創業者が赤裸々に語った「Cansell」停止の裏側、アフリカでドライバー向け新金融サービスが続々【Canvas 3月号(3月12日〜3月18日)】

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創業者が赤裸々に語った「Cansell」停止の裏側、アフリカでドライバー向け新金融サービスが続々

今週の話題(3月12日〜3月18日):宿泊権利売買「Cansell」がサービスをシャットダウン、会社は破産手続へ——代表・山下氏に聞いた、閉じる決意の理由アフリカでタクシードライバー向け中古車のBNPLサービス「HAKKI」運営、デット含め2.2億円をシリーズA調達アフリカのモビリティギグワーカーが車を買えるようにするMoove、日本のMUIPらから1億米ドル超を調達

Cansell 創業者の山下恭平氏
Image credit: Cansell

失敗を許容しない伝統的な日本文化の影響からか、スタートアップ界隈でも自らの失敗についての話を共有してくれる人はあまり多くありませんが、Cansell の山下氏が会社を閉じるまでに至った経緯を赤裸々に語ってくれました。起業家の中には、自分の専門領域や好きなことを事業で追求する人と、市場トレンドのスイートスポットに事業を合わせに行く人の、大きく2つに大別されると思います。人生は長くないですから、ピボットや事業のスクラップ&ビルドは、日本でももっと奨励されてもいいように思います。

Image credit: Hakki

一方、偶然のタイミングの一致ではありますが、アフリカでタクシーや配車サービスのドライバー向けに、毎日の〝上がり〟からその人の金融的信用度を計算し、マイカーを購入できるサービスを提供する2つのスタートアップが資金調達しました。一つは日本のスタートアップの資金調達、もう一つはサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)で最大市場を持つナイジェリアを拠点としたスタートアップへの日本の金融コングロマリット系 VC からの出資でした。

Image credit: Moove

この毎日の〝上がり〟から金融サービスを受けられるシステムは、unbanked(銀行口座を持たない)人々が多い東南アジアでも受け入れられる余地があるはずで、筆者は以前、似たようなモデルを展開するインドネシアの駆け出しスタートアップのピッチをみたことがありますが、当たりそうなモデルが一度発表されたら、そのクローンが次々と現れそうなアジアでそれがあまり無いのは、アジアよりもアフリカの方がニーズが高かったということなのでしょう。クルマ以外にも、彼らの日常のいろんな分野へ応用が期待されます。

今週の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

家具のサブスク&二次流通のsubsclife、ソーシャルインテリアに社名を変更——JIC VGIなどから22億円の調達も(3月18日)

  • 家具のサブスクリプションサービス「subsclife(サブスクライフ)」などを運営する subsclife は、社名をソーシャルインテリアに変更したことを明らかにした。また、同社は直近のラウンドで、産業革新投資機構傘下の JIC VGI(JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ)のほか、既存株主であるサイバーエージェント・キャピタル(CAC)とみずほキャピタルから約22億円を調達したことも明らかにした。調達金額には、金融機関などからのデットファイナンスが含まれる。

美容クリニック特化SaaS「medicalforce」運営、1億円をプレシリーズA調達——ANRI、DNX Vらから(3月18日)

  • 美容クリニック特化 SaaS「medicalforce」を運営するメディカルフォースは、プレシリーズ A ラウンドで1億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ANRI、DNX Ventures、名前非開示の個人投資家2名。同社にとっては、2020年11月の創業直後に実施した ANRI からのシード調達(約3,000万円と推定)に続くものとなる。

Kyash、BlockなどからシリーズDラウンドで49億円を資金調達——累計調達額は128億円に(3月18日)

  • 東京を拠点とするスタートアップで、送金・決済システムを開発する Kyash(キャッシュ)は、シリーズ D ラウンドで49億円を調達したと発表した。同社にとっては、2020年3月のシリーズ C ラウンドに続くものだ。この調達を受けて、同社の累計調達額は約128億円に達した。
  • このラウンドに参加した投資家は、JP インベストメント、Block(アメリカ、NY証取:SQ、旧称:Square)、Greyhound Capital(イギリス)、Altos Ventures(アメリカ)、Goodwater Capital(アメリカ)、StepStone Group(アメリカ、旧称:Greenspring Associates)、Yitu Capital(香港)、SMBC 日興証券(日本)、三井住友海上キャピタル(日本)、AG キャピタル(日本)、ジャフコ グループ(日本)、SMBC ベンチャーキャピタル(日本、東証:8595)、W ventures(日本)。

