女性による女性のための金融包摂を目指す「Lucy」

SHARE:
Lucyウェブサイト

ピックアップ;How fintech could empower SEA’s female entrepreneurs

重要なポイント:金融包摂率が低く銀行口座を持たない人の多い国では、こういった人々が銀行や公的な機関からの融資が受けられないという問題があるが、女性の場合には特にその傾向が強くなっている。シンガポールを拠点とする「Lucy」は、男性起業家よりも資金調達が困難な女性起業家にフォーカスし、テクノロジーの活用によって様々な金融サービスの提供が行えるプラットフォームを構築、現在パイロットテストを行っている。

詳細な情報:あらゆる場所の起業家の女性に経済的な未来と可能性を実現するための「資金の管理や貯蓄から送金や融資に至るまで、さまざまな金融サービスを提供する」アプリを開発。現在シンガポールでパイロットテスト中、今年中のサービスローンチを目指す。

  • Forbesによると 2019年に創業者が男性のみの企業が調達した資金の総額が1,950億ドルに対し女性のみの企業は60億ドル、男性の共同創業者のいる女性企業は209億ドルとのことで、資金調達には大きな男女格差が存在している。
  • 金融包摂率が低く銀行口座を持たない人の多い東南アジアでは金融サービスが行き届いておらず、Lucyは、その中でも特に銀行口座保有率が低い傾向にある女性の事業主に代わって、必要な資金調達や融資などが受けられるようにするためのテクノロジー活用に焦点を当てている。
  • Lucyの女性CEO Watkins氏は、女性が企業の信用枠と融資を確保することの難しさを「女性の会社が男性が所有する会社よりも小さい理由の1つは、社会的信用のなさを理由に融資を断られることです。中小企業へ融資を行なう貸主は担保を必要としますが、多くの国では家計の担保、特に土地は夫の名前になっています」と指摘する。
  • Watkins氏によれば、女性のコミュニティを形成し情報や実践的なノウハウを交換できるようにすることにも意味があり、女性起業家同士を結び付けてお互いに実践的なアドバイスを提供できるようにすることも同サービスの重要な役割の1つと考えているため、プラットフォームにはこういった機能も組み込まれる。
  • シンガポールでのサービスローンチ後はサービスの提供範囲を東南アジア全域に拡大し、他の国でも同様な状況にある女性グループにリーチする予定だが、それぞれの国によって独自の課題があるということも認識している。

背景:女性主導の企業は男性主導の企業よりも業績が優れた傾向にあり、男性主導の企業と比べて3倍も優れた業績を上げるとしている調査もある。またBoston Consulting Groupでは、世界中の女性起業家が男性と同レベルの支援が受けられた場合、GDPは3~6%増加し世界経済を最大で5兆ドルを押し上げる可能性があるとの分析を公表している。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する