ブロックチェーンで世界の「偽造医薬品」問題に挑むナイジェリアのChekkit

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Image Credit:Checkit

ピックアップ:Nigerian blockchain startup, Chekkit, pilots its drug verification tech in Afghanistan

ニュースサマリー:ナイジェリア発のスタートアップ「Chekkit Technologies」は9月、アフガニスタンにおける同社事業展開へのパートナーシップを当局保健省と締結したと発表した。同社はブロックチェーンを利用した追跡可能なスマートラベルを使用し、新興国で毎年多くの死者を出している「偽造医薬品」問題の解決に取り組んでいるスタートアップ。2018年にナイジェリアで創業した同社は、現在同国ならびに米国にもオフィスを構えている。

重要なポイント:同社の技術は主に、サブサハラ(アフリカ全土のうち北アフリカを除いたサハラ砂漠より南の地域)全域を中心に新興国で毎年多くの死者を出している「偽食料品」・「偽造医薬品」問題の解決に取り組んでいることで知られている。

詳細な情報:新興国では毎年多数の死者が出ている偽造医薬品市場は推定で年間2,000億ドルにもなるといわれている。その多くは中国産とされる偽造医薬品だ。本物と見分けがつかないほど精巧なパッケージのものも多く、医薬品の輸入に関する規定や制度、検閲体制などが整わない国では国内への流入を防ぎきることが難しいため、深刻な被害が出ている国が多くありながらも、現在まで根本的な解決が難しい状態が続いている。

  • Chekkit Technologies はこの問題を解決するために、倉庫から流通業者、最終消費者に至るまで、製品の動きが追跡可能なブロックチェーンベースのプラットフォームを構築した。
  • Checkitが提供するスマートラベルは、パッケージに貼付されたQRコードもしくは数値コードによる一意のIDによって流通の過程を管理・記録していく。輸入されてきた医薬品には、輸入された段階でその情報とともにパッケージにラベルが貼付される
  • 消費者や販売者は、Checkitのアプリからスマートラベル上のQRコードをスキャンもしくはIDを入力することで、パッケージ単位での流通経路や実際に医薬品として認可されている製品であるかどうかの確認が可能。誤って偽造医薬品を販売したり購入・服用したりすることを防止する。
  • ナイジェリアを始め新興国ではスマートフォンの普及率もまだ低いため、フィーチャーフォンからでも当該IDを使用したUSSDコードによる情報取得が可能。
  • 2018年に設立されたChekkitは昨年2つの大きな成果をあげた。2019年11月、アフガニスタン保健省と偽造医薬品問題について既に協議を行っていたFantom Foundationがスポンサーを務めるAfricArena SummitのブロックチェーンピッチコンペティションでChekkitが1位を獲得した。その後、今回発表に至ったアフガニスタン保健省とパートナーシップの締結に至る。
  • 今後アフガニスタン市場において、実際に販売される8万点の医薬品にChekkitのスマートラベルを貼付し3ヶ月のパイロット運用が行なわれる。
  • ナイジェリアとガーナのDeep Tech企業向けアクセラレータープログラム FbStart Accelerator にも参加。CEOのOdumade氏によれば、参加後の同社収益は1200%増加し、10万件を超える製品の認証確認が行われたとのこと。「2025年までに、アフリカと世界の数百万人の人たちを(偽造薬・偽造品などから)守りたい」という同社の信念に向け、精力的に事業を拡大している。

背景:アフリカ大陸の中でも特にサブサハラ以南の地域での偽造医薬品問題は非常に深刻であり、偽の抗マラリア薬により毎年10万人以上の死者が出ているほか、5歳未満の子どもの12万人以上が何らかの偽造医薬品を摂取した事が原因で亡くなっている。WHOによれば2013年から2017年の間に報告された偽造医薬品の42%がアフリカで押収されたものであった。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

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