メタップスのブロックチェーン事業は「体験重視」ーーモバイルゲーム「DIG STAR」×マーケットプレイス「TEMX」のエコシステムを聞く

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Metaps/Metaps Crypto Gateway 事業開発責任者 青木 宏文氏

本稿は1118日から20日に東京ミッドタウン日比谷で開催されたブロックチェーンカンファレンスNodeTokyo 2018編集部による寄稿

ニュースサマリ:メタップスは10月に開示した8月期の通期決算で、同社のブロックチェーンに関する中期の取り組みを公開している。「メタップス・クリプト・エコシステム(PDF)」と題された3枚のスライドから見えてくるのは、一般消費者に近い「手触り感のある」事業だ。一連の流れとして同社はブロックチェーン事業をまとめたサイトも公開している。

NodeTokyo編集部では同社がリリースしたDIG STARとそのマーケットプレイスとなるTEMXを中心に、エコシステムの全貌を探るべくキーマンにインタビューを実施した。(インタビュワー:増渕大志/構成・執筆:平野武士)

メタップス・クリプト・エコシステムを紐解く「デジタルアセット」

中期計画では、ブロックチェーン関連事業を今後の注力事業とされている。まず簡単に全体像を整理したい

青木:現在、ブロックチェーンの大きな課題として、処理性能が大きく注目されていますが、マスアダプションに向けて、ユーザビリティの悪さやブロックチェーンの良さを活かしたユーザー体験の不足も課題としてあります。メタップスではここをデジタルアイテムを中心とする新しい体験の創造と、それらを売買するための各種インターフェース提供によって大きく解決しようと考えています。

なるほど。コンサルティングなどのB2Bはさておき、一般消費者に幅広く認知されそうなキャラクターアイテムの事業について詳しく聞きたい

青木:中心となる「DIG STAR」はキャラクターの生成や所有権の記録、ユーザー間での交換といった部分でパブリック・ブロックチェーン(イーサリアム)を使い、ERC721というトークン規格でキャラクターをトークン化するプラットフォームです。

一方でそれ以外の要素は、自社で管理・運営するアプリケーションで処理しているので、ゲーム自体は中央集権的なものになります。DAppsという定義で多くの方が連想されるものとは異なり、あくまで、デジタルアセット化されたキャラクターのみが非中央集権的なシステムで管理されたモデルです。

従来のモバイルゲームっぽい入り方をしている

青木:現状のイーサリアムの処理性能やgas代を考慮すると、ゲームをプレイする度にトランザクションが発生する設計では、ユーザー体験を著しく損ねるためプレイヤーに受け入れてもらうことは難しいと考えています。DIG STARではブロックチェーンの良さを活かすために最低限必要な部分としてキャラクターの記録だけに活用し、基本的にゲームのプレイ中にトランザクションが発生しない設計にしています。

一方でキャラクターやアイテム自体の所有権は担保して取引可能にする

青木:キャラクターをパブリック・ブロックチェーンに記録すれば、キャラクターの情報や所有権がパブリックなシステムで管理されるので「ゲームから独立した存在として」ユーザーの所有物になります。

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キャラクターを他のゲームでも自分の資産として使えるようになる

青木:ブロックチェーンの良さを残しつつ、できるだけ従来のアプリケーションと同じユーザビリティで遊べるカタチでの提供を優先するアプローチですね。早い段階でブロックチェーンに馴染みのないユーザーからのフィードバックを得つつ、ブロックチェーンゲームならではのゲーム性や世界観を探っていくことを狙っています。

さらにこの世界観を広げてくれるのがキャラクターをアセットとして売買する仕組みだ。創造した自分のキャラクターを取引するというアイデアでCryptokittiesは話題になった

青木:その役割を担うのがTEMX(テムエックス)です。ITEMの”TEM”とEXCHANGEの”EX”を組み合わせたもので、将来的にはゲーム以外のデジタルアセットへの対応も見据えていますが、まずは先行して普及が予想されるゲーム領域から展開していきます。

DIG STARとわざわざ分離してマーケットプレイスとして独立運営を選んだ理由は

青木:TEMXは単なるマーケットプレイスではなく、ゲームディベロッパー向けの機能やソリューション、デジタルアセットの所有者向けのユーザー体験をプラスαで提供していくことを見据えています。ブロックチェーンゲーム全体のエコシステムの一部として機能するものとして捉えてるんです。

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具体的には?

青木:例えば所有者によってキャラクターの強さが変わったら、キャラクターの売買を通じて、面白い体験が生まれるかもしれません。交換の楽しさを演出できれば、ブロックチェーンゲームにプラスαの面白さを提供する仕組みになりえます。

メタップスはサービスインフラのイメージがあるので、キャラクターなどのアプリケーションレイヤーを手がけるのは少し意外だった。取引所などとはまた異なる「筋肉」を必要とする箇所を自社で手がけた理由は

青木:プラスαの要素を見つけていくには、ゲームディベロッパーが必要なサポートやトークン設計、ブロックチェーンゲームならではのゲーム性、世界観を深く理解して、必要なものを見極める必要があります。そのためにはやはり自社で運営してみる、ということが重要になるんです。

あと、メタップスでは韓国で暗号通貨取引所を運営するなど、使い分けている。DIG STARやTEMXの扱いはどうなる

青木:そうですね。暗号通貨に関わる事業に関して日本よりも韓国の方が比較的規制の縛りが少ないので、事業を先行して進めやすい環境にあります。韓国の方でアグレッシブに事業を進め、日本では規制の動向を様子見しながら機を見極め、事業を展開するといった住み分けをしているんです。

そんな中でもDIG STARやTEMXに関しては、日本側でも事業展開できる見通しが立ってきているので、日本と韓国の共同で事業展開を進めています。

ちなみにメタップスではグループとしてブロックチェーン事業に取り組んでます。規制がクリアできる事業はグローバル展開を視野に入れ、グループ内での組織やロケーションの垣根なく事業を展開しています。(後半につづく)

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