
本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
今週の注目テックトレンド
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ビッグテックによるWeb3領域への参入攻勢が強まりつつあります。
Meta傘下のInstagramは5月10日、試験的なNFT機能の導入を発表しました。具体的には「デジタルウォレットの接続」「デジタルコレクティブルの共有」「クリエイターとコレクターの両方に自動タグ付け」の3つの機能を展開するそうです。
これまでソーシャル上でのNFT利用用途は、プロフィール写真への実装以外あまり見当たりませんでした。Twitterはいち早く対応を発表しましたが、こちらもTwitter Blue(日本未上陸の有料サブスクリプション機能)登録を経由して、六角形のプロフィール写真を登録できる程度です。
そんな中、登場したのが今回のInstagramのNFT機能です。
本機能の先に見える新しい市場がデジタルファッションです。たとえばデジタルファッションスタジオ「The Fabricant」のような企業は、写真に映るモデルに奇抜なファッションアイテムを着せ、かつ該当アイテムをNFTとして購入する体験を確立しつつあります。デジタル空間だからこそできる表現(炎や氷など)を纏ったアイテムに興味を持ってもらうというプロセスを社会実験として進めてきました。
「メタバース」が人気になるにつれ、デジタルファッションを自分のアバターに纏わせたいとするニーズも高まっています。こうしたニーズを活かし、モデルの写真からNFTデジタルアイテムを購入、自撮り写真にアイテムを纏わせてシェアをしたり、アバターに着させるといった広いユースケースを狙うスタジオ企業が増えつつある印象です。
ちなみにThe Fabricantは先月に1,400万ドルの調達を実施し、デジタルファッション文脈の市場参入を強めています。
さて、今回のInstagramのニュースでは、NFTのデジタルファッションにおける楽しみ方を広げる可能性を大いに秘めていると考えます。先述したデジタルファッション市場を例に取れば、Instgaramインフルエンサーが着ているデジタルファッションアイテムをアプリ上で購入、自撮り写真に加工で着させたりして楽しむといった遊び方が徐々に浸透するかもしれません。
実際、自撮りのポージング写真を送付すると、デザイナーがデジタルファッションを纏った写真を仕立ててくれる「Auroboros」というサービスが既に存在しています。こういった流れからも、インフルエンサーと同じモノを揃えたいと考える「同一化ニーズ」を軸にした、NFTアイテムのバイラルが起こるかもしれません。
購入したアイテムはNFTとして自分のアバターに着させることもでき、アバターは親会社Metaが展開する「Horizon Worlds」で展開できるようになることも想像できます。ここまでユースケースを広げることができれば、モバイルアプリ「Instagram」から始まり、メタバース「Horizon Worlds」まで一気通貫したユーザージャーニーを描くことができます。
Metaが考えるメタバース・Web3戦略は未知数な点は多くありますが、日本からもThe Fabricantのように2D写真から始まり、メタバース空間におけるアバター着用ニーズまでを包括したファッション企業やサービスが登場してもおかしくないと考えています。インフルエンサー企業が真っ先に手をつけそうですが、今後市場がどう動くのか注目でしょう。
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