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#AEA2018: アジア各国から20社が集まったピッチイベントで、導入容易な無人小売店舗システム「SMARTCART」を開発するNZのIMAGRが優勝

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2日、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2018が開催され、ニュージーランドのスタートアップの IMAGR(イメージャー)が優勝した。 このイベントは、地元のNPOやインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会するもの。3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリ…

2日、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2018が開催され、ニュージーランドのスタートアップの IMAGR(イメージャー)が優勝した。

このイベントは、地元のNPOインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会するもの。3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチ・コンテストで優勝の座を争った。

このコンペティションで、参加したスタートアップのピッチを審査したのは次の方々だ。

  • Michael Alfant 氏、Group Chairman and CEO, Fusions Systems Group
  • Jesper Koll 氏、CEO, WisdomTree
  • 村井勝氏、TX アントレプレナーパートナーズ代表
  • 國土晋吾氏、TX アントレプレナーパートナーズ代表理事

アジア各国から参加したスタートアップは20社、うち6社がファイナリストとして選ばれた。

なお、オープンイノベーションを意識した、日本の大企業とのの協業を意図して審査する観点から、EY新日本有限責任監査法人、KDDI、三井不動産、オムロン、パナソニックからそれぞれ一名ずつ、スタートアップ協業担当者がコーポレートジャッジとして参加した。

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【1位】【聴衆賞】SMARTCART by IMAGR from ニュージーランド

現在でも、小売取引の多くはオフラインで行われている。それゆえ、購入体験の革新化や効率化のために、Amazon や Tencent(騰訊)といったテック大手は、無人店舗の開発に多くの金額を投資している。しかし、これらの技術の技術には、多額の費用投資がかかるなどの課題がある。IMAGR が開発した SMARTCART は、買い物カゴにカメラが備わっており、ユーザが店頭で商品を入れた時に、画像認識で何の商品であるかを判断する。

店頭にカメラを備えるよりコストが安く、正確なのが特徴。Smartcart には QR コードが備わっており、モバイルアプリを使って決済ができる。ユーザ情報が専用アプリに紐づくので、そこからオムニチャネルへの顧客誘導も可能だ。今年8月に、ニュージーランド最大の小売大手に導入。来年以降、日本の小売大手とのパイロット運用、本格運用を目指す。

【2位】Brain Beat from ロシア

Brain Beat は、糖尿病患者のための非侵襲のグルコースメーター(糖質計)を開発している。指に血液を採取しなくても測定ができるおが特徴。これまでの非侵襲型のグルコース濃度測定には問題があった。皮膚の色(メラニン)やタイプ、ヘモグロビン、水分、脂質などの影響を受けるからだ。Brain Beat は、特殊な光を出す LED と検出技術を開発、検出結果を独自に開発した計算式に当てはまることで正確な値を測定できるようにした。

既存のグルコースメーターのように消耗品を必要としないので、糖尿病患者の経済的負担も緩和できる。自社で製造はせず、ライセンスを医療機器メーカーや製薬会社にライセンスすることでマネタイズする計画だ。2018年にブレスレットタイプのデバイス開発に成功した。2019年には、日本・アメリカ・中国・ヨーロッパで臨床研究や認証取得を実施し、販売を開始したいとしている。

【3位】【柏の葉賞】PPLC by ヒラソル・エナジー(Girasol Energy)from 日本

日本においては助成金の後押しもあって太陽光発電の導入は伸びたものの、助成金が縮小されたこともあり新規導入のペースは落ちている。太陽光発電の課題は、初期導入時の検査のための人的コスト、機器コストが大きく、それらが利益を圧迫する点だ。特に、ソーラーパネルの設置場所に専門家が立ち会って検査・定期メンテナンスする必要があるのは大きい。

Girasl Energy は、東京大学からライセンスされた PowerPulse Line Communication(PPLC)技術を使い、IoT ゲートウェイを使って、得られた情報をクラウドにアップロード。AI データ分析によって、太陽光発電の効率最適化・利益最大化を行う。太陽光発電のオペレータには、サブスクリプションモデルでサービスを提供する。NEDO から助成金を得て山梨県で実証実験中、2017年12月には ANRI などから数千万円の資金を調達している。

