ロボットとモビリティ:パンデミックで遠隔医療に向かったSpot(1/2)

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春に遠隔医療現場で活躍したSpot(Image Credit : Boston Dynamics)

今週(9月第3週)私たちは、Boston DynamicsのCEOであるRobert Playter氏のインタビュー記事を掲載した(編集部注:日本語翻訳版はこちらから)。そこでは彼がCEOとして初めて過ごした1年間や、約30年が経って同社の収益目標はどう変わったか(Boston Dynamicsは1992年設立)や、「Spot」、「Pick」、「Handle」、「Atlas」についてや、次のロボットも含め同社の幅広いロードマップについて話を聞いた。

インタビューの直前、Boston Dynamicsは四足歩行ロボット「Spot」を7万4,500ドルで発売することを公表した。9月第2週、同社は同じ小売価格でSpotの販売をカナダ、EU、イギリスに拡大した。Playter氏は当初の販売数を明かし、Spotには来年ロボット部門ができると断言した。同社の物流ロボットの計画について語り合った後、話は2020年に移った。Boston Dynamicsのロボットにおいて最も重要な特徴とは何か。そのインタビューの模様を紹介する。

VentureBeat: 日々の業務にパンデミックはどんな影響を与えていますか?

Playter: 思っていたよりも早く順応できたと思います。しかも、建設的に。マシーンの性質上、どうしてもそばにいなければならない場面もあるので、100%の生産性はありえません。しかしSpotに関しては、パンデミックが実際に発生した時点ですでに製造を準備し、稼働させていたのは良かったですし、私たちはすべての従業員を在宅勤務にしました。

さらに、エンジニアの大部分がロボットを持ち帰り、基本的には自宅で作業を続けています。これは実に異例のことでした。現時点では、いくつかの物流ロボットに関してはそうすることができません。従って開発が遅れている部分もあるのは確かです。私たちはシミュレーションの作業量を増やしました。どうしてもロボットを使って実験を行う必要のある社員のみ、制限を設けて管理を行った上で施設へのアクセスを許可しました。

全体的に、従業員がリモートでも実に生産的になれるということを心から嬉しく思っています。長い目で見れば失うものもあると思います。統制のとれる方法を見つけ、再び一緒に時を過ごせるようになることを願っています。また、ロボットのそばにいるというだけでも、本質的に刺激的でやる気が起きるものです。思うにエネルギーレベルを高く保つためには、ロボットのそばにいる必要があります。しかし、実際には驚くほどうまく行っていると思っています。

VentureBeat: 企業としてフォーカスするべきものやロードマップ、大局的な使命について影響はありますか?

Playter: これらの製品を開発・発表することに関しては、特に変化はないと思っています。しいて言えば市場の緊迫感でしょうか。3月と4月の売上は落ちませんでしたが、伸びもしませんでした。多少不振ではありましたが、それは顧客たちも外出を控えたせいだと考えています。誰もが世の中で起こっていることに順応していたのです。

現在、私たちは順応を早め、急速に開発を行っています。Dr. Spotの趣旨は遠隔医療ロボットです。「このパンデミックにダイレクトに対処できることは何だろう?まさにロボットが関与すべき事態だろうと。突如として誰かと一緒にいることが危険となってしまった今、役立つ応用方法はないだろうか?」と考えた結果生まれたものです。私たちはリモート学習のようなものを検討しました。ロボットをリモートで実験したりプログラムしたりできれば面白いかもしれませんが、それは追求しないことに決めました。

主に患者の摂取量をモニタリングするためにロボットを使用することについて、いくつかのインバウンドの問い合わせがありました。医療関係者が患者から離れた場所にいることを可能にし、保護具を交換する必要がないため保護具不足を解消できます。患者はウイルスを持っているかもしれない患者を診察した人と接触せずに済むので安心感を得られます。

リモートでバイタルサインセンシングを行うのは、これまでは難しい課題でした。リモートでバイタルサイン測定をするためのピースをすべてつなぎ合わせた人は誰もいませんでした。そこで、MITおよびブリガム・アンド・ウィメンズ病院と協力して迅速に開発を進めました。Spotがプラットフォームであり、最初から新しいセンサーや新しいペイロードを扱えるように設計されているため、非常に急速に進めることができました。そして実用的なプロトタイプを作成することができ、すでにテストが完了して今では複数の顧客がいます。

しかし、最終的に巨大な市場になることはないでしょう。これがロボットのキラーアプリだとは思いません。

急いで調査を行い、消毒ロボットなどいくつかの研究も行いました。しかし、最終的にはSpotの普及を支える直接的なアプリケーションの1つにはならないだろうと思います。当初から重要だと思っていた通り、それは複雑な工業用地、公益事業、石油・ガス用地、建設用地、製造用地の管理などではないでしょうか。顧客を呼び戻すことができるのは、そういったものだと思います。

これらは急に必要不可欠なサービスとなったので、いささか緊迫感があると思います。電気をつけ続ける。製造ラインを稼働させ続ける。倉庫を稼働させ続ける。その上で人々がお互いに過度に接触することを避けるためには、ロボット工学の役割が少し重要性を増したと思います。(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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