パッション経済の夜明け、4000名の“創意工夫”が生み出す「新時代の個人ビジネス」

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Photo by theformfitness on Pexels.com

今、個人のビジネスが大きく変わろうとしています。

a16z(アンドリーセン・ホロヴィッツ)のパートナー、Li Jinさんが、「The Passion Economy and the Future of Work(訳:パッションエコノミーと仕事の未来)」という題目でブログを掲載していました。

そちらの内容がとても共感できたため、本稿ではこれにあわせて今、個人のビジネスで巻き起こっている「あるトレンド」についてご紹介したいと思います。

パッションエコノミーとは

前述のブログの内容を要約すると、Uberなどに代表されるマーケットプレースで、隙間時間にお金を稼げるようになる人が増えました。これらに象徴された経済圏をGig Economy(ギグ・エコノミー)と表現します。アメリカでは、このギグ・エコノミー経済圏に参加して個人としてお金を稼いでいる人が、労働人口の1/3を越えているそうです。

一方で、それらのプラットフォームは一貫性と効率を優先したことにより、サービス提供者のコモディティ化が進行することになります。

これに対するアンチテーゼ的な流れが「パッション・エコノミー」です。

SNSの普及により、個人がより容易に発信できるようになったことで、個性が強みとなり、自分の個性や情熱に興味を持ってくれるオーディエンスを独自に構築できるようになったことが要因です。

このような背景の中、新しいプラットフォームで必要とされることは、これまでのようなオーディエンスを集めることにフォーカスするのではなく、オーディエンスの熱量をしっかり収益に変えるための簡単な手段を提供することです。上記のブログでは、そのようなプラットフォームの共通点を挙げています。

  • ① 専門家でなくても個人でサービスを開始できる
  • ② 個性はバグではなくセールスポイントになる
  • ③ オンラインサービスの提供をカバーしている
  • ④ ビジネス成長・運営のための包括的なツールである

このような特徴を持ったサービス事例として、有料ニュースレターサービスのsubstackや、サイト作成アプリのonuniverse、Podcast配信サービスのAnchorなどを紹介されています。

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美容やトレーナーなど無形サービスを提供する個人が増加(MOSHサービスサイトより)

私たちはMOSHという、モノではなく個人の「無形サービス」を販売するECプラットフォームを提供しているのですが、実際、このような社会変化によって、国内でも個人や小さな事業者に多くのチャンスが生まれてきていると実感しています。事例として、2児の母でパーソナルスタイリストをされている方も、月商16万〜200万と大きく売上を向上させる事例が出てきています。

他にも、4000名近くの「パッション」を持った事業主たちが、SNSのみを集客経路として、様々なジャンルでしっかり収益をあげる事例が出てきています。国内でもこれらのトレンド変化を感じるようになったのですが、その兆しとして次の2点を挙げたいと思います。

マッチングの構造変化

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スマホとSNSの普及により、個人による発信は日々増加しています。twitter, instagram, youtube, tiktokなど発信媒体がどんどん増え、表現方法もより多様になっています。

従来の検索エンジンではキーワードが明確、かつ、定量的な情報とのマッチングに最適でした。一方、自分の知らないキーワードはそもそも検索しようがないので出会えません。SNSで増え続ける個人の情報は「新たな興味関心の気付き」を与えてくれるという点で新しい検索流入の扉を開いたと言えます。

これらの変化により、サービス事業者の集客は、Googleなどの検索エンジン中心のものから、SNSによる集客も大きな割合を占めるようになってきています。

言うまでもなくGoogleの検索エンジン経由のトラフィックは膨大なので、SNSに完全にリプレイスされるという意図ではありません。流入経路が分散化していくため、事業者は各流入経路をうまく活用しながら、ビジネスを拡大していくことが重要です。

SNSを中心とした興味・関心を軸としたマッチングにおいては、興味・関心の領域はより先鋭化・多様化していきます。「#ハッシュタグ」の存在によって、自分にとって、本当に興味のある情報にたどり着きやすく、また写真、動画、音声などのメディアの充実により直感的に判断しやすくなりました。

需給ニーズはより先鋭化し、多様化する未来

興味関心に近い定性的な情報にたやすくアクセスできるようになれば、予想されるのがサービス領域でのマッチングの多様化です。弊社の事例でも予約が多い方々は特徴が明確である傾向が強いです。

ニッチ化したサービス提供者とのマッチングは、旧来のプラットフォーム検索よりも、興味・嗜好を中心につながるSNSの方がUXとして優れています。今後、このトレンドは留まることはないことを考えると、ニッチ化した個人はどんどん増えていくと考えています。

身近なサービスや商品が、情熱やこだわりを持った人たちによって、提供されるような社会になっていき、オフライン・オンラインを越えてオーディエンスとのつながりをつくり、収益化を支援するサービスはより一層求められていくと考えています。

例えば、私たちのプラットフォームで パーソナルトレーニングをされているVEikoさんは、「美尻トレーナー」として美尻に特化したトレーニングを提供しています。同じく整体師のHidaoさんは「美脚整体師」という点で、これまでの画一的なサービスと異なり、自分の得意なこと、情熱を持っている領域に特化し、発信・サービス提供を行っています。

いかがだったでしょうか。

先日もギグワーカーの象徴とも言うべきフードデリバリーサービスで、依頼料金のトラブルが一部報道されていました。画一的な労働は情報化社会においてどんどん効率化される運命にあるということが凝縮されたような話題です。

創意工夫は人間だけが持ちうるオリジナリティです。これを武器に個人をエンパワメントするパッション経済は、少子高齢化や労働力の不足など、多くの課題を抱える日本社会にとって必要な考え方になると確信しています。

<参考情報>

本稿は、スマホでオフィシャルサイトが作れるサービス「mosh.jp」を運営する代表取締役、籔和弥氏(twitter: @kazuya_jam)。サービス事業者の収益化支援のため、予約、決済、顧客管理、月額サブスク、回数券などの機能を提供しているので、ぜひ興味がある方は、こちらからコンタクトされたい。

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