VRイベントプラットフォーム「cluster」運営、シリーズCラウンドで8.3億円を調達——テレビ朝日やWFLEとは、コンテンツ開発に向け業務提携

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Image credit: Cluster

VR(バーチャル・リアリティ)で最大数千人規模のイベントを開催できるサービス「cluster(クラスター)」の開発・運営を行うクラスターは6日、シリーズ C ラウンドで総額8.3億円を調達したと発表した。同社にとっては、2018年9月に実施したシリーズ B ラウンドに続くものだ。今回のラウンドでの調達を受け、クラスターの累積調達金額は14.8億円に達した。

今回のラウンドに参加したのは、KDDI Open Innovation Fund(KDDI=東証:9433 とグローバル・ブレインによる運営)、テレビ朝日ホールディングス(東証:9409、テレビ朝日と略す)、グリー(東証:3632)傘下の VTuber マネージメント会社である Wright Flyer Live Entertainment(WFLE)、31VENTURES(三井不動産=東証:8801 とグローバル・ブレインによる運営)と、個人投資家複数。テレビ朝日と WFLE とは共同開発に向けた業務提携を伴う。

cluster は2017年5月に正式サービスを開始。現在は主に、ゲームメーカーや VTuber マネージメント会社を直接な顧客として、VR による音楽ライブなどを視聴者向けに展開している。有料の音楽ライブとしては、2018年には8月に開催したバーチャルタレント「輝夜月(カグヤルナ)」のライブイベント1本だったが、VTuber のプロモーション需要などが追い風となり、2019年にはライブイベントを約100本を実施するなど堅調な成長を見せた。

cluster 上では、イベントの主催者は無料で VR イベントを開催でき、クラスタはプラットフォーム利用料を徴収せずイベントの製作支援などでマネタイズしている。この B2B2C のモデルは功を奏しキャッシュフローが改善。VTuber イベントの回数増加に伴い海外ユーザ(視聴者)も増えてきたことから、クラスタでは海外展開に注力していく方針だ。また、cluster は現在、HTC Vive と Oculus Rift のみの対応だが、今後、Oculus Quest をはじめ他の HMD にも対応させるべくシステム開発を進める。

今回業務提携したテレビ朝日とは、コンテンツ開発や VR を取り入れた番組などの共同開発、出資者に名を連ねる KDDI とは大容量・低遅延を特徴とする 5G やスタンドアロン VR(画像レンダリングのためのパソコンを必要とせず HMD だけで動作可能)を前提としたコンテンツ開発、WFLE とは同社の VTuber ライブ専用視聴・配信アプリ「REALITY」と連携し、REALITY のキャラクタが cluster でのイベントに参加・配信できる体制を整える。さらには、元旦に NHK 地上波で放映された「NHK バーチャル紅白歌合戦」のような世界観——VTuber に加え、生身のアーティストが同じステージ上に参加可能な仕組みも開発するという。

Mirrativ のようなアプリが出てきたこともあり、自身のアバターを持つ個人ユーザも増え始めている。(クラスタを含め)一社で全ての機能を持つということはないと思うが、サービス同士が連携することで、そういったアバターが参加して、ギフトアイテムを贈り合うような体験を作っていきたい。(中略)

エコノミクスが出来上がってきたので、今回のファイナンスを通じて、特にコンテンツの拡充に力を入れていく。ゲームやアニメコンテンツを持っている企業に使ってもらいたい。音楽ライブやコンサートだけでなく、バーチャルイベントのプラットフォームとして広く浸透させていきたいと思っている。(創業者兼 CEO の加藤直人氏)

クラスターでは今後、プラットフォームのシステム拡充を図るエンジニアもさることながら、特に、ビジネス開発やコンテンツ開発を行う人材採用を拡大する方針だ。cluster を使ってこれまでに開催されたイベントの最大規模は3万人の同時視聴にとどまっているが、近い将来、数十万人〜百万人規模の視聴者が集められる大型イベントの開催を目標にしたいとしている。

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