【日本ベンチャー学会賞】Spinamic by Value and Trust (VNTC) from 韓国

VNTC は、脊柱側弯症患者のためのソリューションを提供するスタートアップだ。脊柱側弯症は10代以降の女性に顕著に見られる症状で、患者の数は全人口の5%に及ぶ。症状の重さによって、経過観測、コルセットによる矯正、外科手術などの対応が必要になる。矯正のためのコルセットは、1日23時間以上の装着が推奨されるが、VNTC は患者の QOL を改善する見た目にもよいコルセット「Spinamic」を開発した。

既存のコルセットと異なり、プラスチックではなくファブリック(繊維)でできているため着心地もよい。ダイヤルで締め付け圧力を調整でき、アプリと連動して装着時間のプッシュ通知する機能も備わっている。取得したデータは、病院とも共有可能だ。整形外科、リハビリ施設、カイロプラクティック、小児科などの販売チャネルを通じ、2019年に日本、アメリカ、韓国でのローンチを計画している。日本では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の認証を取得済。

【IP Bridge 賞】GOKURI by PLIMES from 日本(ファイナリスト外からの入賞)

PLIMES は、筑波大学からスピンオフしたスタートアップで、加齢による飲み込み能力の低下、すなわち、嚥下機能計測を行う。首の部分に接触させたマイクを使って拾う音から嚥下が正常であるかどうかを日常的に計測でき、ユーザのリハビリの効率化を目指す。

今年4月に設立された PLIMES は、AI と IoT を用いた「嚥下計」の事業化を目標としている。嚥下障害をスクリーニングするための医療機器の研究開発にも着手し、高齢者や障害者の QOL(生活の質)向上に貢献したいとしている。


入賞はしなかったものの、ファイナリストに選ばれた残りの2社は次の通り。

Gexin Nano(革鑫納米)by Ningbo Gexin New Energy(寧波革鑫新能源科技)from 中国

既存の充電池として最も一般的なリチウム電池は、その充電容量と安定性に課題がある。現在、世界で見つかっている元素の中では、負極(電極)にシリコンと炭素の混合体を採用することでエネルギー密度が向上することがわかっている(シリコンを採用すると、エネルギー密度は元来の炭素電極の場合の10倍以上)。しかしこの負極を作るためには、非常に高品質に制御された(粒の大きさが揃った)材料生成技術と、シリコンとカーボンのコーティング技術が必要になる。

Gexin Nano はこれを実現するもので、自社技術により、粒の大きさを完全に制御した状態での、シリコンとカーボンの混合材料の生成技術を確立した。2013年12月にチームを生成、2018年7月にパイロット製品を製造。2019年の第1四半期にシリーズ A ラウンドで2,000万人民元の調達完了を計画している。営業活動は、2019年7月頃から開始する見込みだ。

Onward Health from インド

Onward Health は、乳ガンと子宮ガンに特化した予測分析をするソリューション。インドでは毎年100万人がガンを患者が現れるが、病理医や放射線医が検査を行い、得られた情報を元に腫瘍専門医が診断を行い、その情報を主治医が共有して治療を行うプロセスは非常に煩雑だ。

AI の活用により、医師が病理診断を行うことでの支援を提供することができる。20万件以上の過去の画像データをもとに、最大90%の正確性で判断できるという。現在は、インドにおける診断センターや細胞組織検査センターへの直販が中心。日本市場では、医療画像機器メーカーなどとの協業機会を模索している。

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#AEA2017: アジア各国から21社が集まったピッチイベントで、ソーラー農業灌漑システムを開発するインドのClaro Energyが優勝【ゲスト寄稿】

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら。本稿における写真は主催者提供。 第6回を迎えたアジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)2017 が10月25日から27日にわたり、東京大学柏の葉キャンパスに面した KOIL で開催された。アジアの15カ国・地域から21のテクノロジースタートアップが3…

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら。本稿における写真は主催者提供。


ツアーの様子

第6回を迎えたアジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)2017 が10月25日から27日にわたり、東京大学柏の葉キャンパスに面した KOIL で開催された。アジアの15カ国・地域から21のテクノロジースタートアップが3日間のイベントに参加した。

