農産物流通特化型SaaS 「bando」運営、シードラウンドでCoral Capitalから5,000万円を調達

SHARE:
Image credit: Kikitori

農産物の流通現場向け SaaS「bando」を運営する kikitori は1日、シードラウンドで Coral Capital から5,000万円を調達したことを明らかにした。

2015年に創業した kikitori は、国産青果(野菜・果物)における既存の市場流通を支援するスタートアップだ。これまでにも、産地直送や生産者と消費者を直接つなぐサービスを提供するスタートアップは数多くあったが、kikitori は卸売事業者や仲卸業者といった既存流通の業務効率化を狙う。

その理由は、国産青果の約8割を既存の市場流通が担っているという点だ。鮮度や栽培方法を追求した青果は直接流通で付加価値を出せるが、我々の食卓を賑わせる青果食材の大部分は、圧倒的に既存流通によることがわかる。卸売事業者や仲卸業者といった流通業者は、生産者と小売業者の間に入って需要・供給を調整する役割を担っているが、その多くは今も電話でのやりとりだ。

Image credit: Kikitori

kikitori はこうした既存流通の業務改善に取り組むべく、自らもその現場に身を置いて研究を続けてきた。巣鴨の東京都中央卸売市場豊島市場に売買参加者として参加。文京区を中心に青果店「八彩(やさい)」を3店舗展開し、商品の仕入れから店頭販売までを自ら実践。そうして培った知見と信用を元に、大手卸売事業者のコンサルティングを手がけ、さらに裾野を広げる試みが bando だ。

青果の流通においては、市場でセリに掛けられて商品が取引される前に、事前に生産者と流通業者間で取引量が調整されていることが多い。必要以上に青果を納品し、商品がダブついて値崩れを起こすことは生産者にとって避けたいし、必要量が集まらず納品先の飲食店や小売店を困らせることは流通業者としても避けたいからだ。

この事前の納品量・取引量の調整は以前と変わらず電話によることが多く、結果的に流通業者のバイヤーは朝から晩まで生産者との連絡に忙殺されている。流通業者から生産者に電話してみても、生産者が農作業中でかかってきた電話に出てもらえない、ということもある。kikitori は青果流通の全体の業務効率化を目指すが、まずは、この流通業者〜生産者間のやりとりの部分から着手する。

Image credit: Kikitori

生産者である農家から納品量(入荷データ)を入力してもらうのに使うのはスマートフォンだ。当初は入力用にネイティブアプリも開発したそうだが、年配者が多い農家にはアプリのインストールのハードルが高く、現在は入力インターフェイスには LINE を入口とした Web アプリを採用している。送信されてきた入荷データを流通業者の基幹システムに取り込めるよう、kikitori では年内にはデータ連携 API などを公開予定だ。

物流コストが高い産直に重点を置くよりも、既存流通を変えた方がインパクトがあると思い bando を作った。1月末時点で、神奈川や栃木などの5事業者で実際に使ってもらっている。どれだけ事業者を跨いで、多くのデータを貯めていけるかがカギ。(代表取締役 上村聖季氏)

kikitori では調達した資金を使って bando のプロダクト開発やマーケティング費用に充て、さらなるサービス拡充を目指す。直近では特に、フロントエンドエンジニアの採用を強化するとしている。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する