
Image credit: Masaru Ikeda
音声認識・音声対話技術を開発するフェアリーデバイセズは21日、都内で記者会見を開きコネクテッドワーカー事業に参入すると発表した。コネクテッドワーカーとは、ウエアラブルデバイスやセンサーを身につけることで、遠隔地や蓄積された知見に基づき、さまざまな支援を受けられる現場業務従事者を表す総称。同社ではこの事業の第一弾として、空調機大手のダイキン工業(東証:6367。以下、ダイキンと略す)にソリューションを導入し、空調機の工事・据付・修理・メンテナンスなどの作業現場における業務効率や品質の向上を支援する。
フェアリーデバイセズでは、コネクテッドワーカー事業参入にあたり、専用のスマートウエアラブルデバイス「THINKLET」を開発。このデバイスは首掛けで利用できるため、両手が作業で塞がった状態でも対話が可能だ。800万画素の広角カメラ、近接センサー(デバイスの着脱状態を計測)、ジェスチャーセンサー、マルチファンクションキー、5つのマイク、イヤフォン端子、4G LTE-SIM、WiFi、Bluetooh、GPS を備え、OS は Android ベース。

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マルチチャネルの5つのマイクが付いているのは、騒音の多い作業現場でも着用者、および、着用者が対話する相手の音声を、認識できる形で捕捉するためだ。THINKLET には消費電力の高くない CPU が搭載されており、エッジ AI により処理されたデータがクラウドに転送される。コネクテッドワーカーに対しては、経験に熟練したエンジニアが別オフィスから遠隔で作業支援するユースケースが想定される。
今回のコネクテッドワーカー事業のファーストユーザとなるダイキンは、世界28カ国100カ所に生産拠点を展開している。一般的に、多国間でのコミュニケーションには言葉の壁が立ちはだかるが、ダイキンではフェアリーデバイセズのソリューションを活用し、空調業界や自社独自の専門用語も取り込んだ5カ国語のリアルタイム翻訳機能を実装。国を超えた空調機の作業現場における知見共有に役立てる。作業現場での会話や作業中の音声記録をもとに、自然言語処理による報告書の自動作成機能も実装する計画だ。
フェアリーデバイセズでは、空調大手のダイキンを皮切りに、交通・運輸、報道・メディア、建設、エネルギー、流通、製造、医療など各業界にユーザを増やしたい考え。当面は数百台から数千台の導入が見込める各セクター毎リーディング企業1社ずつに限定して導入し、来年夏には実運用ベースで国内数十社程度への展開を目指すとしている。THINKLET はデバイス単体での販売は行わず、コネクテッドワーカーのソリューションのツールとしてのみ提供される。価格はソリューションとしての個別見積となるようだ。

ダイキンは2017年10月から、IoT を活用した熟練技術者の技能伝承を支援する次世代生産モデルの確立で日立と協業している。また、AI スタートアップの ABEJA とも協業し、空調機の修理に必要な部品を経験やノウハウに基づいて約40万点の中から選定していた業務にディープラーニングを活用している。今回、フェアリーデバイセズから導入するコネクテッドワーカーのソリューションは、日立や ABEJA が提供するソリューションとは棲み分けがなされており、互いに影響し合うものではないとした。
ダイキンは昨年末、東京大学の産学連携協定を締結しており、今後10年間で毎年10億円を拠出し、その半分を東大関連スタートアップの支援に充てることを発表している。ダイキンとフェアリーデバイセズはその以前から互いに連絡はあったようだが、この産学連携協定締結が今回の協業の一つの契機になったとしている。

テクノロジーイノベーションセンター長の米田裕二氏
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