新型コロナ対策で、プログラムのバーチャル化を進める世界のスタートアップアクセラレータ(3/3)

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前回からの続き)

企業が先を争ってビジネスをリモートワーキングや隔離に適応させようとする中で、投資家の資金や指導を求めて競い合うスタートアップもまた、新しい世界の秩序に直面している。

Dreamit Ventures

ニューヨーク拠点の投資ファンド兼アクセラレータであり、健康やセキュリティや不動産のスタートアップをスケールする Dreamit Ventures は1日、14週間のプログラム3つに参加するスタートアップの新コホートを発表した。これらは初めて完全にオンラインで行われるが、Dreamit Ventures のプログラムの半分以上は既にバーチャルで行われていた。スタートアップの設立者はいくつかのセッションやミーティングには直に参加するよう求められていたが、プログラムを卒業するために企業を移転するよう求められてはいなかったのだ。しかし完全なバーチャルは新たな地平である。

Zoom 上で実施された Dreamit Ventures の Virtual Happy Hours

Dreamit Ventures のソーシングのディレクター Charles LaCalle 氏は VentureBeat にこう語った。

Dreamit はスタートアップに対面での面接を決して求めません。この危機の以前からそうです。(中略)」

面接の大部分は Zoom 越しに行われます。とは言え、面接段階までたどり着いた起業家の大部分は、Dreamit のメンバーと直接、カンファレンスやイベントや、あるいはコーヒーを飲みながらのおしゃべりなどで会っています。弊社のプログラムにいずれ参加することになる起業家と出会い、関係を築くための能力は、このパンデミックで深刻なダメージを受けることになります。全てのベンチャーファンドは起業家と交流する新しい方法を模索しています。ソーシングの過程において重要な要素なのです。

Dreamit のプログラムにはスタートアップの設立者が法人レベルの顧客と直接会うことも含まれており、多くはその場で製品導入のプルーフオブコンセプトを求められるが、今はそれを行うことが難しい。他にもプログラム参加者にとって完全なバーチャル環境では明確にデメリットとなる要因もある。アクセラレータプログラムの参加者としても、そして後々新たなビジネスを追い求める際にもだ。

参加企業の多くは6か月以上という長い販売サイクルを持ち、カンファレンスで顧客と出会います。(中略)

今後販売サイクルは長くなるものと思われますし、スタートアップの設立者は製品の代弁者を探し、製品をバーチャルで示して見せるためにクリエイティブでなければならなくなります。製品を受け入れる複数のステークホルダーを必要とする全てのスタートアップ企業は、不利な状況に置かれることになります。協力関係の視点からもそうですし、また企業が規模縮小することで予算がカットされる可能性があるためでもあります。(LaCalle 氏)

適応

新型コロナの影響に対処すべく運営サイドを発展させていく他にも、アクセラレ-タは世界的なパンデミックとの戦いを手助けしようと、プログラムの範囲を適応させている。YCは テストや診断学、治療やワクチン、病院設備、モニタリングやデータインフラストラクチャーに従事するスタートアップに重点を置くことで、応募プロセスを通して新型コロナの有望なスタートアップを迅速に発展させるとしている。

SkyDeck は遠隔清掃のためのロボティクスや、医療器具の設置や管理のためのサプライチェーンプラットフォームのような、ポートフォリオ企業から生まれている多くの新技術を強調しようとしていた。こういったことは、投資家は新型コロナやその他の未来の健康危機に対処する企業を探しているため、今後数か月で多くのスタートアップアクセラレータに浸透していくものと思われる。

私たちは世界最大の問題に直面する人類を手助けするスタートアップに対して支援できることを誇らしく思います。そのうちのいくつかのスタートアップはコロナウイルスの危機にも対処するでしょう。

Dreamit Ventures のマネージングパートナー Steve Barsh 氏は、同社は悪化する景気の中での生き残りや成功といった課題に関するスタートアップの、新たなコホートと緊密に連携していくと述べた。

弊社は新しい普通に合わせて調整しています。(中略)

景気が良いとき、スタートアップを始めることは簡単ではありません。厳しい時代にはさらに困難ですし、スタートアップは常に最良の結果を出し続けなければなりません。(Barsh 氏)

これから1年後や2年後にスタートアップアクセラレータがどうなっているのか、確信を持って言うことは難しい。大きく変わることはないかもしれない。もしくは、こちらの方が可能性は高いかもしれないが、バーチャルなコミュニケーションやネットワーク作りが既存のプログラムの中でさらに重要な部分となり、現実世界における仕組みに戻されることはないかもしれない。

しかし今のところは、スタートアップアクセラレータは「バーチャル」に全力投球している。そうしなければならないという単純な理由のために。

スタートアップにとって新しく、困難な時代です。(中略)

もっとも容易な道は、何もせずコロナウイルスが過ぎ去るのを待つことです。もっとも責任感を持ってやらなければならないことは、新しい現実や、おそらく新しい標準があるということに気づくことです。私たちがそれに適応しスタートアップを手助けするのが早ければ早いほど、より早く彼らが困難を乗り越えるお手伝いができます。今日の困難は3週間前よりも大きなものです。ですのでこれまで以上に今こそが、アクセラレータやスタートアッププログラムが力を発揮し支援を行うときなのです。(SkyDeck の Weisfeld 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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