テック系スタートアップたちのアンテナにひっかかる最大のニュースは、Facebookがモバイル写真共有アプリInstagramを10億米ドルという莫大な現金と株式で買収した、というものだろう。
もっとも、私はFacebookによるInstagramの買収にはそれほど驚かなかった。FacebookのCTOであるBret Taylor氏が、Mobile World Congressで何度も「Facebookの未来はモバイルにある」と言っていたのを聞いていたからだ。
Instagram のこのエグジットは、この会社がたった数人の社員ながら3000万人のユーザー基盤を蓄積し、これまで最もダウンロードされた写真アプリの一つであり続けていることを考えると驚くべきことである。
今では、アメリカにならう中国の群集効果とでもいうのか、多くのVCが中国で最良のInstagramのクローンが立ち上がるのをよだれを垂らさんばかりに待ち望んでいるだろう。中国最大手のテック企業の一つであるTencentは、昨年6月にQ Paiと呼ばれる独自のInstagramクローンをすでにローンチしている。
Tencent、Baidu、RenRenなどの大手と闘わざるおえない中国のテック系スタートアップのエコシステムは小規模スタートアップにとって公平な市場ではないと非難されることが多い。これまでアメリカと中国のスタートアップのエコシステムの違いについて意見を交わす機会が多かった。アメリカのスタートアップは市場の注目を集めて大きく成長し、規模の大きな結末を迎える機会に恵まれている。一方中国では、大手企業の経済力により、彼らが当たるサービスを独自に開発してしまい小規模スタートアップにチャンスはない。
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Facebook とTencentを比較すると、どちらも最有力のテック企業である。Tencentの時価総額は4,060億香港ドル、FacebookはIPO前時点で1,000億米ドルあたりだと評価されている。両者ともに資金があるというのになぜFacebookは、Tencentのように独自の Instagram的なサービスを開発しなかったのだろうか?
アメリカにおいてGoogleやFacebookが買収時によくある例として、スタートアップのチーム、テクノロジー、ユーザーあるいはそういったものすべてを買収してしまうことが多い。
価値のある才能をめぐる激しい競争市場では、いちいち作るよりもチームごと買収した方が時間の節約にもなり、場合によってはコスト削減もできるのである。残念なことに中国では、チー ム、テクノロジー、ユーザーの価値はもっと低い。なぜだろうか。Tencentの場合で言えば、彼らはすでに大手であり、何かを開発するのに人を雇ったり、あるいはチーム全体をシフトさせたりする余裕があるからだ。
テクノロジーにとって、知的所有権に関する法律は緩過ぎるため、誰もが他人のテクノロジーを利用できてしまう。ユーザーに関してはどうだろうか。Tencentは既にQQのアクティブユーザーが7億1,700万人を誇り、 1億人のWeixinユーザーがいる。従って中国は独自での開発を好み、アメリカは買収を好むのも不思議ではない。
中国のスタートアップがもし何かのクローンではなく完全な独自性を持ち合わせていれば、大手テック企業と競う上での一つの強みになるかもしれない。中国には果たしてオリジナリティーを持ち合わせた企業や技術は存在するのか、あなたは考えているに違いない。まれだが、実在する。例えば、Doubanは中国で最も独自性があり成功したソーシャルネットワークの一つだ。
本、映画、音楽への興味に基づいたインタレストグラフのSNS1で、Doubanにはおよそ5,300万人のユーザーがいる。それほど急速に成長しているというのに、資金やチームも持ち合わせるTencent、Baidu、RenRenは、なぜそのクローンを作りDoubanを潰さなかったのか。おそらくDoubanの独自性があまりにも強かったため大手はどう対処して良いか分からなかったのだろう。つまり、中国のスタートアップにとって、オリジナルであることとスピード感があることは自信につながるものなのだ。
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