創業から10年、「バーチャル経理アシスタント」へのピボットで生き残ったメリービズが描く未来

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左から:取締役 太田剛志氏、代表取締役 工藤博樹氏、取締役 山室佑太郎氏
Photo credit: Michael Holmes

国税庁のデータによれば、企業が設立されてから10年経過して生き残っている確率は6.3%。もっとも、時代ニーズの変化に迅速に呼応するのがスタートアップの得意技なので、失敗した事業は早々に閉じ、心機一転して新たな事業に臨むというのも賢明な判断だ。しかし、やはり一つの新会社が10年以上続くというのは賞賛に値することである。アメリカの独立記念日に創業したというそのスタートアップは今日から11年目の事業期に突入した。バーチャル経理アシスタントのメリービズだ。

10年前、経費の記帳代行サービスから始まった同社は、その後、記帳だけではなく経理業務を包括的に請け負うバーチャル経理アシスタントへとピボットを図った。この時ピボットができていなかったら、今のメリービズは存在しなかっただろうと、メリービズの創業者で代表取締役の工藤博樹氏は4年前を振り返る。この頃、ピボットを支援すべく参画したのが太田剛志氏であり、彼はその後、取締役に就任。もう一人の取締役である山室佑太郎氏は、インターンから取締役になったというメリービズの歴史を知る人物である。

ピボットは成功だったと言っていいだろう。大きな投資さえしなければ事業は黒字化しているが、そこはスタートアップなので計画は常に前のめりだ。バーチャル経理アシスタントが軌道に載ったという外部的な評価も得られたのだろう。同社はピボットして約1年後の2018年6月(発表は同年9月)に、みずほフィナンシャルグループ系総合リース大手の芙蓉総合リース(東証:8424)と、芙蓉総合リースの子会社アクリーティブから1億5,000万円を調達。その後、芙蓉総合リースから追加調達し持分法適用会社となっている

記帳代行を事業の柱にしていた頃、サービスをもっとテクノロジー寄りに振ろうとしていた。しかし、ユーザさんから、記帳代行だけでなく経理業務をまるっとやってもらえないか、と言われたのが事業転換のきっかけになった。当初は中小企業をターゲットにしていたが、今では多くの大手企業が経理業務を任せてくれている。経理業務まるごとのところもあれば、経費精算、記帳・仕訳入力、請求書発行だけなど、依頼される範囲はさまざまだ。(工藤氏)

先週オンライン開催された MerryBiz の10周年記念イベントの一コマ。
Photo credit: MerryBiz

大手企業で社内に経理が無いというケースは稀だろうが、働き方改革やコロナ禍のリモートワーク増で、残業を減らしたい、出社しないで経理が回る体制を作りたいなど、時流はメリービズに味方している。成長著しいスタートアップが  WeWork に入居するように、事業成長に経理の要員体制が間に合わない会社がメリービズを使うケースもある。最近では、J-SOX(内部統制報告制度)対応など大規模ユーザならではのニーズも寄せられるようになり、メリービズでは機能整備や追加にも余念がない。

10年前の創業時に、いきなりバーチャル経理アシスタントを始められたか、というと、それは無理だったと思う。一つには、受け入れてくれるユーザ企業側のケイパビリティの課題。そこへ SaaS のカルチャーが浸透してきて、企業経営の核となるデータを外部委託することに、かなり抵抗感は無くなった。現在の我々の立ち位置は、経理業務の外部仮想化みたいなところ。これをバックオフィス業務全般の仮想化にまで広げていけないかと思っている。(工藤氏)

現在は、芙蓉総合リースの持分法適用会社のメリービズだが、無論、これは工藤氏が目指した最終的なイグジットの形ではない。昨年、経費精算ソリューションを開発するクラウドキャストが MTI の傘下に入ったときに、彼らはそこから IPO を目指すことをお伝えした。時代のニーズやトレンドに歩調を合わせる必要があり、B 向けにサービス浸透の時間を要するフィンテックスタートアップにとっては、大企業をタッグを組んでサービスを強化しながら時を待ち、タイミングを見計らって一気に波に乗る手法は良策なのかもしれない。

工藤氏は、メリービズがビジネスのインフラになることをミッションに掲げており、「この仕組みで社会的なインパクトをもたらすことができた」と確信を得るためにも IPO を目指したいと語った。また他方で、さまざまな理由で仕事に出られない人たちに、自宅にいながら専門知識を生かして十分な収入が得られる仕組みを創出できたことも意義深い。前年比75%のスピードで成長する需要に応えるべく、同社では今後、現在1,000人ほどいる在宅プロ人材の拡充をさらに強化する計画だ。