アジア各国から30社が結集した #AEA2020 で、食品劣化を防ぐ可食フィルム開発のタイEden Agritechが優勝

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Image credit: Asian Entrepreneurship Award steering committee

10月27〜29日、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2020(AEA 2020)が開催され、最終ピッチコンペティションで、タイのスタートアップ Eden Agritech が優勝した。

このイベントは、地元の NPO やインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会するもので、今回はコロナ禍の移動制限のためオンラインで開催された。27〜29日まで3日間をかけ、参加者はネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチコンテストで優勝の座を争った。

このコンペティションで、参加したスタートアップのピッチを審査したのは次の方々だ。

  • Michael Alfant 氏 Group Chairman and CEO, Fusions Systems Japan Group
  • 國土晋吾氏 TX アントレプレナーパートナーズ代表理事
  • Jesper Koll 氏 CEO, WisdomTree Japan
  • 山下和則氏 三井不動産 柏の葉街づくり推進部長
  • 百合本安彦氏 グローバル・ブレイン代表取締役
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セミファイナルにはアジア13の国や地域からスタートアップ30社が参加し、うち6社がファイナリストに選ばれた。

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【1位】Eden Agritech from タイ

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農作物の鮮度維持には従来、化学的な保存料を混入させたり流布させたりするような方法があったが、人間の健康に必ずしも良くない成分を含んでいたり、期待したほどの結果が得られなかったりすることが多かった。Eden Agritech では、自然由来の化合物で作った可食フィルム「Naturen」を開発、これを野菜や果物の噴霧・コーティングすることで、賞味期限を伸ばせるようにした。

Image credit: Eden Agritech

この技術のポイントの一つは、収穫後も呼吸している野菜や果物の呼吸を阻害しない、ということだ。これにより、従来ならば5日程度しか保存できなかったマンゴーを、Naturen の活用で15日程度にまで伸ばせたという。賞味期限を概ね2〜3倍に伸びせることで、例えば、アジアの野菜や果物の輸出業者が、ヨーロッパなど遠方にリーチできるなど市場拡大やフードロスの削減にも役立つ。

【2位】【オーディエンス賞】Nitium Technology from マレーシア

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歯を失った人が使うインプラントには、その材料にチタンが使われることが多い。人体に無害で組織適合性が良いためだ。ただ、多くのチタン製インプラントでは、埋め込まれた後にインプラント周囲の骨の再生と治癒に2~3ヶ月を要するため、人工歯を装着し安定して使えるようになるまで患者は苦痛を伴うものになってしまう。また、チタンは加工が難しいこともコスト高の一因となっている。

Image credit: Nitium Technology

Nitium Technology が開発したニッケルチタン化合物はチタンよりも多孔質であるため、気孔に骨が侵入して材料と強固に結合することができ、臨床試験では従来よりも6週間早く骨に定着が完了することが確認された。粉末冶金法(金属を微粉末にして焼結・加熱により形成)により、従来の60%のコストで製造が可能だ。安価なインプラントにより、歯を失ったより多くの人にソリューションを届けることを目指す。

【3位】Onesight Technology(以見科技)from 中国

Image credit: Asian Entrepreneurship Award steering committee

世界中で8割の建設プロジェクトが予算を上回り、2割のプロジェクトが予定より完成が遅れているという。建設途中で施工内容に誤りが見つかり手戻りが発生することも、そういった問題を誘発する一因だ。これらの問題を解決するため、業界では BIM(Building nformatioon Modeling)という技術が採用されるようになっている。建物の 3D モデルにメタデータを追加した建築物のデータベースを連携、建築設計、施工、維持管理までのあらゆる工程で情報活用するためのソリューションだ。

Image credit: Onesight Technology

Onesight Technology(以見科技) は BIM を開発・提供するスタートアップ。屋内では SLAM、屋外では高精度 GPS により正確な計測を実現、AR(拡張現実)モデルや IoT との組み合わせにより、建物の建築・施工・維持管理の見える化を改善し、問題箇所については自動的にプロジェクトオーナーに通知する機能も有する。2019年の SLUSH 上海で優勝。日本・中国・シンガポールで事業展開しており、日本では竹中工務店や住友商事と協業。住友商事の投資部門や Plug and Play China から出資を受けている。

【マイクロソフト賞】Brain Pool Tech from シンガポール(ファイナリスト外から選出)

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Brain Pool Tech は、ドローンから得られた地図データ、各所に配置されたセンサーから得られたデータ、GPS の人流データなどから、バターン認識や分析により、将来起きうる出来事のリスクや可能性を予測するスタートアップ。得られた知見の用途はさまざまで、物流の最適化、災害リスクのスコアリング、建設作業の効率化など、社会や業務の改善に役立てることができる。2019年に設立され、シンガポール国立大学のインキュベータ「GRIP」に採択された。