ダークストア「Mesh」運営、2億円をシード調達——東京都区部で今夏サービス開始へ(3月16日)

  • 実店舗を持たず、オンデマンドデリバリにより商品を届けるダークストア「Mesh」を運営する Mesh は、シードラウンドで約2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドのリードインベスターは Coral Capital が務め、Delight Ventures、W Ventures、個人投資家として堀井翔太氏(スマートバンク 代表取締役)が参加した。

アフリカでタクシードライバー向け中古車のBNPLサービス「HAKKI」運営、デット含め2.2億円をシリーズA調達(3月15日)

  • ケニアにおけるタクシードライバー向け中古車ファイナンスサービス「HAKKI」を提供する HAKKI AFRICA は、シリーズ A ラウンドで2.2億円を調達したと発表した。調達額にはデットファイナンスが含まれる。また、複数の海外ローンファンドから合計8.4億円分のデット枠を確保したことも明らかにしている。

アフリカのモビリティギグワーカーが車を買えるようにするMoove、日本のMUIPらから1億米ドル超を調達(3月14日)

  • サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)の個人事業主に車両ファイナンスを提供する Moove は、シリーズ A2 ラウンドで1億500万米ドルを調達したと発表した。このラウンドは、Speedinvest(オーストリア)、Left Lane Capital(アラブ首長国連邦)、thelatest.ventures(アメリカ)がリードし、AfricInvest(チュニジア)、三菱 UFJ イノベーション・パートナーズ(日本、以下 MUIP と略す)、Latitude(ドイツ)、Kreos Capital(イギリス)らが参加した。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

東南アジアの自動車ECユニコーンCarsome、シンガポールの自動車関連サービスCarTimesを買収(3月18日)

  • マレーシアに本社を置く総合自動車Eコマースのユニコーン Carsome Group は、シンガポールの自動車ソリューション企業 CarTimes Automobile 株式の51%を取得した。この買収の詳細はまだ公表されていない。これは、Carsome が最近発表した iCar Asia の買収完了に続くものだ。

クロスチェーン投資分析ダッシュボード「Harvest」運営、Binance(幣安)らから1,800万米ドルをシード調達(3月18日)

  • 分散型金融(DeFi)スタートアップの Treehouse Finance は、名前非開示のフィンテック投資家がリードしたするシードラウンドで1,800万米ドルを調達した。Lightspeed Venture Partners、Binance(幣安)、MassMutual Ventures などの投資家も参加した。

自分の複数SNSのリンクを一括提示できる豪Linktree、1.1億米ドルを資金調達しユニコーンに(3月18日)

  • オーストラリアの Linktree は、Index Ventures と Coatue がリードし、AirTree Ventures、Insight Partners、Greenoaks Capital が参加した資金調達ラウンドで1億1,000万米ドルを調達した。この取引により、同社の評価額は13億米ドルに達し、オーストラリアで最も新しいユニコーンとなった。

香港のデジタル資産カストディアンHex Trust、Animoca Brandsらから8,800万米ドルを調達(3月17日)

  • デジタル資産のカストディサービスを提供する香港の Hex Trust は、Animoca BrandsLiberty City Ventures が共同リードしたシリーズ B ラウンドで8,800万米ドルを調達した。Bloomberg の報道によると、このラウンドで Hex Trust の時価総額は3億米ドルに押し上げられ、1年以内に10倍の数字になるという。このラウンドには、Ripple、Terra、Morgan Creek、Primavera Venture Partners、起業家の Adrian Cheng(鄭志剛)氏などの投資家も参加している。

HSBCが「The Sandbox」と提携しメタバース進出、仮想土地区画購入へ(3月17日)