農業向けのソーラー灌漑システムを提供するインドの Claro Energy が今年の1位を受賞、シンガポールの画像ソフトウェア企業 ViSenze が2位が聴衆賞を、また、スマートシティプログラムを提供するロシアのエンジニアリングソリューションプロバイダ Webgears WGT は、3位に入賞した。

1位を受賞した Claro Energy(インド)

Claro Energy は、当初はインド亜大陸、のちに世界中の農業灌漑業界をディスラプトする狙いで、2011年初期に設立されたスタートアップだ。Claro の農業従事者向けソーラー灌漑ソリューションは、高価なディーゼルエンジンポンプを代替することを目指している。ディーゼルポンプは高価なだけでなく、排気ガスによる空気汚染を引き起こし、サプライチェーンの中でさらなるカーボンフットプリントを使うことになる。

Claro の知的所有権は、ソーラーグリッド(太陽電池による電力網)など面展開ソーラーソリューションを可能にする。過去6年間にわたり、同社はインド15の州で7,000基以上のソーラー灌漑ポンプを設置してきた。彼らは、この分野に多くのビジネスモデルイノベーションをもたらしている。共同創業者でディレクターの Kartik Wahi 氏が、Claro Energy を代表してプレゼンテーションした。

2位を受賞した ViSenze(シンガポール)

ViSenze は小売業向けのビジュアルコマース拡大や、大企業向けの画像認識を提供する。日本の楽天市場のようなメジャーなショッピングサイト(ViSenze は、楽天が mainstayer である)、イギリスの ASOS、ドイツの有名スポーツウェアブランドサイト adidas が、あらゆるユーザ生成コンテンツからの製品検索の機会やコンバージョンレートを改善するため ViSenze を使っている。

web 起業家やコンピュータビジョン・サイエンティストらの手により、シンガポール国立大学から2012年にスピンオフした ViSenze のミッションは、人々が映像世界を検索・発見する方法を簡単にするというものだ。前述した楽天に加え WI Haprer から出資を受けており、マスターカードからも正式に支援を受けている。CEO で共同創業者の Oliver Tan 氏が、同社の決勝ピッチを行なった。

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3位を受賞した Webgears WGT(ロシア)

Webgears は、産業用アプリケーションやゲーム向けの、新しい web ベースの 3D グラフィックスに特化したソフトウェア技術会社だ。彼らのプロダクトはグラフィックエンジンで、ハードウェアをほぼ必要とせず、インタラクティブな 3D コンテンツをクラウド上に載せるだけで、顧客がインタラクティブな 3D グラフィックスと 3D モデルからより多くの価値を生み出すのを支援する。

ロシアの WGT はこれまで、3D 分野のグローバルリーダーであるフランスのダッソー・システムズと緊密に協業してきた。現在では WGT のブランドマークは業界通の間で知られた存在となり、Webgear はその活動を海外へと広げており、その一例として、東南アジアのスマートシティ開発にも取り入れられている。Webgears のピッチをした CEO の Larisa Dydykina 氏によれば、彼らは最近カリフォルニアに新しいアメリカオフィスを開設し、そこでは Dydykina 氏の息子がビジネスをグローバルに推進している。

メンタリングの様子

このアワードイベントは、産業界、政府、アカデミア(学術機関)のコラボレーションを通じ、イノベーションを生み出すアジアのエコシステムの実現を目指して、2012年から毎年開催されている。メンターシップ、ディスカッション、相互作用を通じた人的ネットワークを拡大すべく、オセアニアのみならずアジアから多くの若い起業家を集めてきた。

今年は特に、テクノロジースタートアップと地元企業間のビジネスコラボレーションの支援に焦点が当てられているが、AEA はこれまでにも、成功したエコシステムの背景について学ぶ機会だけでなく、各国のスタートアップ環境や最近の動向を深く研究できる、さまざまなスキームを提供してきた。

柏の葉賞を受賞した Genome Clinic(日本)

柏の葉キャンパスをスマートシティとして開発する上で役に立つ可能性のあるテクノロジー、プロダクト、サービスに対して贈られる「柏の葉賞」が今年開設され、この賞は日本の Genome Clinic(ゲノムクリニック)が受賞した。Genome Clinic がその名が示す通り、ゲノム医療に関与するスタートアップだ。前述した AEA 2017 の各賞に加えて、タイのスタートアップ AIM GLOBAL INNOVATION は、このイベントの主要支援者の一社にちなんで名付けられたナノキャリア柏の葉賞を獲得した。AIM は自閉症の子供の訓練のための、可愛いロボットを製作している。

