フードデリバリの「最適ルート」を探せ!ーー需要高まる“物流A/Bテスト”に商機あり

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Photo by Norma Mortenson on Pexels.com

withコロナの現在、EC市場が急成長しています。それに伴い、配達サービス強化が急務になりました。人員を最小限にしてオンライン上だけで店舗展開、在庫スペースと配達拠点だけを持つ「バーチャル店舗」の機運が高まっていると感じます。

多くの事業者が、仕入れ・在庫管理・配達だけを担い、オンラインで広告する「スマート店舗経営」スタイルの良さに気が付くでしょう。この流れは実店舗を持つ大変さを知っている人にとって、不可逆的なトレンドとしてポストコロナでも加速していくかもしれません。

バーチャル店舗と相性が良いのは飲食業界です。たとえばUberEats上で商品を販売し、実店舗を持たず、配達拠点を兼ねたキッチンだけを所有・もしくは賃貸する業態が普及しようとしています。店員の人件費を削ることで効率的な事業運営が可能となりました。こうした業態は「バーチャルレストラン」「ゴーストレストラン」と呼ばれています。

グローバルフードデリバリー市場は2019年時点で1,074億ドル規模です。2020年には1,113億ドルにまで成長すると試算されています。「UberEats」「DoorDash」「GrubHub」「Postmates」の台頭と共に、世界中で配達ボリュームが増えている証左とも言えます。多くの飲食事業者がこうしたプラットフォームに加わり、店舗のバーチャル化を図ることは間違いありません。

参加事業者数が増えることは喜ばしいですが、プラットフォーム側は配達網の最適化に対する課題を新たに抱えています。

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Image Credit:nextmv

配達プラットフォーム企業が物流事業を運営する場合、その事業がどのように機能するかについて、細かくルールを決める意思決定アルゴリズムを構築する必要が出てきます。

TechCrunchで紹介された例ですが、たとえば業務を最適化するために、注文レストランに最も近いドライバーが食品を配達すべきだというルールを敷くとします。そうすると、近くにある別のレストランが一定の時間内に注文を受ける可能性が高いので、ドライバーは5分待ってから配達に向かうべきだという規定を追加することもするかもしれません。

これらのルールは、時間帯、場所、または何百もの他の要因に基づいて変更されることがあります。最終的にこの意思決定モデルは、規模が大きくなるとかなり複雑になります。コントロールできなくなる可能性が出てくるのです。

そこで登場したのが「nextmv」です。同社は「オペレーションズリサーチ」「Decision Science」の分野で活躍するスタートアップで、この分野はビジネス上の問題(多くの場合、複雑なオペレーション)に数学的モデルを適用します。

nextmvはオペレーションリサーチを活用して、主にフードデリバリー市場に参入しています。利用企業が自社独自の物流アルゴリズムを構築できるサービスを提供しているのです。膨大な量のデータを用いながらA/Bテストの要領でシミュレーションをおこない、先述したような意思決定のルールを作り出すことができます。

同社が参入するグローバルサプライチェーン分析市場は2018年で34.6億ドル規模です。2025年には98.75億ドルにまで成長する見込みです。年平均成長率は16.4%と試算されています。

もともと、オペレーションリサーチは、食材が届くまでの最適な配送ルート選択の自動化、医療スタッフのための最適なシフトスケジュール管理、サプライチェーンにおける価格設定などあらゆる分野に応用が効きます。しかし、現実では軍・防衛産業に人材を採られており、他の市場にあまりノウハウや知見、サービスが降りてきていませんでした。そこで高いシミュレーション技術をフード配達へと応用したのがnextmvとなります。

あらゆるモノがビッグデータとして分析・活用されていく現代。天候や交通情報、スタッフシフト構成、注文状況および事前予測から最適な配達ルートを常に導き出す、「フード配達版ナビゲーションシステム」に注目が集まるでしょう。単なるルート選択ではなく、個々の事情においてベストなルート選択を提案する、新たなGoogle Mapが求められているとも言えます。

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