創業4年半「カルチャーに投資」したatama plus、その組織(チーム)の結果は

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800坪ワンフロアとなった「atama park」

ニュースサマリ:学習塾向けAI教材「atama+(アタマプラス)」を展開するatama plusは12月、事業拡大を見据えたオフィス移転を公表している。新設されたオフィス「atama park」はコロナとの共存生活が予想される中、オフィスとリモートワークを組み合わせた働き方を検討した上で、多様な価値観を持った社員が自由にコミュニケーションできるように800坪のワンフロアで設計されている。同社はこれに先立つ昨年7月にシリーズBラウンドでの51億円の増資を公表しており、増資額は2017年4月の創業から累計で82億円となる。

話題のポイント:昨年7月に大型かつ、世界戦に向けた増資を発表したのがatama plusです。ティーチングとコーチングを分割することで劇的な学習効果を生み出すことに成功したAI教材「atama+」を武器に快進撃を続け、国内主要な駿台グループやZ会グループなど2500以上の教室で利用されているほか、オンライン模試の提供や、立命館と共同でatama+の学習データを入試に繋げる研究会も発足させるなど、これまで当たり前だった学習の根幹を変えようとしています。

この爆発力を支えるのが組織(チーム)なのですが、個人的に思い出深い記事があります。

創業2年目を迎えたばかりの彼らは15億円の大型増資を発表したのですが、使途としてカルチャーに全振りする、という主旨の話を投資家そして経営陣共にしていたのを記憶しています。カルチャー、つまりは人が自律的に集まりそこで仕事をし、もう少し広い視点で言えば人生を楽しむ、そういう基盤の一部を作るという話です。なかなか創業数年のスタートアップに語れる話題ではありませんし、そもそもカルチャーを作ると言ってできるものではありません。

2019年当時のオフィスに掲げられたホワイトボード。誰が誰だかすぐわかるようにしている(撮影:筆者)

では、投資金をカルチャーに突っ込むと言った同社はそれから2年経過してどうなったのでしょうか?現在、彼らは250名体制に向けて組織拡大中なのですが、これまで参加して現在も在籍している人の数は170名、何よりも驚いたのは辞めた人の数が4年半で15名ほど、という結果です。いくつかの質問に答えてもらったのでその内容を共有します(太字の質問はすべて筆者、回答はatama plus広報)。

ーー現在の組織について教えてください

現在の全社員は170名(派遣社員・業務委託社員含む)で、正社員だけだと155名になっています。

ーー増えましたね。どういうバックグラウンドの方々が多いですか

上場企業出身で70%、これにコンサル出身の方を含めると85%になります。ビジネス系の職種は大手企業(商社、金融等)で、コンサル出身のメンバーが多く、またプロダクト系の職種(エンジニア・デザイナー・プロダクトオーナー)やコーポレート系の職種だと大手IT出身のメンバーが多くなります。

ーーペルソナのメンバーは増えましたか

はい、ペルソナは藤井真一くん(高校生)、藤井純二くん(中学生)、保護者、塾の教室長、アルバイト、塾本部の社員の講師に加えて、学力層の異なる生徒さんなど新しい仲間も増えています。

atama plusのメンバーには仮想ユーザーも含まれる

ーー採用の経路はリファラルが初期多かったと思うのですが、現在はどういう経路でみなさん集まってますか

リファラル(社内でnakama+と呼んでいます)は引き続き多いですが、他にも媒体応募、スカウト、エージェントなど経路は広がっていますね。採用としては、経路にこだわらず幅広くatama plusのことを知ってもらい、応募につなげることに取り組んでいます。

ーーオンラインイベントで数百人が集まったとお話されてましたが、どういう媒体でどのようなコミュニケーションをしていますか?またどのあたりが一番効果ありましたか

2021年7月、資金調達の発表にあわせて連続イベント(計10本)を実施しました。atama plusのことは聞いたことはあるけど社内の雰囲気がよくわからないな、という声をよく聞いていただたので、いろんな切り口で社内の雰囲気を伝えられるようなコンテンツにしました。転職意欲は問わずに多くの方にatama plusのことを知っていただきたいなと思ったので、媒体は絞らずに広くコミュニケーションをとることに取り組みました(社員紹介、SNS広告、エージェントからの紹介、HPなど)。 会社紹介っぽくならないように、できるだけ気軽に参加してもらえるようなメッセージを意識して発信しています。テーマによりますが、各回100~300名に参加いただきました。