ナノキャリア柏の葉賞を受賞した、AIM GLOBAL INNOVATION(タイ)

この地に本拠を置くバイオベンチャーのナノキャリア(東証:4571)らの支援に加え、不動産デベロッパの三井不動産東京大学産学協創推進本部TXアントレプレナーパートナーズ(一般社団法人)、日本ベンチャー学会が AEA の共催者を務めた。「柏の葉」プロジェクトの原動力として、社会の発展のためにアントレプレナーシップをさらに押し進める必要性を三井不動産は強調した。

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#AEA2015: アジア各国から30社が集まったピッチイベントで、組織再生技術を開発するサイフューズが優勝

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今週初め、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2015が開催され、日本発のスタートアップで人工細胞組織を開発するサイフューズが優勝した。 <関連記事> 「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)」が目指すもの——イベントの立役者、三井不動産ベンチャー共創事業部に話を聞いた #AEA2014: 精神疾患に効能のあるウエアラブル・ベスト、シンガポール…

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今週初め、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2015が開催され、日本発のスタートアップで人工細胞組織を開発するサイフューズが優勝した。

<関連記事>

このイベントは、地元のNPOインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会し、3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチ・コンテストで優勝の座を争った。

このコンペティションで、参加したスタートアップのピッチを審査したのは次の方々だ。

  • Michael Alfant 氏、Group Chairman and CEO, Fusions Systems Group
  • Jesper Koll 氏、Managing Director and Head of Japanese Equity Research, JP Morgan Securities Japan
  • Erik Vermeulen 氏、Professor of Business and Financial Law, Tilburg Law School and Tilburg Law & Economics Center, Tilburg University / The Netherlands Senior Counsel Corporate / Vice-President, Philips, Amsterdam, The Netherlands
  • 石倉洋子氏、一橋大学名誉教授

アジア各国から参加したスタートアップは30社、うち8社がファイナリストとして選ばれた。

1位:サイフューズ(日本) 賞金200万円

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(訂正とお詫び:一部の用語と調達金額に誤りがあったため、訂正しました。)

サイフューズは、3D プリント技術により人工細胞組織を作り出すスタートアップだ。細胞の球状体を集め、それを串刺しにすることで組織を実用可能な大きさにまで成長させる。日本各地の大学と協業しており、泌尿器科、脊椎損傷脊髄損傷、心臓組織の分野の権威と共同研究している。

人間の細胞組織よりも強いものが作り出せ、九州大学との研究では肝臓の代替細胞となる組織を作り出すことに成功した。これまでに3回の資金調達をしていて、2015年第1四半期に実施したシリーズBラウンドでは、ロボット工学ベンチャーのサイバーダイン、澁谷工業、エムスリーなど複数社から総額20億円14億円を資金調達している。人工の細胞組織生産のエコシステムを形成するために、今後は、製薬会社や医療機器メーカーなどとの提携を強化していきたいとしている。

2位:Dynaoptics(シンガポール) 賞金70万円

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Dynaoptics は、スマートフォンのカメラの多くがデジタルズームに頼る中で、超薄型の90度光軸レンズを開発することで光学ズームを可能とする技術を開発。これまでに3倍ズームまでの実現を成功させており、技術的には最高6倍までのズームが可能としている。光学ズームを実装することで、デジタルズーム特有のズーム時の画像ノイズやにじみなどが無くなる。

ビジネスモデルとしては、レンズのライセンス、生産、レンズモジュールの組み立て生産など。現在、シードラウンド資金調達中で、調達前の同社のバリュエーションは800万ドル。これまでに、シードラウンド調達目標額150万ドルのうち106万ドルの調達を終えており、2015年6月中にシードラウンドをクローズしたいとしている。

3位:Soft Space(マレーシア) 賞金50万円

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(訂正とお詫び:初出では、受賞チームを Orthoneer としていましたが、Innova Nano Tech の誤りでした。)