  • HSBC は、Animoca Brands の子会社で分散型ゲームの仮想プラットフォーム「The Sandbox」と提携し、メタバース騒動に参加する最新の企業となった。約3兆米ドルの資産を持つ世界的な銀行も、The Sandbox 上の仮想土地区画を取得する予定だ。HSBC は、このメタバースへの進出は、スポーツ、e スポーツ、ゲーム愛好家の関心を引き、つながりを深めることを目的としていると述べている。

インドネシアのGoToは4月4日にIPO、約1,260億円の調達を目指す——当初予想額の半分、ウクライナ危機が影響か(3月16日)

  • インドネシアのテック大手 GoTo(Gojek と Tokopedia の合併企業体)は、インドネシア証券取引所(IDX)での IPO(新規株式公開)で少なくとも15兆2,000億インドネシアルピア(約1,260億円)の調達を目指している。同社は4月4日に上場し、全株式の4.35%に相当する520億株を、1株当たり316〜346インドネシアルピア(約2円60銭〜80銭)で売り出す予定だ。また、国内上場に続き、海外上場も予定されている。

Animoca Brands、カルダノDEX「WingRiders」に出資(3月15日)

  • 香港に拠点を置くブロックチェーンゲーミングのユニコーン Animoca Brands は、カルダノ(Cardano)ベースの分散型取引所(DEX)「WingRiders」に出資した。出資額は非開示。このラウンドには、Bitrue、Double Peak Capital、Spark Digital Capital、Matrixport などの投資家も参加している。

三菱UFJ銀、インドのスタートアップ向けに3億米ドルの「MUFG Ganesha Fund」設立へ(3月14日)

  • 三菱 UFJ 銀行は、インドのスタートアップへの投資のために3億米ドルを確保しようとしている。同行は、新たに設立する「MUFG Ganesha Fund」を通じて、インドのミドルステージからレイトステージの企業を支援し、投資先企業に対してより幅広い金融サービスを提供することを目指す。

シンガポールの不動産テックスタートアップPropertyGuru、18日にNY証取にSPAC上場へ(3月14日

  • PropertyGuru は、3月15日の臨時株主総会で経営統合に賛成が得られれば、上場が実現する予定だ。PropertyGuru は、3月17日前後に NASDAQ からの上場を取りやめる見通しだ。PropertyGuru は昨年、アメリカでの上場の意向を表明した。当時、この合意により PropertyGuru の企業価値は13億米ドル以上、株式価値は約18億米ドルとなった。

シンガポール政府、NFT取引から得られる所得に課税へ【各社報道】(3月14日)

  • シンガポールの財務大臣 Lawrence Wong 氏は11日、国会での Yip Hon Weng 議員に対する答弁で「NFT の性質と用途に基づいて税制上の取り扱いが決定される」と述べた。また、NFT の取引から所得を得る人、NFT を取引する人も含めて課税の対象となると付け加えた。

ロッテレンタル、近日上場カーシェアSoCarの株式13.9%を170億円で取得——韓国スタートアップシーン週間振り返り(3月13日)

  • モビリティプラットフォーム「Socar(쏘카)」が Lotte Rental から1,832億ウォン(170億円)の戦略的資金を調達した。Lotte Rental が Socar 株式の13.9%を取得。Socar の電気自動車、充電パーキング、自動運転など未来モビリティ事業エコシステムの構築を共同で推進する。

ByteDance(字節跳動)のライフスタイルアプリ「Lemon8」、日本で100万DL突破——中国スタートアップシーン週間振り返り(3月13日)

  • 「Xiaohongshu(小紅書)」と比較される ByteDance(字節跳動)のソーシャルライフスタイル共有アプリ「Lemon8」が、運営開始から2年で、日本で100万ダウンロードを達成したと、中国メディア「晩点」が報じた。TikTok を運営する同社は、今後、東南アジア市場への展開を計画しており、すでにタイでサービスを開始している。

ブロックチェーン国際送金のRipple、NFT特化2.5億米ドルファンドの初号出資先のクリエイター陣を公表(3月12日)

  • 世界的な決済・ブロックチェーンソリューションプロバイダ Ripple は、2億5,000万米ドルの「Creator Fund」を通じて、資金提供を受ける NFT プロジェクト運営クリエイタの第一陣の名前を発表した。

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