#AEA2015: アジア各国から30社が集まったピッチイベントで、組織再生技術を開発するサイフューズが優勝

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2015.5.29

aea-2015-all-winners-onstage

今週初め、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2015が開催され、日本発のスタートアップで人工細胞組織を開発するサイフューズが優勝した。

<関連記事>

このイベントは、地元のNPOインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会し、3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチ・コンテストで優勝の座を争った。

このコンペティションで、参加したスタートアップのピッチを審査したのは次の方々だ。

  • Michael Alfant 氏、Group Chairman and CEO, Fusions Systems Group
  • Jesper Koll 氏、Managing Director and Head of Japanese Equity Research, JP Morgan Securities Japan
  • Erik Vermeulen 氏、Professor of Business and Financial Law, Tilburg Law School and Tilburg Law & Economics Center, Tilburg University / The Netherlands Senior Counsel Corporate / Vice-President, Philips, Amsterdam, The Netherlands
  • 石倉洋子氏、一橋大学名誉教授

アジア各国から参加したスタートアップは30社、うち8社がファイナリストとして選ばれた。

1位:サイフューズ(日本) 賞金200万円

aea-2015-cyfuse-biomedical

(訂正とお詫び:一部の用語と調達金額に誤りがあったため、訂正しました。)

サイフューズは、3D プリント技術により人工細胞組織を作り出すスタートアップだ。細胞の球状体を集め、それを串刺しにすることで組織を実用可能な大きさにまで成長させる。日本各地の大学と協業しており、泌尿器科、脊椎損傷脊髄損傷、心臓組織の分野の権威と共同研究している。

人間の細胞組織よりも強いものが作り出せ、九州大学との研究では肝臓の代替細胞となる組織を作り出すことに成功した。これまでに3回の資金調達をしていて、2015年第1四半期に実施したシリーズBラウンドでは、ロボット工学ベンチャーのサイバーダイン、澁谷工業、エムスリーなど複数社から総額20億円14億円を資金調達している。人工の細胞組織生産のエコシステムを形成するために、今後は、製薬会社や医療機器メーカーなどとの提携を強化していきたいとしている。

2位:Dynaoptics(シンガポール) 賞金70万円

aea-2015-dynaoptics

Dynaoptics は、スマートフォンのカメラの多くがデジタルズームに頼る中で、超薄型の90度光軸レンズを開発することで光学ズームを可能とする技術を開発。これまでに3倍ズームまでの実現を成功させており、技術的には最高6倍までのズームが可能としている。光学ズームを実装することで、デジタルズーム特有のズーム時の画像ノイズやにじみなどが無くなる。

ビジネスモデルとしては、レンズのライセンス、生産、レンズモジュールの組み立て生産など。現在、シードラウンド資金調達中で、調達前の同社のバリュエーションは800万ドル。これまでに、シードラウンド調達目標額150万ドルのうち106万ドルの調達を終えており、2015年6月中にシードラウンドをクローズしたいとしている。

3位:Soft Space(マレーシア) 賞金50万円

aea-2015-softspace

(訂正とお詫び:初出では、受賞チームを Orthoneer としていましたが、Innova Nano Tech の誤りでした。)

Soft Space はスマートフォンに装着可能なクレジットカード・リーダー。磁気ストライプだけでなく、カードの埋込チップ読取に対応していることや、自らがアクワイヤリングするのではなく、アクワイヤラー(主に現地銀行)と提携する形をとっており、アジアやオセアニアの10ヵ国でサービスを展開している。ビジネスモデルとしては B2B2C、アクワイヤラーの銀行から手数料のうちの一部を徴収する。

ユースケースは多岐にわたるが、チャリティの資金集め、スーパー Tesco の商品自宅配達で玄関でクレジットカード決済できるサービスなど。変わった事例では、同社のカード・ソリューションを用い、日通のタイ法人で、社員がキャッシュレスでトラックの給油ができるサービスなどを開発している。

日本ニュービジネス協議会連合会会長賞:Innova Nano Tech(タイ) 賞金30万円

(訂正とお詫び:初出では、受賞チームを Orthoneer としていましたが、Innova Nano Tech の誤りでした。)

aea-2015-innova-nano-tech

Innova Nano Tech は、事業者向けの下水処理を簡素化する不純物の凝固剤を開発。製糖業界においては利用した水のほぼ100%が下水に、動物飼料業界では82%が下水になるとされる。しかし、多くの工場においては下水処理をしていない。処理システムの設置に多くのコストとスペースが必要になるからだ。

