ソーシャルインパクトを掲げるスタートアップたち【TechStars選出(3/3)】

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TechStarsによるSGDsをテーマとしたアクセラレーションプログラム「Cox Enterprises Social Impact Accelerator Powered by Techstars」に選抜されたスタートアップを解説する。第3回は、ダイバーシティー・起業家支援のスタートアップを紹介する。第1回(教育関係)はこちら、第2回(ヘルスケア、エネルギー)はこちらを参照されたい。

Civic Dinners

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Civic Dinnersウェブサイト

概要:人々が安心して真剣な対話を行うことのできるプラットフォームを提供

社会課題:アメリカ社会は、ますます二極化している。人々は意見の合わない人とは関わらない、会話をしない、意見が合わない人をSNSで「アンフレンド」する、こんなことが当たり前のように起こっているのが実情だ。

市場背景:COVID 19や気候変動など様々な問題に世界は直面しており、その解決のためには今まで以上によりいっそうお互いの声を聞き合うことが求められている。しかし、建設的な意見交換の場を見つけることは難しい。同社のCEOであるJenn Graham氏は数々の大きなイベントの企画運営を通じて、新しいアイデアは少人数の行動を起こしたいメンバーで形成される、フランクな会話から生まれることに気づく。それがサービス立ち上げの契機になった。

提供しているサービス:人々が一堂に会して、各人の関心のあるテーマについて議論をするためのプラットフォームを提供。同社独自のシンプルなフレームワークを提供することで、誰でも、どこでもツールとして利用することができる。

6~10 人が集まってお酒や食事をしながら、特定のテーマについて話し合うという構成。ホストは3つの大きな質問を予め設定し、それに沿って、全員が平等に一度に1つの声を共有できるように工夫する。この形式は、議論や支配的な声を避けるために設計されており、その代わりに異なる視点からの意見に耳を傾け、理解を促すようになっている。

例えば、テネシー州チャトヌンガ市では、ある参加者がEconomic Mobility (個人や家族が経済的地位を向上させる能力)をテーマに掲げ、ディナーをホストした。市役所職員からギャングのメンバーなど様々なバックグランドの人たちを招き、Civic Dinnersが提供するフォーマットに沿って行った。その結果、お互いが安心して悩みを共有できる場所となった。回数を重ねることで、300人の声が集められ、それが政策立案に生かされる形になった。デイナーの80%もの人たちが地元でのアドボカシー活動のボランティアに参加した。

ビジネスモデル等:同社はアメリカの各自治体やAspen Instituteなどの非営利法人やHOME DEPOTなどの企業に対してサービスを提供することにより、新しい対話の形を実現させている。

最近では、コカコーラより依頼を受け、ダイバーシティーやインクルージョンをテーマとした対話の場を設計した。Facebookは、当初はあるアメリカの都市で、女性創業者の支援をテーマとした対話のリクエストから始まったが、その後は中小企業支援などのテーマを拡大し、全米にスケールした。この提携が、18か国で10言語(日本語は非対応)対応できるようになった。

イギリスでパイロットプログラムを企画していたところ、COVID-19に直面したが、10日以内にインターネット上でも実施できる設計を開発し、対面で会話ができない現在でも、同社の利用率は伸びている。2020年第1四半期の売上高は前年の同時期に比べると十倍に伸び、44万ドルを実現。2020年は1,600万ドルの目標を掲げており、すでに半分までは実現しているという。

ACT House

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ACT  Houseウェブサイト

概要:共同生活を前提にしたインキュベーター

課題:アメリカで、大学に入学した学生2,000万人のうち、76%は起業したいとしているが、なかなか起業がうまく行かないのは、良いチームに出会えないためである。そこでACT Houseはスキルを高め、起業家精神を養い、新しい製品やサービスを創造したいと願う若いイノベーターのための取組みとして、共同生活をベースとしたプログラムと住環境を提供している。

提供しているサービス:全米で学生をリクルートし、各人のスキルを測るためにハッカソンで競わせる。審査に合格をすれば、ACT Houseのコミュニティに招待をされる。目標は、1年で1社を起業することである。コミュニティーに入ると、定額のシェアハウス、リーダーシップなどのスキル研修、起業経験者へのコミュニティのアクセスを手に入れることができる。

ビジネスモデル等:2019年には席数の十倍の申し込みがあり、卒業生の83%は創業者かプロダクト開発者になっている。COVID-19の影響により、今秋54人が新規参加予定であったプログラムを大幅に組み替え、オンラインでのハッカソン を実施したり、必要なリソースに簡単にアクセスできるアプリを開発。現在の収益モデルは、共同生活方式には月額600ドル、メンターなどからコンサルテインングサービスは月額10〜20ドル。

執筆:NeKomaru/編集:岩切絹代・増渕大志

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