ベルリンのZeotapが1,200万ユーロを獲得、モバイル広告主が通信会社のデータをもとにユーザ・ターゲティングできる技術をアジアで展開へ

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Image credit: Zeotap

人工知能にせよターゲティング広告にせよ、結果の良し悪しを決めるのはデータのクオリティだ。ベルリンに拠点を置き、インドのバンガロールにもジョイントベンチャーを持つ Zeotap は、2014年後半にアドテクビジネスを開始した当初からこの点に注力していた。そして、モバイルターゲティング広告に顧客データを活用できるよう、ヨーロッパおよびアジア各地の通信会社と提携を進めてきた。

現在同社はユーザデータを獲得するため、主要な通信会社のみならず大手セキュリティ会社やナビゲーションサービス会社ともパートナーシップを結んでいる。このような大企業が Zeotap とユーザデータを共有することに不快感を示さない理由は、同社が厳しいヨーロッパの基準のもと、消費者のプライバシーを堅持する漏洩防止システムを有しているからだ。これは来年発効予定の欧州統一個人情報保護法(EU General Data Protection Regulation=GDPR)にも適合済みだ。

Zeotap の共同設立者で CPO の Projjol Banerjea 氏は次のように語る。

当社ではシステムエンジニアリングの設計原理でプライバシーを徹底的に重視しており、これが当社の最も強力な財産です。

投資家も納得だ。Zeotap は本日(1月17日)、アメリカに拠点を置く科学関連ベンチャーキャピタル企業 New Science Venture とドイツの自動車会社が後援する地図情報サービス会社 Here からシリーズ B ラウンドで1,283万米ドルを獲得したと発表した。

既存投資家である Capnamic Ventures と Iris Capital も今回のラウンドに参加している。

Here の CEO である Edzard Overbeek 氏によると、「彼らのソリューションは多くのデータ所有者が適切なパートナーを探しているちょうど良いタイミング」であったという。

今回獲得した資金は、バンガロールのエンジニアリングおよびデータサイエンスチームの強化とデータ所有者とのパートナーシップに向けた新規市場への拡大に活用していくという。同社は数ヶ月前インドのアドテク企業 Mogae Media と提携し、ジョイントベンチャー Mozeo を立ち上げた。

リサーチ会社 eMarketer によると、2016年のアメリカにおけるデジタル広告支出額1,950億米ドルのうち、半分以上をモバイル広告が占めたという。さらに、プログラマティック広告への転換も進んでいる。プログラマティック広告は人の手による交渉や広告掲載は行われず、デジタル広告インベントリを売買する行程を自動化したものだ。

大きな障害となっているのは、信頼できる大量のデータが不足していることである。MogaeMedia の会長 Sandeep Goyal 氏は次のように指摘している。

インドの消費者はモバイルに移行しつつあるものの、プログラマティック広告は、とりわけモバイル業界ではそれほど普及していません。根本的な原因はターゲティング向けの信頼できるデータが不足していることです。これにより、不明確で成果の挙がらないキャンペーンが行われ、失望したバイヤーがプログラマティック広告への意欲を失っているのです。

Zeotap は通信会社のユーザデータにアクセスすることでこのギャップを埋めようとしている。同社のクライアントにはインドの最大手通信オペレータ3社が含まれている。Projjol 氏は Tech in Asia に対して次のように語った。

インドは私たちにとって重要なマーケットです。複数のオペレータとともにキャリアを超えた利益を構築しています。現在はマーケットの60%以上をカバーしています。

Zeotap のバリュープロポジションはユーザの年齢、性別、位置、所得水準などの詳細情報を含む通信会社データのクオリティだ。他社と連携してもこれほどのユーザデータをモバイル広告主が手にすることはできない。

先のインタビューで Projjol 氏は Tech in Asia に次のように語っている。

通信会社のデータは決定論的(反面、現在ほとんどのデータプロバイダが確率的なモデリング技術を利用)で長期的(ユーザの全体像を把握)、そしてスケーラブル(契約者基盤は何億人にものぼる)です。

Zeotap は個人が特定されるデータに関してはドイツで開発された独自の技術で非表示もしくは暗号化しており、ユーザのプライバシーについては厳格な規制を敷いている。つまり、広告主は通信会社ユーザを個人特定できない。だがその一方で、ターゲットユーザの年齢、性別、位置、所得といった情報を正確に特定することは可能だ。

さらに Projjol 氏は広告主へのアドバンテージとして、彼らがボットではなくリアルなユーザを特定し、レスポンスを得やすいと述べている。

当社のマーケティングは特性ベースではなく、人ベースに重きを置いています。当社データベースにある全プロフィールが実際に通信会社の顧客に対応しているのです。

Zeotap 設立者の Daniel Heer 氏とProjjol Banerjea 氏
Photo credit: Zeotap

ベルリンからアジアに進出するアドテク企業は Zeotap だけではない。Glisp もまたベルリンを拠点とする企業で、Flipkart や Alibaba などのクライアント向けにネイティブ広告の配信やユーザエンゲージメントといった商品を提供している。そして3社目の主要プレイヤーは AppLift で、インドのスタートアップ Bidstalk を買収し、アプリやゲームのマーケティングに加えてプログラマティック広告へと手を広げている

Projjol 氏は当時の様子を次のように語った。

2010年、Fyber(当時の社名は SponsorPay)の立ち上げ従業員として初めてベルリンに来た際、エコシステムはまだ初期段階にありました。それからというもの、Fyber や Zanox、Sociomantic など数々の主要アドテクプレイヤーが成長し、イグジットに成功しています。同様に、彼らは新たなニッチアドテクスタートアップの波を起こしてきました。

Zeotap の CEO で共同設立者を務める Daniel Heer 氏はかつて AppLift と Vodafone で働いた経験がある。これで Zeotap がアドテクと通信会社データを融合させたことに説明がつく。そして、徹底したプライバシー保護という同社の強みは Projjol 氏が International Association of Privacy Professionals(プライバシー専門家の国際機関)に認可された情報プライバシー科学技術者であることに由来する。

バンガロールにある Zeotap のテックセンターには総従業員数の4分の3がおり、同社にはインドとドイツのスタートアップというアドバンテージもある。

Projjol 氏は Tech in Asia にこう語った。

私たちはインドに投資するという自らの判断にとても満足しています。そして今年はここで社員数を倍増したいと思っています。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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