#AEA2018: アジア各国から20社が集まったピッチイベントで、導入容易な無人小売店舗システム「SMARTCART」を開発するNZのIMAGRが優勝

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2日、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2018が開催され、ニュージーランドのスタートアップの IMAGR(イメージャー)が優勝した。

このイベントは、地元のNPOインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会するもの。3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチ・コンテストで優勝の座を争った。

このコンペティションで、参加したスタートアップのピッチを審査したのは次の方々だ。

  • Michael Alfant 氏、Group Chairman and CEO, Fusions Systems Group
  • Jesper Koll 氏、CEO, WisdomTree
  • 村井勝氏、TX アントレプレナーパートナーズ代表
  • 國土晋吾氏、TX アントレプレナーパートナーズ代表理事

アジア各国から参加したスタートアップは20社、うち6社がファイナリストとして選ばれた。

なお、オープンイノベーションを意識した、日本の大企業とのの協業を意図して審査する観点から、EY新日本有限責任監査法人、KDDI、三井不動産、オムロン、パナソニックからそれぞれ一名ずつ、スタートアップ協業担当者がコーポレートジャッジとして参加した。

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【1位】【聴衆賞】SMARTCART by IMAGR from ニュージーランド

現在でも、小売取引の多くはオフラインで行われている。それゆえ、購入体験の革新化や効率化のために、Amazon や Tencent(騰訊)といったテック大手は、無人店舗の開発に多くの金額を投資している。しかし、これらの技術の技術には、多額の費用投資がかかるなどの課題がある。IMAGR が開発した SMARTCART は、買い物カゴにカメラが備わっており、ユーザが店頭で商品を入れた時に、画像認識で何の商品であるかを判断する。

店頭にカメラを備えるよりコストが安く、正確なのが特徴。Smartcart には QR コードが備わっており、モバイルアプリを使って決済ができる。ユーザ情報が専用アプリに紐づくので、そこからオムニチャネルへの顧客誘導も可能だ。今年8月に、ニュージーランド最大の小売大手に導入。来年以降、日本の小売大手とのパイロット運用、本格運用を目指す。

【2位】Brain Beat from ロシア

Brain Beat は、糖尿病患者のための非侵襲のグルコースメーター(糖質計)を開発している。指に血液を採取しなくても測定ができるおが特徴。これまでの非侵襲型のグルコース濃度測定には問題があった。皮膚の色(メラニン)やタイプ、ヘモグロビン、水分、脂質などの影響を受けるからだ。Brain Beat は、特殊な光を出す LED と検出技術を開発、検出結果を独自に開発した計算式に当てはまることで正確な値を測定できるようにした。

既存のグルコースメーターのように消耗品を必要としないので、糖尿病患者の経済的負担も緩和できる。自社で製造はせず、ライセンスを医療機器メーカーや製薬会社にライセンスすることでマネタイズする計画だ。2018年にブレスレットタイプのデバイス開発に成功した。2019年には、日本・アメリカ・中国・ヨーロッパで臨床研究や認証取得を実施し、販売を開始したいとしている。

【3位】【柏の葉賞】PPLC by ヒラソル・エナジー(Girasol Energy)from 日本

日本においては助成金の後押しもあって太陽光発電の導入は伸びたものの、助成金が縮小されたこともあり新規導入のペースは落ちている。太陽光発電の課題は、初期導入時の検査のための人的コスト、機器コストが大きく、それらが利益を圧迫する点だ。特に、ソーラーパネルの設置場所に専門家が立ち会って検査・定期メンテナンスする必要があるのは大きい。

Girasl Energy は、東京大学からライセンスされた PowerPulse Line Communication(PPLC)技術を使い、IoT ゲートウェイを使って、得られた情報をクラウドにアップロード。AI データ分析によって、太陽光発電の効率最適化・利益最大化を行う。太陽光発電のオペレータには、サブスクリプションモデルでサービスを提供する。NEDO から助成金を得て山梨県で実証実験中、2017年12月には ANRI などから数千万円の資金を調達している。

【日本ベンチャー学会賞】Spinamic by Value and Trust (VNTC) from 韓国

VNTC は、脊柱側弯症患者のためのソリューションを提供するスタートアップだ。脊柱側弯症は10代以降の女性に顕著に見られる症状で、患者の数は全人口の5%に及ぶ。症状の重さによって、経過観測、コルセットによる矯正、外科手術などの対応が必要になる。矯正のためのコルセットは、1日23時間以上の装着が推奨されるが、VNTC は患者の QOL を改善する見た目にもよいコルセット「Spinamic」を開発した。

既存のコルセットと異なり、プラスチックではなくファブリック(繊維)でできているため着心地もよい。ダイヤルで締め付け圧力を調整でき、アプリと連動して装着時間のプッシュ通知する機能も備わっている。取得したデータは、病院とも共有可能だ。整形外科、リハビリ施設、カイロプラクティック、小児科などの販売チャネルを通じ、2019年に日本、アメリカ、韓国でのローンチを計画している。日本では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の認証を取得済。

【IP Bridge 賞】GOKURI by PLIMES from 日本(ファイナリスト外からの入賞)

PLIMES は、筑波大学からスピンオフしたスタートアップで、加齢による飲み込み能力の低下、すなわち、嚥下機能計測を行う。首の部分に接触させたマイクを使って拾う音から嚥下が正常であるかどうかを日常的に計測でき、ユーザのリハビリの効率化を目指す。

今年4月に設立された PLIMES は、AI と IoT を用いた「嚥下計」の事業化を目標としている。嚥下障害をスクリーニングするための医療機器の研究開発にも着手し、高齢者や障害者の QOL(生活の質)向上に貢献したいとしている。


入賞はしなかったものの、ファイナリストに選ばれた残りの2社は次の通り。

Gexin Nano(革鑫納米)by Ningbo Gexin New Energy(寧波革鑫新能源科技)from 中国

既存の充電池として最も一般的なリチウム電池は、その充電容量と安定性に課題がある。現在、世界で見つかっている元素の中では、負極(電極)にシリコンと炭素の混合体を採用することでエネルギー密度が向上することがわかっている(シリコンを採用すると、エネルギー密度は元来の炭素電極の場合の10倍以上)。しかしこの負極を作るためには、非常に高品質に制御された(粒の大きさが揃った)材料生成技術と、シリコンとカーボンのコーティング技術が必要になる。

Gexin Nano はこれを実現するもので、自社技術により、粒の大きさを完全に制御した状態での、シリコンとカーボンの混合材料の生成技術を確立した。2013年12月にチームを生成、2018年7月にパイロット製品を製造。2019年の第1四半期にシリーズ A ラウンドで2,000万人民元の調達完了を計画している。営業活動は、2019年7月頃から開始する見込みだ。

Onward Health from インド

Onward Health は、乳ガンと子宮ガンに特化した予測分析をするソリューション。インドでは毎年100万人がガンを患者が現れるが、病理医や放射線医が検査を行い、得られた情報を元に腫瘍専門医が診断を行い、その情報を主治医が共有して治療を行うプロセスは非常に煩雑だ。

AI の活用により、医師が病理診断を行うことでの支援を提供することができる。20万件以上の過去の画像データをもとに、最大90%の正確性で判断できるという。現在は、インドにおける診断センターや細胞組織検査センターへの直販が中心。日本市場では、医療画像機器メーカーなどとの協業機会を模索している。

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