クラウドファンディング「Wadiz」が97億円調達しロッテグループ入りなど——韓国スタートアップシーン週間振り返り(11月8日~11月12日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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11月8日~11月12日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは18件で、資金総額は2,441億ウォン(約240億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • クラウドファンディング企業 Wadiz(와디즈)が1,000億ウォン(約97億円)を資金調達。ロッテから800億ウォン(約78億円)を受け入れ、ロッテグループとともにスタートアップ、中小企業のための総合ファンディングプラットフォームに生まれ変わる計画。Wadiz がこれまでにクラウドファンディングを仲介した資金総額は6,000億ウォン(約580億円)を突破した。現在、会員数は400万人。調達した資金はスタートアップ、中小企業スケールアップのための企業融資、直接投資に活用される予定。
  • ファッションプラットフォーム「Brandi(브랜디)」が310億ウォン(約30億円)を資金調達。今年に入って3回目の資金調達。累積調達金額は1,060億ウォン(約100億円)に達した。
  • Crowdworks(크라우드웍스)が200億ウォン(約19億円)規模のプレ IPO 資金調達。 AI 技術の高度化に必要なデータを収集・加工するプラットフォーム。現在、会員数は30万人。
  • 脳疾患 AI ソリューション「Neurophet(뉴로핏)」が190億ウォン(約18億円)を資金調達。調達した資金で、認知症診断標準化技術グローバル臨床試験基盤を磨き、グローバル企業とのパートナーシップを拡大する計画。
  • AI コンタクトセンター運営の Posicube(포지큐브)が110億ウォン(約11億円)を資金調達。保険会社など韓国国内主要金融業界と政府機関に AI コンタクトセンターを提供。
  • ファッション AI ソリューション企業 Omnious(옴니어스)が100億ウォン(約9.7億円)を資金調達。商品画像を分析してショッピングモールの検索効率を改善、画像検索とレコメンドエンジンで、パーソナライズされたショッピング体験を提供。調達した資金で、サービスの高度化と人材採用を計画。
  • ジュエリーテック Bejewel(비주얼)が90億ウォン(約8.7億円)を資金調達。海外事業を拡大し、前年比5倍に達する取引額達成、ジュエリー専門のオフラインストアオープン、事業領域拡張を目指す。

トレンド分析

Sequoia Capital が伝統的なファンドの仕組みを捨てた理由

Sequoia Capital Headquarters
Image credit: Google Street View

世界的ベンチャーキャピタルの Sequoia Capital は先週、が大々的な構造改編を発表した。ファンド寿命が10年ほどの伝統的な VC ファンドサイクルから脱皮し、オープンエンドの形で新しい Sequoia ファンドを作るというものだ。ファンドの償還期限に合わせて収益確定する伝統方式の代わりに、イノベーション企業が上場した後にも共に進める新しい方法を見つけたのだ。

Sequoia は、運用資産残高80億米ドル以上を誇るの AUM を運用するグローバル最大 VC の一つだ。Apple、Google、YouTubeなどに投資した VC で、国内には MarketKurly(마켓컬리)、Musinsa(무신사)、Toss(토스)などユニコーンに投資を進めたことがある。このような影響力を持つ組織がファンド構造を変えると発表したことで、世界市場全体に大きな反響を呼んでいる。

Sequoia Capital がこのような決定を下すようになった背景は何だろうか。Sequoia Capital パートナーの Roelof Botha 氏は、現在の VC モデルが時代遅れであると考えていると述べている。伝統的なファンド構造ではファンド償還期限のため、その後に創出される収益を確保できない立場に置かれることになる。これは、現在の投資環境を反映していないという説明だ。1970年代に定められたファンドサイクルにまだ依存するのは時代錯誤的な考えだ。

例えば、2011年に Sequoia が投資した Square は、2015年上場当時の時価総額が29億米ドルだった。 5年後には860億米ドル、現在の価値は1,170億米ドルを超えている。もし Sequoia が今でも持分を持っていたならば、膨大な収益を確保できただろう。しかし、伝統的な VC ファンド構造では不可能だ。このため、償還期限前に企業価値を最大化することで〝副作用〟も生じた。

韓国国内でも最近スタートアップの時価総額が途方もなく上昇し、初期投資会社が償還に合わせて持分を売却する代わりに、特別に現物に持分を受け取る事例も出てきた。時価総額10兆ウォンが確認された、仮想通貨取引所を運営する Dunamu(두나무)の話だ。

最高の創業者は世界に持続的な影響を与えたいと思っており、彼らの野望は10年という期間に限定されないという考えで、Sequoia は長期的な目で企業に投資する方法をファンド改編の方法で見つけたのだ。

また、Sequoia は Andreessen Horowitz(a16z)、General Catalyst などグローバルトップ VC のように米国証券取引委員会(SEC)に投資アドバイザーとして登録している。これにより、多様な資金を調達、ポートフォリオを支援できる柔軟性を拡張し、仮想通貨など新興資産クラスへの投資をさらに増やすという計画だ。

Sequoia は、新しいファンドの下で現在のような閉鎖型ファンド(クローズドエンド)ファンドも運用し、シード、ベンチャー、成長企業にも投資する予定だ。新しいファンドはアメリカとヨーロッパにのみ適用され、インドや中国市場での適用はまだ明確に明らかにされていない。

Sequoia のような新しい変化は、すべての VC が試せることではない。 Sequoia のポートフォリオは大成功を収めたところが多いが、ほとんどの VC が経験できる成功ではないからだ。しかし、古いルールを脱皮し、ベンチャーキャピタル市場の進化をリードしているという点で、Sequoia の歩みは注目に値する。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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