
農産物の流通現場向け SaaS「nimaru(旧称:bando)」を運営する kikitori は14日、JA グループ(全国の農協グループとその関連組織)と業務提携したことを明らかにした。また、同社は、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合(GP:グローバル・ブレイン、LP:農林中央金庫)から3,000万円を資金調達したことも明らかにしている。
2015年に創業した kikitori は、国産青果における既存の市場流通を DX(デジタルトランスフォーメーション)支援するスタートアップだ。国産青果の約8割を担う既存の市場流通において、卸売事業者や仲卸業者といった既存流通の業務効率化を狙い、これらの事業者間の需給調整の連絡を、従来の電話によるやりとりからモバイルをインターフェースとした SaaS へのシフトを促している。
kikitori では個人の生産者(農家)に対して nimaru のサービスを提供しており、その情報を受け取る卸売事業者や仲卸業者などからは業務が効率化するとして評価を得てきた。しかし、生産者から市場に届けられる青果の約6割が農協を通じてのものであるため、農協から来る情報についても nimaru 上でデジタルデータとして受け取りたいとのニーズがあった。

kikitori は昨年、JA グループの AgVenture Lab による指名型アクセラレータプログラム「Plant & Grow」第1期に採択。第1期では生産・流通現場の「見える化・データ化」がテーマに設定され、kikitori では各地の農協と協業する場合の試みとして、2月から湘南農協に nimaru を導入する。この導入に当たっては nimaru は一部機能がカスタマイズされ、生産者→農協→市場の情報フローが一気通貫化される見込みだ。
生産者〜卸売事業者・仲卸業者をつなぐ存在であるが(上図)、両端の双方をユーザとして増やすことが事業のスケールアップにつながる。nimaru を使う生産者を増やす → その生産者と取引のある卸売事業者・仲卸業者が nimaru を使う → その卸売事業者・仲卸業者と取引のある別の生産者が nimaru を使う、という上昇スパイラルを描いていて、農協との連携はこの最初の生産者ユーザの獲得に大きく寄与することが期待できる。
日経によると、nimaru は10の青果物市場で導入されており、2021年に50市場に広げる計画。
kikitori は昨年5月、シードラウンドで Coral Capital から5,000万円を調達している。
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