Soft Space はスマートフォンに装着可能なクレジットカード・リーダー。磁気ストライプだけでなく、カードの埋込チップ読取に対応していることや、自らがアクワイヤリングするのではなく、アクワイヤラー(主に現地銀行)と提携する形をとっており、アジアやオセアニアの10ヵ国でサービスを展開している。ビジネスモデルとしては B2B2C、アクワイヤラーの銀行から手数料のうちの一部を徴収する。

ユースケースは多岐にわたるが、チャリティの資金集め、スーパー Tesco の商品自宅配達で玄関でクレジットカード決済できるサービスなど。変わった事例では、同社のカード・ソリューションを用い、日通のタイ法人で、社員がキャッシュレスでトラックの給油ができるサービスなどを開発している。

日本ニュービジネス協議会連合会会長賞:Innova Nano Tech(タイ) 賞金30万円

(訂正とお詫び:初出では、受賞チームを Orthoneer としていましたが、Innova Nano Tech の誤りでした。)

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Innova Nano Tech は、事業者向けの下水処理を簡素化する不純物の凝固剤を開発。製糖業界においては利用した水のほぼ100%が下水に、動物飼料業界では82%が下水になるとされる。しかし、多くの工場においては下水処理をしていない。処理システムの設置に多くのコストとスペースが必要になるからだ。

下水処理は主に、不純物の沈殿、微生物による処理、活性炭吸着処理から構成されるが、この3つの処理を従来型の下水処理から省略できる凝固剤を開発した。この凝固剤を使うことで下水から有機物質、無機物質、重金属を容易に除去でき、従来は4日間かかっていた処理が約100分の1である1時間で完了できるようになる。

これまでにタイ政府から4万ドルを授与、プロダクト開発のために14万ドルの資金調達を目標としている。

入賞したのは、以上のスタートアップ4社だ。入賞は残せなかったものの、ファイナリストに残った、他の4社についても見ておくことにしよう。

Cascube Limited(香港)

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Cascube Limited は、ワイヤレスの動物向け空間位置認識システム(WASPS)を開発。新薬の動物実験においては、ビデオ録画を利用するケースが多いが、これには非常に多くの個体数を用意し、長期間にわたって記録・監視する必要がある。

例えば、マウス60匹を使った平均的な24時間監視の動物実験の場合、従来のビデオ撮影による方法では21日間かかりコストは7,440ドルであるのに対し、WASPS では1日間で完了し1,040ドルで済んだ。マウスの動きを映像ではなく、WASPS では三次元の位置ベースで記録することができるからだ。

学術研究機関、実験動物の供給会社、新薬を開発する製薬会社を結んでエコシステムを形成。2015年中に初期プロトタイプを作成し資金調達を予定、2016年には初期ロット生産と2回目の資金調達を実施し、アメリカ、中国、日本で販売を開始したいとしている。

Orthoneer(タイ)

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Orthoneer が開発した A-Knife は、ばね指(腱鞘炎の一種)を治療するためのナイフ。ばね指は糖尿病患者の10%に発症し、世界中で年間2,400万人が治療のための切開外科手術を受けている。A-Knife を使えば、通常、外科手術で15分かかる治療が3分で済み、手術室も不要。切開・縫合・抜糸で外科手術では回復までに1週間必要な治療が、A-Knife であれば、1日で回復できる。

当初は、東南アジア、インド、南アメリカ、南アフリカで病院に A-Knife を販売するところから始め、タイやインドなど発展途上国を中心にクリニック向けの A-Knife 提供サービス(販売ではなく、使った分だけコストが発生する置き薬的な費用徴収)を計画。すでに650個の A-Knife が販売済みで、現在、120万ドルの資金調達を模索している。

VMFive(台湾)

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VMFive は、モバイル向けの仮想環境ソリューションを提供。彼らのソリューション AdPlay を使うと、ユーザがモバイルアプリをダウンロード/インストールする前に、PCブラウザやアプリストアの説明ページで、そのアプリのデモを仮想的に動作させることができる。最近では、Adways と提携、同社のアプリ事前予約プラットフォーム「予約トップ10」上で、アプリがローンチする前にユーザがデモを試せるサービスの提供、D2C やトレンドマイクロとも提携関係にある。

中国の Cheetah Mobile(猟豹移動)の戦略とも似ているが、今後、ゲームを楽しむ上でのモバイル向けのさまざまなツールアプリを提供していくようだ。その第一弾が Game Booster(中国語名:加速達人)で、日本市場向けには6月中のローンチを計画している。

