Web3系とCVCでファンドが発表、Axie Infinityのサイドチェーン「Ronin」が6.2億米ドルを盗まれる被害など【Canvas 3月号(3月26日〜4月1日)】

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Web3系とCVCでファンドが発表、Axie Infinityのサイドチェーン「Ronin」が6.2億米ドルを盗まれる被害など

今週の話題(3月26日〜4月1日):130億円規模のWeb3特化「gumi Cryptos Capital(gCC)」2号ファンド、初号はOpenSeaなどへのシード投資に成功三菱地所、長期スパンの協創を目指すCVCファンド「BRICKS FUND TOKYO」を組成——5年で100億円程度出資Axie Infinityのサイドチェーンネットワーク「Ronin」がハッキング被害、計6.2億米ドル相当の資金が盗まれる

gCC初号ファンドのポートフォリオ(一部)

今週も大型ファンドの発表がありました。一つは gumi Cryptos Capital(gCC)。もう一つは三菱地所の CVC「BRICKS FUND TOKYO」です。前者の gCC ですが、法制度の制約から日本にルーツを持つ Web3 特化ファンドは決して多くない中、初号ファンドは2018年に投資を開始するなど、この分野ではアーリーであるがゆえに、Web3 のプラットフォーマーに投資できたことが功を奏し、25倍のパフォーマンスを弾き出しました。2号ファンドの規模は初号の5〜6倍規模となり、さらなる成長が期待されます。

BRICKS FUND TOKYO の運営メンバー(一部)
Image credit: Mitsubishi Estate

一方、BRICKS FUND TOKYO は CVC ファンドとしては後発な気はしますが、三菱地所はかなり以前からスタートアップに投資したり関わりを持ってきたりしていましたから、オープンイノベーションのフェーズが変わった、または、フェーズを変えようとしている先駆的存在と見ることもできます。電通ベンチャーズのディールソースで成果を出してきたプライムパートナーズの3人が関わっていることから、アメリカで高い評価を得たスタートアップの日本市場エントリを、かなりの数で支援するのではないでしょうか。

「Axie Infinity」
Image credit: Sky Mavis

Axie Infinity の「RONIN」ネットワークのハッキングは、Web3 ビジネス全盛前夜のタイミングを考えるとショッキングな出来事でした。ただ、ブロックチェーンを使っている以上、仮想通貨の流れを完全に追えるので、証拠が隠滅できない点については法定通貨よりも安心してもいいかもしれません。国境を越えた取引に対して、各国政府の法執行機関がどのような法律と根拠で処罰を実行できるのか。こうした犯罪から仮想通貨ホルダーの権益を守る仕組みも、Web3 スタートアップから出てくることが期待されます。

今週の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

小型 SAR 衛生開発の Synspective がシリーズ B ラウンドでデット含め119億円を調達した。写真は2022年3月1日、ニュージーランド・マヒア半島の Onenui Station 射場から打ち上げられた小型 SAR 衛星2号機。 Image credit: Synspective

再利用可能ロケットと複合材製容器開発のSPACE WALKER、個人投資家らから5.5億円をシード調達——累計調達額は12億円超に(4月1日)

  • 再利用可能なサブオービタルスペースプレーン(弾道軌道での飛行船、有翼式再使用型ロケット)の設計・開発、運航サービスを開発する SPACE WALKER は、シードラウンドで5.5億円を調達したと明らかにした。出資者は主に個人投資家とされており、具体的な名前は明らかにされていない。今回ラウンドを受けて、これまでの累計調達額は12.16億円に達した。

動画によるスタッフ教育SaaS「ClipLine」、16.5億円を調達しシリーズEをクローズ——累計調達額は31.5億円に(3月31日)

  • 動画を使ったクラウド OJT システム「ClipLine」を展開する ClipLine は31日、シリーズ E ラウンドのエクステンションラウンドを実施し、合計16.5億円を調達してシリーズ E ラウンドをクローズしたことを明らかにした。シリーズ E ラウンドのクローズを受け、累積調達額は31.5億円に達した。

