ZEALSがフリークアウト・ホールディングスから8,000万円超を調達、チャットボット管理ツール「fanp(ファンプ)」を正式ローンチ

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写真左から佐藤裕介氏(フリークアウト・ホールディングス共同代表)、明石信之氏(フリークアウト・ホールディングス執行役員)、清水正大氏(ZEALS CEO)、本田謙氏(フリークアウト・ホールディングス共同代表)

ZEALS を前回取り上げたのは約1年前のことだ。「Palmi」や「SOTA」といったロボットの会話ソフトウェアの開発に端を発する同社は、2015年1月に人材サービス大手のウィルグループ(東証:6089)から調達金額非開示の資金調達を実施している

ZEALS は18日、アドテク大手のフリークアウト・ホールディングス(以下フリークアウトと略す、東証:6094)から8,000万円超を調達したことを発表した。この調達とあわせ、以前から提供していたチャットボット作成 API「BOT TREE」を、チャットボット管理ツール「fanp(ファンプ)」にピボットし改めてローンチ。フリークアウトから営業協力・開発協力・国際展開の協力が得つつ、協業していくことを明らかにした。

fanp
Image credit: ZEALS

2016年5月に華々しいデビューを飾った BOT TREE だったが、ZEALS 代表取締役の清水正大氏によれば、サービスの裏側では苦戦が続いていたようだ。無料トライアルが可能ということで、数百サイト以上のメディアがサインアップしたものの、一方で離脱していくメディアも多かった。

サービスに問題があると感じた清水氏は、メディア企業とがっちりとタグを組んでサービスの改善を図ることを決意。複数のオンラインメディアを展開するイード(東証:6038)に導入してもらいサービスの共同開発に漕ぎ着けた。この話を聞きつけた、エンジャパン(東証:4849)、毎日新聞、キャリアデザインセンター(東証:2410)など大手企業が自社メディアサイトに BOT TREE を導入。彼らの意見を反映し、インタフェースを改善して生まれ変わったのが、今回改めて正式ローンチする「fanp」というわけだ。

THE BRIDGE でもニューズレターを配信しているように、一般的なメディアサイトは読者のリテンション(本当のところは、リテンションよりもエンゲージメント)を高めるために、メルマガ配信を実施していることが多い。そして、これらのメルマガの開封率は決して高くない。ZEALS ではチャットボットを使ってメッセンジャー(Facebook Messenger)でのユーザ誘導を図ったところ、平均開封率72%、平均離脱率7.2%という劇的な数値が得られのだという。平均的なメルマガの開封率と比べ15倍という好成績だ。

fanp の料金体系を見てみると「LINE@」を意識しているようだが、現時点では Facebook メッセンジャーでのみ利用可能だ。fanp には、ユーザのボットの利用開始時に Facebook から取得されるプロフィールや属性に基づいてデータベースが生成されるので、メディアオーナーが条件を定めてユーザにアプローチできる CRM の機能も有している。

清水氏は先ごろ、「こばへん」ことインフォバーン代表取締役の小林弘人氏の話を聴く機会を得、これからのメディアは広く浅くオーディエンスを増やすよりも、オーディエンスのエンゲージメントを高める時代だと痛感した。

メディアサイトのオーナーは皆がメルマガをやりたがるが、メルマガは読者の嗜好性、相手が誰なのかを管理できるしくみになっていない。これらの要件をギリギリカバーできているのは SNS だが、「いいね」を多くもらっていても、多くのオーディエンスにリーチできないなど、いい感じのチャネルがない。

そこで次に、モバイルアプリを作ろうかということになるが、アプリをダウンロードしてもらうには CPA が非常に高くなってしまう。結局のところ、モバイルアプリで有用なのはプッシュ通知の機能だ。プッシュ通知だけなら、メッセンジャーでできるじゃん? それなら、メッセンジャーでチャットメディアをやってみましょう、というのが我々の提案です。(清水氏)

fanp のダッシュボード
Image credit: ZEALS
fanp のダッシュボード
Image credit: ZEALS

今回、ZEALS はメディア向けのチャットボット管理ツール「fanp」に加え、一般企業向けの「fanp Biz(ファンプ・ビズ)」もローンチしている。fanp がユーザ誘導のためのメルマガの代替チャネルを目指すのに対し、fanp Biz は企業やプロダクトのランディングページの代替を目指すチャットボット管理ツールだ。

Facebook 広告からユーザをメッセンジャーに直接誘導できるようになったので、ボットへの呼び込みもできるようになった。ボットに資料請求やアポどりを受けつけさせることで、ランディングページよりも圧倒的に良い顧客レスポンスが得られるようになるだろう。(清水氏)

イードが展開するメディア「レスポンス」に導入されたチャットボット

以前は、会話型 AI エンジンの開発で自然言語解析の雄を標榜していた ZEALS だが、ユーザとチャットボットとのやりとりを〝タップ会話〟(ユーザはテキスト入力することなく、チャットボットから提示された複数の選択肢の中から、適当な回答をボタンで選ぶ)に移行したことで、自然言語解析の開発にかけるリソースも極小化できるようになった。

以前のように自然言語解析に執着していたのでは、国際展開を図る上で各言語毎に開発が必要になり、当然、海外にも先を走る競合がいるので、キャッチアップすることは難しかった。〝タップ会話〟に振り切ったことで国際展開にも道が拓けた。フリークアウトには日本の内外を問わず DSP /DMP などを使うクライアントが多数いて、同社は海外にも拠点があることから、国際展開に大きな期待が持てると考え、資金調達と協業に至った。(清水氏)

今後の展開を尋ねたところ、清水氏は「Communication Ad Platform」という言葉を挙げた。メディアがボットを使って読者の囲い込みができるようになると、おそらく、次はボットのチャネルにマネタイズを求めるようになるのではないか、というのが彼の談だ。メディアが自社のボットに広告メッセージを言わせたり、他サイトへの誘導をさせたりすることで、広告主に料金をチャージできる可能性があるだろう(現時点で、Facebook がこれを規制するという話は無い)。

ZEALS では、fanp や fanp Biz を通じてユーザに提供されるボット体験に、ボットとボットをつなぐハブのような機能も持たせていきたいとしている。

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