Neofect(韓国)

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Neofect の創業者は、父を脳梗塞で亡くしている。実際、アメリカでも脳梗塞で身体に障害を生じた人々が費やしたコストの総額は年間で6,270億ドルにも上っている。入院の場合も、在宅療養の場合も非常に多額のコストがかかり、従来からあるリハビリのソリューションはコストが高い。

Neofect は 1,000ドルの家庭用リハビリ機器を開発した。センサーとロボットの両方の技術が実装されており、ユーザが継続的にリハビリに臨めるようゲーミフィケーション・コンテンツを用意。リハビリの進展に沿ってメニューが変更される、機械学習アルゴリズムも備わっている。

腕、指、肩の3つの機能をリハビリするプロダクトを制作しており、KFDA(韓国)や FDA(アメリカ)など各国の規制当局からも承認を取得済、韓国国立リハビリセンター、サムスン医療センター、ヨンサン大学病院などと臨床実験や販売にあたってのアライアンスを結んでいる。

これまでに韓国の複数のVCから550万ドルを調達しており、次のラウンドは2016年中頃を予定。日本、アメリカ市場への進出を計画している。

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「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)」が目指すもの——イベントの立役者、三井不動産ベンチャー共創事業部に話を聞いた

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日本の学術研究都市と言えば、西のけいはんなに、東のつくば。けいはんなにはオトナロイドやコドモロイドの開発拠点となった ATR があり、つくばにはサイバーダインに代表されるロボティクス・ベンチャーや数々のスタートアップが集結している。東京とつくばを結ぶほぼ中間地点には、三井不動産が中心となった開発を進める次世代都市地区「柏の葉スマートシティ」があり、ここでは、自動車の運転をスマート化するスタートアッ…

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三井不動産ベンチャー共創事業部 事業グループ長の松井健氏(右)と、主査の加藤慶氏(左)

日本の学術研究都市と言えば、西のけいはんなに、東のつくば。けいはんなにはオトナロイドやコドモロイドの開発拠点となった ATR があり、つくばにはサイバーダインに代表されるロボティクス・ベンチャーや数々のスタートアップが集結している。東京とつくばを結ぶほぼ中間地点には、三井不動産が中心となった開発を進める次世代都市地区「柏の葉スマートシティ」があり、ここでは、自動車の運転をスマート化するスタートアップ「スマートドライブ」の実証実験が実施されたことでも記憶に新しい。

柏の葉スマートシティの中心部、つくばエキスプレスの駅周辺には、柏の葉オープンイノベーションラボ(Kashiwa-no-ha Open Innovation Lab、略称:KOIL)があり、毎年ここを会場として「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)」が開催されている(昨年の模様にこちらから)。

昨年のイベントの記事をご覧いただいた読者は、AEA が日本で開催される典型的なスタートアップ・カンファレンスとは少し毛色が異なることに気づくだろう。ピッチに登壇するのは、IT に特化したサービスに限定されず、基礎技術から重工業の需要を対象とした製品まで分野は多岐にわたる。

今年の AEA は5月24日~26日に開催されるが、イベントに先立って、AEA の目的や開催までの経緯について、三井不動産ベンチャー共創事業部事業グループ長の松井健氏に話を聞いた。

AEA はこうして生まれた

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東京・秋葉原とつくば学研都市を結ぶ、つくばエクスプレス(略称:TX)が開通したのは2005年のこと。次第ににその周辺には、技術を冠したベンチャー企業が集まり始めた。三井不動産は柏を中心に不動産開発を進めてきた兼ね合いがあり、2010年前後からこの地域のベンチャー企業の活動を支援したきたが、そんな中で松井氏らには、気になることがあった。

つくばエクスプレスの沿線には技術が多くあり、ベンチャー企業を応援するためにベンチャー支援団体も作った。しかし、彼らは日本国内の市場しかみていないというか、大きなエクスパンションを見ていない人が多かった。もっと言えば、あまり欲が無い。(松井氏)