表情をリアルタイムスキャン、顔を置き換えられる「xpression camera」が正式ローンチ——1.5億円の調達も(3月31日)

  • EmbodyMe は昨年、新たな資金調達を実施していたことを明らかにした。ラウンドは不明だが、この1.5億円の調達には、FreakOut Shinsei Fund、DEEPCORE、キャナルベンチャーズ、山口キャピタルが参加した。EmbodyMe の累計調達額は明らかになっている範囲で5億円程度となった。

イチゴ完全自動栽培のHarvestX、1.5億円を調達——ANRI、東大IPC、DEEPCOREから(3月31日)

  • イチゴをはじめ果菜類の受粉や収穫を自動化する完全自動栽培ロボットを開発する HarvestX は、1億5,000万円を資金調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ANRI、東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)、DEEPCORE。ラウンドステージは不明。これは HarvestX にとって、2021年1月に実施したシードラウンドに続くものだ。ANRI と東大 IPC は今回、前回ラウンドに続くフォローオンでの参加。

金融トレーニング「ABCash」運営、シリーズCラウンドで12億円を調達(3月30日)

  • 金融に関するトレーニングサービス「ABCash」や福利厚生サービス「ABCare」を提供する ABCash Technologies(エービーキャッシュテクノロジーズ)は、シリーズ C ラウンドで約12億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、三菱 UFJ イノベーション・パートナーズ、SBI インベストメント、Aflac Ventures、SV-FINTECH Fund、Hamagin DG Innovation Fund、マネックスグループ、FFG ベンチャービジネスパートナーズ。

コスメD2Cと美容メディアのDINETTE、シリーズBで8億円を調達——大和企業投資、セレス、MTG Venturesから(3月30日)

  • コスメ D2C ブランドと美容メディアを展開する DINETTE は、シリーズ B ラウンドで8億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、大和企業投資、セレス(東証:3696)、MTG Ventures。調達額には、みずほ銀行などからのデットが含まれる。同社にとっては、2020年5月に実施したシリーズ A ラウンドに続くものだ。セレスと MTG Ventures は前回ラウンドに続く参加。累積調達額は明らかになっている範囲で、13億円前後に達したと推定される。

小型SAR衛星を開発するSynspective、デット含め119億円をシリーズB調達——累計調達額は228億円に(3月29日)

  • 小型 SAR(合成開口レーダー)衛星を開発する Synspective は、シリーズ B ラウンドで119億円を資金調達したと発表した。これは同社にとって、2019年7月に実施したシリーズ A ラウンドに続くものだ。累積調達金額は228億円に達した。調達金額には、商工組合中央金庫と三菱 UFJ 銀行からの融資を含んでいる。
  • 今回ラウンドに参加したのは、損害保険ジャパン、森トラスト、野村スパークス・インベストメント、Pavilion Capital、スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー、ジャフコグループ(東証:8595)、三井住友トラスト・インベストメント、SBI グループ、Nikon-SBI Innovation Fund、新生企業投資グループ、日本郵政キャピタル、エースタート、環境エネルギー投資、Abies Ventures、みずほキャピタル。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

4月4日に IPO、約1,260億円の調達を目指す Goto。
Image credit: Goto Group

インドのメタバース志向・未病プラットホーム「GOQii」、シリーズC延長でAnimocaから1,000万米ドルを調達(3月30日)

  • インドを拠点とするテクノロジーを使ったヘルスケアプラットフォーム「GOQii」は、シリーズ C のエクステンションラウンドで、香港を拠点とするブロックチェーンゲームユニコーン Animoca Brands から1,000万米ドルを調達した。また、GOQii は、Animoca Brands と提携し、新しい仮想トークンプログラム「Token」で、健康に特化したメタバース・エコシステムを開発している。

Axie Infinityのサイドチェーンネットワーク「Ronin」がハッキング被害、計6.2億米ドル相当の資金が盗まれる(3月30日)

