「NFTは価値あるものを拡張する技術」——エンタメ業界をDXするGaudiyに聞いたNFTの今と未来

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本稿は起業家や投資家にトレンドを聞くオンラインイベントTokyo  Meetupの公開収録から。来年1月19日に開催するBRIDGE Tokyoは現在限定の無料チケットを配布中

今年のスタートアップシーンでホットなトレンドの一つである「NFT(非代替トークン)」。これまで価値を可視化して載せることが難しかったバーチャルなものにも、リアルと同じような希少性を生み出すことが可能になりました。これを私たちの日常に生かせるかで NFT の将来の可能性は大きく変わります。

投資家と起業家を招いて語る「Tokyo Meetup INTRO」では、新技術の社会実装に取り組むスタートアップとして、NFT をはじめブロックチェーンでエンターテイメント業界を DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む Gaudiy の石川裕也さんと、同社顧問を務める慶應義塾大学教授で経済学者の坂井豊貴さんに話を伺いました。

NFT の現在地、社会実装の事例、今後の課題など、誰もが気になる NFT のアレコレをお話し頂きましいた。聞き手は、2020年11月、Gaudiy のシリーズ A ラウンドに3億円を単独出資した STRIVE から四方智之さんにお願いました。夢や幻ではない、現実の NFT が作り出す世界を読者のみなさんと一緒に探訪したいと思います。

果たして、NFT は一時のブームなのか?

NFT はその時の需要と供給のバランスで価値が変動します。一時は数億円といった高値で取引されていた NFT もありましたが、徐々にその値を下げつつあります。これは、新技術が浸透する際に避けることができないハイプサイクルの一種との見方もありますが、石川さんは NFT が普及してきたことの裏返しと見ているようです。

NFT 化すること自体は難しいことではないし、NFT マーケットプレイスが整備され供給量が増えたりして、NFT の単価が一時的な水準より下がっているのは当然の動き。ただし、NFT には所有権がついているので、(所有権がついていない)デジタルコンテンツより下がることはないだろう。(石川さん)

また、坂井さんは、NFT というものを特別視し過ぎると、事態を見誤りかねないと警鐘を鳴らします。

NFT という括り方が適切でないかもしれない。リアルの世界で、種々雑多なものを「物理的なアイテム」という括り方をしないのと同じ。何かしら価値があるものに NFT を適用すると、そういう価値がもてるようになるという考え方が正しいと思う。(坂井さん)

例えば、(ツイッター創業者の)Jack Dorsey 氏が最初に書き込んだツイートが NFT 化されて3億円の価値がついたという話があります。ツイッターは言わばデジタル万葉集なので、その最初のページの原本が3億円と言われたら、この金額にも合点がいくかもしれません。つまり、うまく文脈をつけることが、高い価値をつける上で重要になると坂井さんは言います。

NFT だからできる社会実装

Gaudiy が解決したいエンタメ業界の課題
Image credit: Gaudiy

バーチャルの世界だけで完結するのでなく、リアルの世界や日常生活にも影響を及ぼすのが NFT の面白い部分です。絵画、映像、音声、デジタルアイテムなどに NFT が導入されるのは一般的になっていますが、ユニークな利用例を石川さんに教えてもらいましょう。

ちなみに、Gaudiy では、この10月、「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」で、オンライン閲覧権だけでなく後々に特典がもらえる NFT チケット、NFTサイン会、NFT を使ったアイドル応援投票、ファン活動を個人に結びつける TIF ID といった機能を提供されました

自分達が直接関わっているエンタメ領域は、ブロックチェーンも NFT も底上げすることに貢献できたのではないか、と思っている。実用性がわかりやすい分野だからだ。

そのほか、ベトナムの「Axie Infinity(NFT ゲーム)」では、ゲームで遊ぶことで稼ぐ(Play-to-Earn)モデルで、ゲームすることで借金を返したり、家を建てたりする人が出てきた。エンタメで生活できたり、消費ではなく資産になり価値になっていくのはわかりやすい実用性だ。新興国ではコロナで生活できなかった人々がゲームで生計を立てる人が現れ始めた。

この他にも、NFTfi のような NFT を担保にして仮想通貨が借りられる、レンディングプロトコルも出てきました。リアルの世界でも、運転免許証を ID にしてお金が借りられるのは、発行母体がしっかりしているからですが、NFT が免許証と同じような役割を果たすことで、NFT を担保にして、ローンを借りられるというのは非常に面白い事例です。

坂井さんはファッションを上げてくれました。

特にハイブランドがメタバースで洋服を NFT で出す、というユースケースは非常に面白い。見栄を張る行為、つまり「顕示的消費」がバーチャルの世界でもできるようになるからだ。我々はリアルで人に会った時、その人が身につけたいろんなものを見ながら、その人のことを判断している。

これまでバーチャルの世界ではそれができなかったが、ファッションの NFT でそれが可能になる。価値あるものを身につけているということは、それがその人の素性を示す一つのシグナリングになるからだ。NFT では本物と偽物の見分けもつきやすいので、ハイブランドのファッションには非常に向いている。(坂井さん)

NFT に落とし穴は無いか?

Gaudiy が NFT ベースで構築した「TOKYO IDOL FESTIVAL」のコミュニティ
Image credit: Gaudiy

ここまでメリットをいくつか伺ってきましたが、デメリットは無いでしょうか? 坂井さんは、確かに問題はあるものの、そういった問題は NFT だから起きるわけではなく、リアルの世界でも起きているので、NFT だからネガティブなことが増えたということは無いと言います。この意見には石川さんも同調しました。

リアルの世界よりも、NFT の方が問題は起こりにくい。デジタル証明が付与されるからだ。虚偽されたらどうなるか、というよりは、結果的に虚偽されなくなっていく。また、NFT は、秘密鍵の管理の問題、仮想通貨を使う UX、ガス代(ネットワーク手数料)が高い、など、他のものに劣っている点もあるが、すでに改善策が見えているので解決できる。

「NFT だから・・・」という理由で思考停止になっている人が多いように思う。NFT はすでに価値あるものを拡張する技術であって、NFT そのものに価値は無い。NFT を主語にするのではなく、価値あるものを作って、そこに NFT を活用しようとしなければいけない。(石川さん)

石川さんは、インターネットの黎明期と同じで、NFT ユーザが指数関数的に普及していくと見ています。それに向けて、より実用価値のあるユースケースをさまざまなプレーヤーと組んで世の中に出していきたいとのことでした。また、NFT の普及には、技術より社会的認知や行政の認知が課題になるため、こうした啓蒙活動にも注力していかれるようです。

セッションではそれ以外にも石川さん、坂井さん、四方さんと一緒に NFT に関する話題を提供していますので、ご興味ある方は今日、17時から配信開始するオンラインイベントTokyo Meetupをチェックしてみてください。

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