数あるベンチャーをもう一歩向こうのステージへと推し進められないかと思案する中で、松井氏は同じような考えを持つ人物に出会った。東京大学教授の各務茂夫氏だ。アジアの熱い風を日本のベンチャーコミュニティに送り込めないかと考えていた各務氏と松井氏らが手を組み、約1年間の準備期間を経た2011年、桜の咲く頃に柏の街にアジアのベンチャーが十数チーム集まった。AEA の誕生だ。

今年で4回目を迎える AEA への参加条件は、工学産業系やテクノロジー系のベンチャーであること。また、未上場で設立から5年以内である必要がある。

日本の強みはテクノロジーベンチャーだが、残念ながら支援がつきにくい。そこを応援していきたいというのが AEA の狙いだ。

日本では起業してから7〜8年して鳴かず飛ばずでも許される気運があるが、アジアだと、もう大きくなっているかつぶれているかのどちらか。そのスピード感を持ち込みたかった。そこで、イベントはすべて英語でやることにした。プレゼンテーションにも同時通訳はつけないことにした。(松井氏)

AEA にはアジア12の国と地域から、各国の大学や研究機関の起業家支援者による推薦や予選を勝ち抜いたベンチャー企業30チームが集まり、上位入賞を目指して、互いの技術やビジネスモデルを競い合う。

ネットワークこそ宝

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昨年の AEA 2014 で優勝した T.Ware(シンガポール)のチーム。

AEA に参加するベンチャー企業30チームは、前夜祭を含めるとファイナル・プレゼンテーションが行われる最終日まで4日間にわたって、ほとんどの時間を同じ屋根の下で過ごすことになる。そこから生まれる人的ネットワークに、後々にビジネスを大きくする上での大きな価値を見出すチームは少なくない。

1位賞金の200万円というのも大きい。1位〜3位入賞者には、KOIL などの2年間無料使用権も授与している。しかし、彼らにとって、何よりもここから生まれるネットワークこそが宝です。

エントリーしてくるベンチャー企業の第一のモチベーションは、自分たちの力だめし。世界の中で、自分たちの技術やビジネスが、どのくらいの位置にあるのか、というのを知りたがっている。第二に、日本市場へのマーケットエクスパンション。

ベンチャー企業のイベントへの招聘にかかるコストはスポンサー企業からの協賛金で賄っており、どこまで続けられるかわからないが、小宮山さん( AEA を主催するフューチャーデザインセンター最高顧問で、三菱総合研究所理事長)とは、歯を食いしばって最低10回位まではやりたいなぁ、と言っています。(松井氏)

入賞したベンチャー企業のその後を見てみても、AEA がアジア各国の起業エコシステムに好影響を与えていることが窺い知れる。2012年の AEA に参加したフィリピンの Neugent Technologies(防犯カメラ録画技術)は準優勝の座に輝き、同社の共同創業者 David Cruz 氏は AEA からの経験で得られた自信を胸に、さらに複数の会社を起業し、切り盛りするようになった。

KOIL と TX を母体とする TX Entrepreneur Partners(TEP)のメンター組織「グローバルパートナープログラム」が手を貸してくれるので、参加チームは日本への市場エントリのみならず、アジア各国への進出においても、ローカル市場への紹介や方法論の手ほどきを受けることができる。

三井不動産のベンチャー投資

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三井不動産のコワーキング・スペース「Clipニホンバシ」 (同社ホームページから)

三井不動産は去る4月、スタートアップを始めとするベンチャー企業への投資活動を担ってきた担当部門「ベンチャー共創事業室」を「ベンチャー共創事業部」に格上げし、31 VENTURES(サンイチベンチャーズ)として事業を本格始動した。言うまでもなく、31 VENTURES の名前は〝ミツイ〟に由来するが、三井不動産のビルがある日本橋や霞が関はもとより、都内各所にベンチャー支援オフィスを31カ所作りたい、という目標を掲げている。

最近では、ユーグレナが組成したリアルテック向けの20億円ファンドへの出資、スマートロック「Akerun」との提携による空きオフィス有効活用事業などは記憶に新しい。

不動産会社がスタートアップやベンチャー企業を支援する背景には、その企業が将来成功した際のオフィス需要に期待を寄せているのも事実だが、それ以上に、不動産という目に見えるアセットを生かして、事業創出にどれだけ貢献できるか挑戦している、という見方ができる。オフィスを持たない企業は皆無であり、大会社であれ、中小企業であれ、不動産会社にはお世話になるわけで、不動産会社の持つ企業ネットワークの広大さには計り知れないものがある。海外では、香港の不動産コングロマリット Swire Properties が自らインキュベータを始めており、日本の不動産会社からもこのような動きが出てくるのに期待したいところだ。

