語る。クーポンのリクエストが多いのは、オーガニック健康食品販売のThrive Marketだ。
試しにVentureBeatでのテックイベントプロデュースについてSensayのSlackボットでいくつか質問してみたところ、明らかにオンラインの人物から良いアドバイスを得ることができた。テックメディアのファウンダーとして、興味があるのはあくまでSensayのコミュニティであるものの。
興味深いことに、ユーザの約25%は個人を特定できる連絡先を交換している(メールアドレス、電話番号など)とRose氏は言う。かくいう私も、深く考えずに知識豊富なチャット相手に自分の連絡先を教えている。相手の名前と詳細を尋ねたが、返事はなかった。急いで役員会議に行かねばならなかったらしい。
これはよくあることだ。Sensayによれば、希望により両ユーザが匿名で対応できるという。
同社は1年前、Greycroft Partners、Draper Associates、Amplify.LA、Quest Venture Partnersなどから150万米ドルを調達している。Rose氏によれば、既存の投資家を含む次のラウンドの終了は目前だ。
現在、同社はサービスのマネタイズには焦点を当てていないという。ビジネスをオフラインにしたり、Sensayを通さず取引した場合でも人々の繋がりが保てることを保証した上でのオーディエンスの構築を望んでいる。
今後、サイトが生み出す価値によって課金する方法を考えることになるとRose氏は述べた。また、個々サービスのマネタイズ方法を近日検証する予定だ。今のところ、サイトでは質問者が回答を得た後10「コイン」(バリューなし、シンボルのみ)を獲得し、Sensayにバーチャルコインを何個渡すか決めることができるようになっている。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】
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