下水処理は主に、不純物の沈殿、微生物による処理、活性炭吸着処理から構成されるが、この3つの処理を従来型の下水処理から省略できる凝固剤を開発した。この凝固剤を使うことで下水から有機物質、無機物質、重金属を容易に除去でき、従来は4日間かかっていた処理が約100分の1である1時間で完了できるようになる。

これまでにタイ政府から4万ドルを授与、プロダクト開発のために14万ドルの資金調達を目標としている。

入賞したのは、以上のスタートアップ4社だ。入賞は残せなかったものの、ファイナリストに残った、他の4社についても見ておくことにしよう。

Cascube Limited(香港)

aea-2015-cascube-limited

Cascube Limited は、ワイヤレスの動物向け空間位置認識システム(WASPS)を開発。新薬の動物実験においては、ビデオ録画を利用するケースが多いが、これには非常に多くの個体数を用意し、長期間にわたって記録・監視する必要がある。

例えば、マウス60匹を使った平均的な24時間監視の動物実験の場合、従来のビデオ撮影による方法では21日間かかりコストは7,440ドルであるのに対し、WASPS では1日間で完了し1,040ドルで済んだ。マウスの動きを映像ではなく、WASPS では三次元の位置ベースで記録することができるからだ。

学術研究機関、実験動物の供給会社、新薬を開発する製薬会社を結んでエコシステムを形成。2015年中に初期プロトタイプを作成し資金調達を予定、2016年には初期ロット生産と2回目の資金調達を実施し、アメリカ、中国、日本で販売を開始したいとしている。

Orthoneer(タイ)

aea-2015-orthoneer

Orthoneer が開発した A-Knife は、ばね指(腱鞘炎の一種)を治療するためのナイフ。ばね指は糖尿病患者の10%に発症し、世界中で年間2,400万人が治療のための切開外科手術を受けている。A-Knife を使えば、通常、外科手術で15分かかる治療が3分で済み、手術室も不要。切開・縫合・抜糸で外科手術では回復までに1週間必要な治療が、A-Knife であれば、1日で回復できる。

当初は、東南アジア、インド、南アメリカ、南アフリカで病院に A-Knife を販売するところから始め、タイやインドなど発展途上国を中心にクリニック向けの A-Knife 提供サービス(販売ではなく、使った分だけコストが発生する置き薬的な費用徴収)を計画。すでに650個の A-Knife が販売済みで、現在、120万ドルの資金調達を模索している。

VMFive(台湾)

aea-2015-vmfive

VMFive は、モバイル向けの仮想環境ソリューションを提供。彼らのソリューション AdPlay を使うと、ユーザがモバイルアプリをダウンロード/インストールする前に、PCブラウザやアプリストアの説明ページで、そのアプリのデモを仮想的に動作させることができる。最近では、Adways と提携、同社のアプリ事前予約プラットフォーム「予約トップ10」上で、アプリがローンチする前にユーザがデモを試せるサービスの提供、D2C やトレンドマイクロとも提携関係にある。

中国の Cheetah Mobile(猟豹移動)の戦略とも似ているが、今後、ゲームを楽しむ上でのモバイル向けのさまざまなツールアプリを提供していくようだ。その第一弾が Game Booster(中国語名:加速達人)で、日本市場向けには6月中のローンチを計画している。

Neofect(韓国)

aea-2015-neofect

Neofect の創業者は、父を脳梗塞で亡くしている。実際、アメリカでも脳梗塞で身体に障害を生じた人々が費やしたコストの総額は年間で6,270億ドルにも上っている。入院の場合も、在宅療養の場合も非常に多額のコストがかかり、従来からあるリハビリのソリューションはコストが高い。

Neofect は 1,000ドルの家庭用リハビリ機器を開発した。センサーとロボットの両方の技術が実装されており、ユーザが継続的にリハビリに臨めるようゲーミフィケーション・コンテンツを用意。リハビリの進展に沿ってメニューが変更される、機械学習アルゴリズムも備わっている。

腕、指、肩の3つの機能をリハビリするプロダクトを制作しており、KFDA(韓国)や FDA(アメリカ)など各国の規制当局からも承認を取得済、韓国国立リハビリセンター、サムスン医療センター、ヨンサン大学病院などと臨床実験や販売にあたってのアライアンスを結んでいる。

これまでに韓国の複数のVCから550万ドルを調達しており、次のラウンドは2016年中頃を予定。日本、アメリカ市場への進出を計画している。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------