なお、来週開催される AEA 当日の模様は、THE BRIDGE でも現地からお伝えする予定だ。お楽しみに。

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#AEA2014: 精神疾患に効能のあるウエアラブル・ベスト、シンガポールの「T.Ware」がグランプリを受賞

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15日、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2014が開催され、シンガポールのウエアラブル・スタートアップ T.Ware がグランプリを受賞した。 このイベントは、地元のNPOやインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会し、3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メン…

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15日、東京郊外にある柏の葉スマートシティで、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2014が開催され、シンガポールのウエアラブル・スタートアップ T.Ware がグランプリを受賞した。

このイベントは、地元のNPOインキュベータ、東京大学や三井不動産らを中心に年に一度開催されており、アジア各国から将来有望なアイデアを持った起業家が一堂に会し、3日間をかけて、ネットワーキングを楽しんだり、メンタリングを受けたりした後、ピッチ・コンテストで優勝の座を争った。

本稿では1位〜3位までに入賞したスタートアップを紹介しよう。

【グランプリ・1位】T.Ware(シンガポール) 賞金300万円

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T.Ware は空気による圧力によって、擬似的に包容されたかのような感覚を着用者に与えることができる、ウエアラブルなベスト「T.Jacket」を開発している。セラピスト、大学研究者、精神科医と共同開発しており、感覚探索症や感覚過敏症に苦しむ人を助ける。

圧力はスマートフォンから遠隔で制御可能だ。感覚処理障害(SPD)、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、アルツハイマー型痴呆症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの悩む人々の症状の改善に効果がある。

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【2位】Gissco(タイ) 賞金100万円

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エンジン部品などの作成に用いられる、金型鋳造法をダイガストと呼ぶ。通常のダイガストでは、金属を高温で溶解して液体にし、鋳型に流し込み冷却して固形化するのを待つ。しかし、この過程で製造中の部品にひび割れが生じることがしばしばあり、こぼれ率が30%にも上る。

Gissco が開発した方法では、金属を溶解する段階でその液体を空気泡で撹拌、semi-solid(仮訳:半固体)の状態にゲル化する。これにより、鋳型に流し込んだときに素早く固まり、ひび割れが生じにくくなる。こぼれ率は10%にまで改善される。高温溶解する必要がなく、素早く固形化するため冷却に要する時間も短くなり、全体として部品製造の生産効率が著しく向上する。

【3位】YouthsToday(マレーシア) 賞金50万円

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YouthsToday は、ブランドが運営するイベントにユーザが登録・参加することで、景品・交換ができるプラットフォーム。ブランドにとっては、バイラルに影響力のあるユーザを味方につけることで、コスト・パフォーマンスの高いマーケティングが実施できるメリットがある。景品には、H&M のバウチャー、スターバックス・コーヒーのバウチャーなど多数用意されている。

現在はマレーシアのイベントのみを対象に運営されているが、今後はアジア諸国、ヨーロッパ、ひいては、アメリカなどにもサービス提供地域を拡大して行きたいとのことだ。


このイベントのスコープはアジアの起業家を対象にしたピッチ・コンテストであり、日本を含む各国のスタートアップが参加していたが、残念ながら日本のスタートアップはファイナリストに残ることができなかった。アジア各国の現地インキュベータや大学など研究機関が推薦する形で、エントリするスタートアップが選ばれるため、イベントに参加する以前の段階で、既に技術やビジネスモデルが確立されていたり、ビジネスがマネタイズできていたりするケースが多いようだ。

とかくデジタルなもの、インタンジブルなものに傾倒しがちなアジアのスタートアップ・シーンだが、このイベントでは技術を礎にしたアジア出身のスタートアップに数多く会うことができ、貴重な機会となった。毎年概ね5月上旬にエントリが締め切られるようなので、次回のアジア・アントレプレナーシップ・アワード2015への登壇に興味のあるスタートアップは、ぜひ来春、イベントのサイトをチェックして挑戦してみてほしい。

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