Open Network Labが第19期プログラムのデモデイを開催、現代アートの越境ECプラットフォーム「TRiCERA」が最優秀賞を獲得

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東京のスタートアップ・インキュベータ Open Network Lab は8日、Seed Accelerator Program 第19期のスタートアップを披露するデモデイを開催した。このバッチには、日本の内外から合計107チームのエントリがあったが、中から6チームが選抜され3ヶ月間にわたってメンタリングや支援を受けることとなった。

なお、6チームのうち、ステルスや要追加検証などの理由で2チームについては公開されず、4チームがデモデイでピッチした。デモデイの最後には、主要メンターやデモデイに参加した聴衆らによる審査投票でチームを表彰した。

デモデイでは、以下の審査員5名による審査をもとにチームが表彰された。

  • 林郁氏(デジタルガレージ 代表取締役社長兼グループCEO)
  • 畑彰之介氏(カカクコム 代表取締役社長)
  • 村上敦浩氏(カカクコム 取締役)
  • 上原健嗣氏(DG インキュベーション マネージングディレクター)
  • 佐々木智也氏(デジタルガレージ執行役員)

【Best Team Award】TRiCERA by TRiCERA

TRiCERA(トライセラ)は、国内アーティスト向けに海外コレクターへの販路を提供する、現代アートの越境 EC プラットフォーム。日本でも、トップアーティスト100人程度は特定のギャラリー経由で作品を海外販売しているが、大多数のアーティストはそのようなアクセスがなく、国内販売だけでは市場が小さく生計を立てられない人が多い中、彼らに事業機会を提供する。

作品の海外販売時に課題となる多言語での作品説明や価格交渉、煩雑な海外への発送手配業務といった課題を代行してくれる。TRiCERA では4カ国語でオンラインサポートを提供し価格交渉を代行。自社のアート専用倉庫に作品を預かることで、保管から出荷、通関手続までを一気通貫で対応してくれる。

現在、作品数は2,000点ほどを集めており、海外からのサイト登録者(コレクター)は850人、GMV は累計1,000万円。TRiCERA が取り扱った取引について、TRiCERA は30〜40%程度の手数料を徴収する。将来は、作品の保管場所に困るコレクター向けに C2C リセール、レンタルサービスなども提供する。

【Audience Award】precal by Precal

precal(プレカル)は、薬局向けの処方箋入力代行サービス。創業者は大手薬局チェーンでの勤務経験を生かし、現在自らも薬局を経営している。調剤薬局は薬を販売する際、病院が作成し患者が持ち込んだ処方箋をデータ入力、薬を準備し、薬を患者に渡し、薬歴を記録する、という業務が発生する。この際、最も作業負担となるのが処方箋入力で、1店舗1日あたり4時間かかるという。

本来であれば事務員が対応すべき業務だが、実際には薬剤師が対応していることが多い。処方箋には項目が多く、フォーマットが病院によりバラバラであるため煩雑だからだ。precal は薬剤師を支援する遠隔代行入力サービスで、薬局にある端末で処方箋をスキャンすると、precal はそれを OCR 処理し、人が補正し、患者向けのデータと薬局用のデータを薬局に返却する。

precal は薬剤師により監修されていること、また、2万病院分の処方箋テンプレートを用意しているため、数多くの病院の異なるフォーマットの処方箋に対応できる。6社がテスト運用に参加し、17社が事前登録済。将来は、全国に6万店舗ある薬局を対象に、売上の7割が3ヶ月後に入金される問題を解決するファクタリングサービス、医療保険の請求業務の代行サービスの提供なども計画している。

waterX by Water X Technologies

waterX(ウォーターエックス)は、中国市場向けに温水洗浄便座のダイレクト販売を提供。中国市場においては、商品検討(選ぶのが面倒)、設置できない、アフターケアなどが課題となる。中国人が求める二大機能シャワー洗浄と暖房便座に機能を絞り込み、わかりやすい設計の便座を開発した。

WeChat(微信)でのカスタマーサポート、30日以内返金保証などによりを提供する。将来的には、洗浄剤や芳香剤とのトイレタリー製品のサブスクリプションサービス、尿成分などの分析によるヘルスケア領域への拡大も図る。中国における温水洗浄便座の普及率は2.5%と低く、その分、事業機会も大きいという。

Daysk by Curio

Daysk(デイスク)は、レストランやカフェ、アートギャラリー、神社をはじめとしたあらゆるスペースを席単位で予約できるサービス。集中作業、取引先との商談、部下との面談など、社外で席を確保したい機会はある。しかし、カフェやコワーキングでは場所が見つからないことも多い。貸し会議室は殺風景で、外部の人とコミュニケーションするには雰囲気が適切でないこともある。

Daysk では、席ごとに Wi-Fi、電源有無、喫煙の可否などを席単位で確認でき、検索・予約・事前決済によるキャッシュレスで利用可能。スペース提供するホストには、地中海風レストラン、和風個室、アートギャラリーカフェ、日本庭園を見渡せる神社など、ユニークで居心地のいい場所が多い。

スペースのダウンタイムを活用していることから、1時間300円からと料金が低廉で使いやすい。ユーザが支払う料金のうち30%を手数料として Daysk が徴収、残りはホストの収入となる。将来は、スペースでの仕事終了後に、ユーザに応じてオフタイムのアクティビティを提案する計画だ。


Open Network Lab プログラムディレクターの佐藤直紀氏によれば、今回の第19期の修了を受け、Open Network Lab は通算で110組のスタートアップを輩出したことになる。また、前回第18期までの輩出スタートアップの、次期資金調達達成率は57.9%、イグジット率は13.7%に達しているとのことだ。

第19期デモデイの開催とともに、第20期への応募受付が開始された。第20期への申込締切は、11月22日の正午となっている。

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