業績見合いでローン提供「Uncapped」はスタートアップの株放出問題への対抗策となるか

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Image Credit : Uncapped

ピックアップUncapped raises £10M to offer ‘revenue-based’ finance to growing businesses

ニュースサマリー:12月1日、スタートアップ向けローン提供サービス「Uncapped」が、サービスのローンチと同時に1,000万ドルの資金調達を実施。資金は株式と借り入れの両方で行われる予定で、投資家には、Rocket Internet’s Global Founders CapitalやWhite Star Capital、Seedcamp、そしてその他複数のエンジェル投資家が名を連ねている。

同社はロンドンに本社を置くポーランド発の企業。スタートアップ向けに業績ベースのローン提供サービスを展開する。スタートアップはVCやエンジェルなどの投資家からのエクイティー(株式)投資に依存しており、それが将来的な自己株比率の不足をもたらすなどの問題に繋がっていた。

しかしUncappedからの借り入れは株放出に頼らない業績ベースのローン。10万~100万ポンド(約1400万~1億4000万円)を貸し出し範囲とし、手数料は一律6%、投資家よりも高速で資金調達を実行できる点を強みとしている。

TechCrunchの記事で同社CEOのIsmail氏は以下のように答える。

資金調達を検討する起業家に最初に立ちはだかるのは、“数%のエクイティー(株式)を手放すのか、はたまたデット(借り入れ)を行うのか”という、二者択一の意思決定。エクイティーは遅い上に株放出が必須であり、またローンもハイリスクという欠点があります。しかしUncappedは、両方の良いとこどりをした代替手段となり得ます。

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Image Credit : Uncapped

話題のポイント:Uncappedのファイナンス・サービスに関して気になるポイントは、同社の業績ベースの与信がどれほど効力があるのか、という点でしょう。ローンが高スピードかつ低い手数料である点は借り手のスタートアップにとって大きなメリットではあるものの、彼らの貸し倒れ率を一定以下に抑えなければ同社のビジネスは成り立ちません。

そのため、ローン提供先事業の債務返済能力を適切に与信を取るする必要があり、その方法の質の高さがサービスのコア・バリューになるとも言い換えられます。

与信の方法について、ピックアップ記事の中でIsmail氏は、「Uncappedは事業者がこれまで蓄積してきた販売データや、事業者らが利用するStripeやShopfyなどの外部サービス内の決済・販売データなど、多数のソースに依拠する形でデータを収集し、与信審査を行う」といったコメントを残しています。

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Image Credit : Uncapped

Uncappedが想定する借り手事業者は、Eコマースやサブスクリプションサービス、D2C、SaaS、アプリやモバイルゲーム、マーケットプレイスの6つのカテゴリに属する事業者であるとされています。これら6つのサービスが選ばれる理由は、与信データの収集を行いやすい事業モデルであるためだと考えられます。

実際、Uncappedは借り手に2つの条件を設けています。1つは商品・サービスの販売をオンライン決済で行なっていること、そしてもう1つはサービスの運用を少なくとも9カ月以上継続できるていることです。

ちなみにStripeやShopfyは既に自社サイトベースの業績データに依拠したローンサービスを提供しており、Uncappedの競合に当たります。一見するとより多くの業績データをプラットフォーム内で握るStripeやShopifyの方が優位性が高そうです。しかし、Uncappedは事業者自身が持つ販売データや事業者が運用するFacebookのようなSNSなども含め多面的にデータを収集しています。特定サービスに依存せず相対評価できているという見方もできるので、これはこれで強みを持っているといえるでしょう。

さて、全ての起業家の悩みのタネでもある資金調達を、より簡単かつ低コストなものに変革する「Uncapped」。欧州スタートアップの需要を掴み、かつ適切な出資を行うことで、新しい資金調達モデルを生み出すことができるのでしょうか。同社の今後の発展に期待が高まります。

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