  • Sky Mavis は、同社のゲーム「Axie Infinity」ゲームを支える Ronin Network がハッキングされ、イーサリアム17万3,600ETH(5億9,460万米ドル相当)と米ドル2,550万米ドル、合計6億2,000万米ドルが盗まれたと報告した。ブロックチェーンゲーム Axie Infinity のメーカーである Sky Mavis が資金を回収できないとすれば、それは同社の財政全体に大きな打撃を与え、ブロックチェーンベースのセキュリティにとって黒星となる。

台湾の美容テック・ユニコーンPerfect Corp.(玩美移動)、SPAC経由でNASDAQ上場へ(3月29日)

  • 美容とファッション業界に AR と AI ソリューションを提供するソフトウェア会社 Perfect Corp.(玩美移動)は、特別目的買収会社(SPAC)の Provident Acquisition Corp. との合併を発表する。Perfect Corp. は企業価値を10億2,000万米ドルに設定する。この合併により、Perfect Corp. は最大で3億3,500万米ドルを調達する見込みだ。

Headline Asia、台湾のタクシー配車アプリ「台湾大車隊55688」に500万米ドルを出資——スーパーアプリ化を加速(3月29日)

  • 台湾の上場企業である Taiwan Taxi(台湾大車隊)は、ベンチャーキャピタルの Headline Asia が、台湾最大の配車プラットフォーム「55688」の運営者として知られる Taiwan Taxi の子会社 Taiwan Intelligent Life(台湾智慧生活網)に500万米ドルを投資したと発表した。Headline Asia は、55688アプリのユーザ650万人に対して、顧客サービスを拡大するための支援を行う予定だ。

台湾AppWorks(之初創投)、アクセラレータとWeb3の新部門を設立——4号ファンドを3.6億米ドル規模で組成へ(3月29日)

  • AppWorks(之初創投)は、一連の制度的・組織的進展と4号ファンドの資金調達計画を発表した。同社は、AppWorks Accelerator(之初創投加速器)と Web3 への投資をビジネス部門として制度強化、AppWorks Beacon Funds 戦略を正式化、戦略と日々の運営を監督する主要なチームメンバーを昇格させた。

自動運転スタートアップWeRide(文遠知行)が4億米ドルを調達など——中国スタートアップシーン週間振り返り(3月27日)

  • 自動運転スタートアップの WeRide(文遠知行)が、国有自動車メーカーの GAC(広州汽車集団)やドイツの自動車部品サプライヤー Bosch など多様な投資家グループから4億米ドルの資金調達を完了したと、中国メディアの LatePost(晩点)が23日に関係者の話を引用して報じた。

「PUBG MOBILE」開発元のKrafton、ブロックチェーン「Solana」のDeFiインキュベーションスタジオと提携(3月26日)

  • 「PlayerUnknown’s Battlegrounds(PUBG)」を開発した韓国のゲーム開発会社 Krafton は、ブロックチェーン「Solana」上で分散型金融(DeFi)プロジェクトをインキュベートしローンチするスタジオ「Solana Labs」との提携を発表した。両社は今後、ブロックチェーンや NFT を活用したゲームやサービスの開発に向けて、長期的な提携関係を構築していく予定。また、Krafton と Solana Labs は、仮想通貨周辺の投資機会についても共同で取り組む予定だ。

韓国のP2P送金アプリ「Toss(토스)」、東南アジアでのスーパーアプリ戦略本格化に向け最大10億米ドルを調達へ(3月26日)

  • モバイル金融アプリ「Toss(토스)」を運営する韓国の Viva Republica(비바 리퍼블리카)は、東南アジアで Grab や GoTo に対抗すべく、今年第2四半期に最大10億米ドルを調達する見込みだ。Toss は2019年にベトナムに進出、送金とデビットカードのサービスを提供している。Viva Republica は昨年10月、配車サービスアプリ「Tada(타다)」を運営するスタートアップ VCNC を買収(それ以前、SoCar が VCNC を買収)、モビリティ事業に進出した。2021年には、Toss 銀行、Toss 証券をそれぞれ設立している。

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