新型コロナ対策で、プログラムのバーチャル化を進める世界のスタートアップアクセラレータ(1/3)

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企業が先を争ってビジネスをリモートワーキングや隔離に適応させようとする中で、投資家の資金や指導を求めて競い合うスタートアップもまた、新しい世界の秩序に直面している。テルアビブの Intel が主導する12週間のアクセラレータプログラム「Intel Ignite」は1日、4月19日開始予定の第2コホートに参加するスタートアップ10社を発表し、選考当日の最終面接はすべて遠隔で行われたことを明らかにした。さらに、3週間以内に開始が予定されている第2回 Intel Ignite の最初の面談と共に、プログラム全体が初めてオンラインで行われることとなる。

Intel Ignite

Intel Ignite のバーチャル面接

Intelが昨年ローンチした Ignite は、人工知能(AI)や自動化システムのような重要な産業の「変曲点」に従事するアーリーステージのスタートアップに注力している。応募して通過すれば、Intel やその他の業界専門家による指導を受けることができ、資金調達やその他価値あるリソースへの門戸が開かれる。今年は新型コロナウイルスの大流行により、各領域のビジネスがソーシャルディスタンシングを受け入れざるを得なかったため、Intel も変更を行わなければならなかった。

最初200社だった応募者は70社に絞られ、次にほんの16社にまでふるいにかけられ、そして Intel 経営陣、VC、起業家、その他テック業界人といった50名以上からライブ動画で厳しい面接を受けて、最後に10社が残った。

16社のスタートアップ、大スクリーンがある5つの部屋、ウェブカメラ、Jabra のスピーカー、消毒ゲル、そして Zoom を使う60名の審査員によるものでした。(Intel Ignite のゼネラルマネージャー Tzahi Weisfeld 氏)

新型コロナウイルスによる危機は労働文化に恒久的な変化をもたらし、リモートワークがより広く受け入れられるようになり、多くのカンファレンスデジタル環境に移行するだろうと主張する者は多い。確かに、既に Microsoft は2021年のイベントをオンラインで行うと報じられている

では新型コロナは同様のトレンドをアクセラレータ業界にももたらし、Zoom やその類いのものが将来の選考プロセスで使われるようになるだろうか?

そう言うにはまだ早すぎます。明確なメリットとデメリットがあるのです。(Weisfeld 氏)

Weisfeld 氏によれば、バーチャルな選考プロセスは一般的な対面式のプロセスと比べて、より整然と、そして素早く進行する。

対面式選考の弱点のひとつは「群れ効果」や「バンドワゴン効果」、部屋にいる誰かが声を挙げると、その強い意見が他の人に影響を与えるというものです。(中略)

バーチャルな状況であればこの影響は少なくなります。またバーチャルでスコアリングする際には、より詳細なメモを取ることも必要となります。弊社にはより良いフィードバックのメモが残されたので、これを整理してスタートアップに渡し、彼らがこのプロセスからさらに学ぶことができるようにします。(Weisfeld 氏)

しかし陽があるところには陰もある。いくつかのスタートアップは対面であればできたであろうことに比べて、Zoom 上では期待されたほど上手くできなかったという点を Weisfeld 氏は付け加えた。そしてスタートアップ向けのプログラムの最も大きな価値のひとつは、指導や審査と並んで、他者と対面し交流できる機会である。

バーチャルなセッションではネットワーク作りの機会がなくなるか、非常に困難になります。(Weisfeld 氏)

Intel Ignite では、Zoom を使って打ち合わせ

Weisfeld 氏によれば、その他のあり得る不利な点として、可観測性が減少することによってメンターの非言語的シグナルを読み取る能力が影響を受け、親密さが全般的に欠如するという点がある。

しかしスタートアッププログラムをもっとバーチャルにすることで、考えられるメリットもある。移動が減ることでお金を節約でき、環境にも優しくなるだろう。新型コロナによってスタートアップアクセラレータの運営方法が完全に見直されることになるかどうかはまだわからないが、初期の取り組みの「成功」度合いによっては、いくつかの側面は変わるかもしれない。

Intel Ignite は進めるにあたってこの点を大事にしなければならなくなっており、スタートアップとの協働の仕方を根本的に変えなければならなくなっている。例えば、もっと早くからスタートアップのことを理解し、適格性や知識の差を把握していなければならない。こういったことは Zoom 上ではより多くの時間がかかるため、スタートアップと業界の最良のメンターを事前にマッチさせることもできる。

弊社はプログラムの多くの部分を、新しい現実に合わせて変えています。(中略)

こういったプログラムの成功には、スタートアップとプログラムスタッフの深いレベルでの親密さや信頼が必要です。もし私たちが相手方の最大の困難をわかっていなければ、それを解決する手助けの役には立てません。(Weisfeld 氏)

そして、スタートアップが集まりその進歩を示して見せるデモデイだが、これに関して Weisfeld 氏は Zoom を超えた「新しい、魅力あるモデル」が必要になるだろうと述べている。

しかしこれからも人と人との交流が必要となることは変わらないだろう。特に、ビジネスを生み出したり投資を確保したりする場合においては。

新型コロナがこういったプログラムに大きな影響を与えることは間違いありませんし、弊社もプログラムの多くの部分を適応させています。(中略)

それでも、販売、ビジネス開発、投資ラウンドにおいては直接会ってやり取りする必要があります。(Weisfeld 氏)

新型コロナの脅威が収まった後に訪れる変化は、アクセラレータプログラムだけに限ったものではない。しかしスタートアップと投資家は新しい世界の秩序を、それがどんなものであれ、受け入れなければならなくなるだろう。

私たちは新しい世界に向かっていると思います。(中略)

移動が変わります、顧客エンゲージメントが変わります、ツールが変わります。ストーリーテリングのためのトレーニングも、今後はウェブカメラを通じてピッチしなければならない機会が多くなるため、変わります。ですのでプログラムもそれに合わせなければなりませんし、私たちはリアルとバーチャル、2つの交流のコンビネーションを揃えるようになります。弊社は今後数週間で一通りの実験を行う予定ですが、これは何を元に戻して何をそのままにしておくべきか、それが可能かどうか、いつ可能になるのかを評価する役に立つことになるでしょう。(Weisfeld 氏)

次編へ続く)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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