Image credit: BrainPool Tech

今月には、朝日放送系の ABC ドリームベンチャーズから約3,000万円をシード調達した。Brain Pool Tech と ABC ドリームベンチャーズは、神戸市多井畑西地区の里山保全・活用を目的として実証実験を行い、AI 分析モデルを用いた生物多様性の現状把握や災害リスクの特定方法などを考案、住民参加型の持続可能な里山の管理・活用を提案する計画だ。同社は現在、モビリティアクセラレータ「Move SG」と、アフターコロナソリューションを促進するアクセラレータ「Expara VirTech Global」に参加している。

【ライフサイエンス賞】Endimension Technology from インド

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レントゲン画像を使った際の誤診率は、インドでは30%に上るという。これは、レントゲン画像を見ることに特化した放射線科医が少ないことが一因だ。放射線科医が少ないのはインドや発展途上諸国に限った話ではなく、日本でも人口あたり放射線科医は少ないため、日本の医療界にも同様の問題は潜在している。

Image credit: Endimension Technology

Endimension Technology は、レントゲン画像の AI 診断に特化したソリューションを提供。機械学習でレントゲン画像の異常箇所を認知し指摘することができる。インドの4病院、アメリカの1団体、インドの3つの診断センターと提携し、1,400万枚の画像を AI が学習。AI as a Service として、遠隔診断をサブスクリプションモデルで提供する計画。

【日本ベンチャー学会賞】Mantra from 日本

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日本はマンガの世界最大の産出国だ。しかし、これを言語の壁無しに世界へ届けることは難しい。海外でも日本マンガは人気だが海賊版が大量に流通してしまっており、海賊版を手に取る人々にその理由を尋ねたところ、正式な翻訳版が無かったり、正式な翻訳版がリリースされるまでに時間がかかったりする、などを理由挙げた。マンガの翻訳は、通常の翻訳に比べプロセスが複雑であるため、コストと時間がかかってしまう。

Image credit: Mantra

Mantra は、マンガに含まれるセリフの翻訳者、翻訳されたセリフの版組み、校正者を一気通貫でつなぐ統合プラットフォームだ。セリフの読み取り、文字認識、翻訳などのプロセスには、それぞれ OCR や機械翻訳の仕組みも取り入れられ、翻訳者や版組みも最小限に抑えられている。これにより、マンガが原語である日本語版ともに、多国語版で同時発売できるようになる。従量課金制と出版社とのレベニューシェアの2つのビジネスモデルがあり、ローンチから3ヶ月で3つの出版社と契約を締結済。

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【IP Bridge賞】Chronoptics from ニュージーランド(ファイナリスト外から選出)

Image credit: Asian Entrepreneurship Award steering committee

Chronoptics は、飛行時間(Time of Flight)深度センシング技術(光を対象物に向けて照射し反射して戻ってくるまでの時間の違いを元に画像w生成する技術)を用いた 3D カメラソリューションを開発。ピクセルと点群データの間のギャップを埋め、利用シーンに有ったソリューションを提供する。用途はゲーム、家電、自動車、セキュリティ、産業オートメーションまで多岐にわたる。

Image credit: Chronoptics

例えば、農業分野では、果物や野菜がベルトコンベア上を移動している間に形状や大きさを把握して選別プロセスをスピードアップしたり、農場では動物の大きさや動きを測定し飼育状況を強化したりするのに使うことができる。空港や物流センターでは、以前より高速に荷物や貨物のパッケージをスキャンできるため、物流の強化に貢献できるという。国立ワイカト大学からのスピンオフ。


入賞はしなかったものの、ファイナリストに選ばれた残りの1社は次の通り。

Opsis from シンガポール

Image credit: Asian Entrepreneurship Award steering committee / Opsis

Opsis は、映像を使って、顔の表情から感情分析をリアルタイムで行う「Emotion AI」を開発。コロナ禍でテレエデュケーション(遠隔教育)やテレメディシン・テレヘルス(遠隔医療)の利用が増える中、現場の教師・ソーシャルワーカー・医師などからは、生徒や患者の感情を理解するのが難しいとの声が多い。Emotion AI は、映像越しでも相手の感情を客観的に評価するのに役立つ。

2D のカメラ映像を用いて、心理円環モデル(psychology circumplex model)で感情分析を行なっている企業としては世界で唯一だという。一般的に、感情分析では、驚き・悲しみ・恐れ・中立・不快・怒り・幸せという7つの基本ラベルを使うのに対し、Emotion AI では64,000種類の感情パターンを検知可能。民族や文化が影響する表情の違いをも吸収し、対象がアジア人でもヨーロッパ人でも正確に EQ 分析できるという。NTT や富士通らと協業している。