ーー参加者の反応は

そうですね、「登壇者同士のやりとりから、社内の雰囲気やカルチャーが感じられた」とか「チームや職種をまたいで全員でプロダクトづくりに取り組んでいる様子が伝わった」といった感想を多くいただいて、これまでもカルチャーや社内の様子は意識して発信していたつもりではありましたが、まだまだ足りなかったんだなと思いました。参加からすでに採用につながった方もいますし、参加者が知り合いの方を紹介してくれるということもありました。複数回参加してくれる方も多くいました。

改めて、いろんな切り口から自社のことを知ってもらうために、社内の様子を発信し続けることが、atama plusのファンを増やすこと、そして中長期での採用につながると思いました。イベントは今後も継続していく予定です。

ーーカルチャーづくりについては、スター施策などいろんな制度を作っていましたよね。コロナ禍ということもありますが、どのような方法でみなさんの意識を統一していますか

はい、atama plusでは入社1〜3カ月目の社員を「スター」と呼んでいます。もともとは、新メンバーとごはんにいくと食事代を補助するよということをしていたら、マリオでいう「スター」みたい(無敵)だねということから呼ばれ始めて(笑)そこから浸透、現在は正式にスターとなっています。スターをみんなでウェルカムする、スターと既存社員とのコミュニケーションを促進するためのさまざまな取り組みを実施しています。

ーー具体的にはどんなことをしていますか

オフィスでの施策であればスターを紹介する、スターシートやスターの椅子カバーを作ったりしていたのですが、コロナ禍では対面が難しかったので、試行錯誤しながら新しい取り組みが生まれました。例えば「スタートーク」という施策では、スター期間に、既存社員と1on2(30分)を実施、100名くらいと話すということをしています。試行錯誤を重ねて、現在は1〜2カ月目は既存メンバーがスターを指名し、3カ月目はスターが話してみたい既存メンバーを指名するというスタイルにしています。

あと「Love fun channel」という、お昼時にオンラインラジオ形式で、スターを紹介するということをしています。スターの、これまでの経歴や人となりを知れる取り組みとして好評で毎回50%程度の高視聴率となっています。

ーー最後、失敗について。少ないとはいっても離脱する方はいたわけです。なぜ失敗したのか、そこからの学びや、なぜ再発しないのか、そのあたりの工夫について教えてください

はい、退職者は創業から4年半で15名となっています。理由としては、atama plusのミッションとご本人のやりたいことがフィットしない/しなくなったというものが多いです。atama plusとしては、それぞれの人生においてやりたいことを実現するのが大事だと思っているので、卒業すること自体はネガティブには捉えておらず、それぞれの人生を応援したいなと思っています。

一方で、失敗もあります。創業初期のタイミングで、入社直後にやりたいことが合っていないとなり、退職に至ってしまったことがありました。当時はまだ選考において何を大事にするかが明確にできていなかったこともあり、すりあわせが不十分だったと反省しました。それからは、選考においてatama plusのミッションとご本人のやりたいことがフィットするかというすりあわせを大事にするようになりました。

面接はすりあわせの場だとおいています。一方的に見極めたり口説いたりするのではなく、お互いにオープンに価値観を共有し、フィットするかをすりあわせる。どんなに能力が高い方であっても、やりたいことがすり合わない方は採用しない、と決めています。それ以降は入社前のすりあわせ不足が要因の退職はほぼないです。

ーー具体的な体験談、個人的にも参考になりました。ありがとうございました。

ということで、いかがだったでしょうか。強いプロダクトがあってもカルチャーがなければ自律的に組織が強くなるというイメージは湧きません。採用合戦が激しくなる中、調達金額が大きくなり、ある投資家は投資金が採用費と広告に消えると半ば嘆くように話していました。逆に言えばここを抑えることは激しい競争で一歩リードする一手になるはずです。

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