ティーン向け金融教育で切り開く、新フィンテック市場/GB Tech Trend

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1,500万ドルの調達を発表した「Goalsetter」(Image Credit:Goalsetter)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

FaaS – Fintech as a Service – の流行と共に、金融系スタートアップが勢いよく成長しています。なかでも子供向けデビットカードサービスは大手が出揃い始めました。例えば「Greenlight」は23億ドルの企業価値がついたユニコーンのひとつになっています。

そんな中、金融教育の付加価値をつけて差別化を図ろうというスタートアップが登場しました。先日、1,500万ドルの資金調達を発表した「Goalsetter」は、同社発行のデビットカードを使って親からの仕送りを便利にする、ティーン向け金融サービスです。

エンドユーザーであるティーンは、金融教育向けクイズを答えていくことでインセンティブとして親からボーナス金が届くというユニークなアプローチを採用しています。Goalsetterは金融教育のアプローチから市場ポジションを築こうとしており、こうした親子ユーザーの取り込みに躍起になっています。

今回の調達に当たり、金融機関向けの情報処理サービスを提供する「Fiserv」を出資者に迎えることで、銀行などの従来のフィンテック・プレイヤーとの提携を目指す動きを見せています。Greenlightや、そのほかネオバンク系サービスに市場を押され始めている既存金融機関にGoalsetterの仕組みを提供し、親子で口座を作るモチベーションを高めているのです。

Goalsetterが取り組む金融教育、特に「Financial Wellness」の需要は徐々に市場で大きくなっています。というのも米国ではお金のやりくりを上手くできない人が多く、社会問題となっているからです。一例を挙げます。

「FRB(Federal Reserve Board)」によると、予想外の400ドル出費が発生した場合、社会人の44%がすぐに支払いができないか、その費用を賄うためにお金を借りる・何かを売却する必要があると調査結果を公表しています。多くの米国人にとってお金の健全化は急務なのです。

そこで登場したのが「Brightside」です。同社はモバイルアプリおよび専属の金融アシスタントを用いて、企業の従業員向けに財政管理のサービスを提供しています。独自のファイナンスナレッジ・最新の行動経済学・お金を節約するためのキュレート金融商品オプションを揃え、従業員のどんなお金の要望にも応えられるようにしています。著名VCである、Andreessen Horowitzのリードで3,510万ドルを調達しています。

Brightsideが特徴的なのは「お金の元栓」からいじってしまうことで、経済をよりよくできる可能性を追究している点です。たとえば従業員と一緒に借金の利息支払いを給与から直接貸金業者に送金し、返済の「リスク」を取り除くことができれば、市場全般における支払い不履行のリスクが減り、比例して利息額が低くなっていく流れが起きるかもしれません。

このように従業員のお金の管理の教育(節税などのTips含む)から、金融商品へのアクセスまでを幅広く提供できれば、多くの人のお金の流れを最適化できます。

GoalsetterもBrightside同様のB2B2Cの戦略が伺えます。子供の扱うお金を、親が仕送る段階から介入することで、正しいお金の流れを作り出そうとしています。将来的に借金やそれに伴う利息払いに苦しまないようにするリテラシー向上を切り口に、様々な金融商品への拡大を目指すことが予想されます。

ティーン市場から新たなお金の流れを生み出そうとしているのがGoalssetterなのです。

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