CDN業界をディスラプトする台湾スタートアップmyltics、「欧州進出に向け、信頼獲得が課題」とCEO

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myltics のチームメンバー
Image credit: myltics

2008年、シンガポール出身の Ryan Chin 氏と香港出身の Reggie Yam 氏が、台湾に B2B サイバーセキュリティ企業 Nexusguard(泰鼎網路)を設立した。

2017年、AWS の停止をはじめ、クラウド障害によるウェブサイトの停止など非常に多くのクラウド事故が発生したため、Chin 氏はそこに大きなビジネス機会を見出し、これに取り組むための新しいスタートアップを始めることにした。

Chin 氏はまもなく Nexusguard の CEOを退任、新スタートアップを始めるにあたり Yam 氏を招き、エンジェル投資家からの資金援助を受けた、

AI ソリューション

台北に本社を置く mlytics は、オンラインプラットフォーム・マーケットプレイスだ。企業はここで、複数の最上位 CDN(コンテンツデリバリネットワーク)を契約できる。 mlytics の機械学習トレーニングを受けた人工知能ソリューションはインターネットを監視し、Web サイトのトラフィックを自動的に最高のパフォーマンスが出せる CDN にルーティングする。これにより、Web サイトのパフォーマンスが向上し、サイトダウンを回避できる。

ダウンタイムを避けることの重要性をどんなに言及しても、言及しすぎということはないだろう。あなたの Web サイトがアクセスできない時間は、分単位で金銭的にも顧客関係的にも影響を与える。ダウンタイム発生が続けば、特に EC サイトに壊滅的な結果をもたらす可能性がある。(中略)

我々は自社の SaaS 製品を用いて、この問題に対処しようとしている。

言い換えると、企業は mlytics を使用すると、自社の Web サイト用に CDN を購入でき、個々の CDN ポータルを通じ個別にアカウントをサインアップする必要はない。ユーザがしなければならないことは、自分の Web サイトを mlytics プラットフォームに追加することだけだ。Google Tag Manager と同様、最初のインストールが完了すると、技術的な面倒な作業を繰り返すことなく、Web サイトに CDN をインストールできる。

従来は CDN を1つしか使用できず、パフォーマンスが低下または誤動作している場合、Web サイトは機能しなくなっていた。

しかし、マルチ CDN とAI ロードバランシング機能により、mlytics はそのような状況を自動検出し、すべてのトラフィックを別のCDNにリダイレクトできる。(Chin 氏)

たとえば、あるニュースポータルが Cloudflare を使用していて、Cloudflare が突然、予告なくダウンした場合、ニュースポータルサイトがダウンする。一方で、サイトに Cloudflare、AWS CloudFront、Alibaba Cloud CDN がインストールされている場合、Cloudflare がダウンしていても、mlytics がすべてのトラフィックを、どれが最高のパフォーマンスを出せるかに応じて、AWS CloudFront か Alibaba Cloud CDN にリダイレクトできる。

さらに話を簡単にすると、アメリカの拠点を置き、世界中から顧客がいる EC 企業ががあるとしよう。アメリカの顧客が注文した場合、配送は国内で行われるのでそれほど長くかからない。一方、日本から顧客が注文した場合、日本に配送するまでに時間がかかる。これを克服するために、海運会社と契約しその配送センターを使ってアジアで製品を積載すれば、配送時間が大幅に短縮される。

これが CDN の仕組みだ。 Web サイトをより高速に配信するための配送センターとして機能する重要な場所のいくつかに、CDN PoP がある。(Chin 氏)

さて、あなたが配送のために契約した会社が予告なしにその日の仕事をしていないとしよう。そして、別の配送会社が手配されていない場合、配送スケジュール全体が遅れることになる。

これは、CDN を1つだけ使用し、適切なフェールオーバー計画が無く失敗した場合に発生することだ。2番目の配送会社(CDN)の準備ができている場合は、切り替えて中断のない動作を担保できる。mlytics は、複数の海運会社(CDN)との契約を支援し、顧客の所在地に応じて、どの海運会社を使用するかの決定を支援するのだ。(Chin 氏)

同社は、Alibaba Cloud(阿里雲)、Akamai、CDNetworks、Cloudflare、CloudFront(AWS)、Imperva、Tencent Cloud(騰訊雲))など、複数のトップティア CDN 企業と連携している。

Image credit: myltics

ヨーロッパ進出

Chin 氏は、東南アジア地域で mlytics が「かなり順調に」機能していて、2020年にはヨーロッパ進出を目指すと述べた。潜在的な顧客は、e コマース、マルチメディア(ビデオ、ストリーミング、ニュース)、金融、ゲームだ。

同社は、すでにいくつかのクライアントを獲得している。中には、アジアのITソリューション企業 Aurora。アジアの仏教テレビ局 DaAi(大愛)、AI ソリューション特化の台湾企業 CloudMile(万里雲)などだ。

mlytics が SaaS モデルだということは、顧客が月額料金を支払ってサービスに加入し、縛りや制限無しに好きなときに解約できることを意味する。同社はまた、顧客の要件に応じてカスタマイズ可能なエンタープライズ級のソリューションも提供している。

mlytics のスタッフ数は50名で、ほとんどが台北にいる。

Chin 氏と Yam 氏は、会社を設立した経験が豊富で、既存の CDN 市場の問題点や弱点に対処する方法について、明確で革新的なビジョン、目標、実行計画があった。そのため、彼らは(ROI と収益性の観点から)事業を離陸させられるのにギリギリ必要な最低限の資金を、エンジェル投資家一人からのみ求めることを計画していた。

Chin 氏はネットワークエンジニアとしてキャリアをスタート。彼は、シーメンスや AT&T などのネットワーク・テレコム大手で働いていた。 Yam 氏は、香港でITやネットワークセキュリティのスペシャリストとしてキャリアをスタートし、7年で Nexusguard の CIO に昇進した。

信頼の獲得が課題

Chin 氏の意見では、近代的なインターネット配信要件のための革新的なソリューションが不足していることから、B2B 企業は制約を受けているという。CDN はインターネットのパフォーマンスのボトルネックを軽減するための手段として1990年代後半に登場し、それ以来大きな変化が無い。

20年にわたり変化の無かった業界をどのようにディスラプトし、企業に移行を促すかが課題だ。(中略)

我々は適切な製品でそれを克服しているが、特に欧米の SaaS ビジネスモデルにとって重要な信用・社会的証明・信頼の欠如から、事業機会を逃しているのは残念だ。(Chin 氏)

【via e27】 @e27co

【原文】

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