#10 未来のブロックチェーン活用スキーム 〜Scalar深津CEO × ACV村上〜

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト。グローバル・テックシーンを見つめてきたITジャーナリストの松村太郎をナビゲーターに迎え、旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

分散型(非中央集権型)アプリケーションのコア技術となるブロックチェーンですが、我々コンシューマがメリット享受する仮想通貨や NFT といったアプリケーション以外に、ビジネスにも応用が浸透しつつあります。元々は軍事ネットワークだったインターネットが個人間で情報をやりとりされる媒介となり、やがて商業ベースで企業側取引にも利用されるようになった歴史を彷彿させます。

ブロックチェーン技術は果たして仕事に使っても安全なのでしょうか。高い信頼性を有する独自のデータ管理技術をベースに、分散データベースシステム「Scalar DL」やトランザクションマネージャー「Scalar DB」を開発・提供する Scalar の共同代表を務める深津航(わたる)さん、Accenture Song シニア・マネジャー 村上仁(ひとし)さんに話を伺いました。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。太字の質問はすべてナビゲーターの松村太郎さん)

ポッドキャストで語られたこと

  • データトラッキングの韓国ヒュンダイの事例と結果
  • 日本同士あるいは海外と連結する上で、今後目指すべきチェーンの形
  • 企業のデータ取得と合意形成
  • メタバースによる多重人格社会におけるマーケティング対象の変化

ユーザー側のリテラシーとして自分の情報をトレースする習慣なのか、それを簡単にできるインターフェースみたいなものがこれから出てきそうな感じがします。ただ、自分の情報が気になってトレースしすぎるとトラフィックが重くなり、サーバーのパワーがどれくらいかかるんだろうと考えてしまうのですが、技術的にどんな世界になっていくのでしょうか

深津: 2 年前ぐらいにユーザー観察を女子高生や大学生を対象に行いました。「系統」という言葉が使われていて、自分のバーチャルの人格を分けている。典型的なツールがInstagramです。若者は食べたものの写真や、旅行の写真をあげる別々のアカウントを持っています。バーチャルの人格ごとに使うシーンを分けています。今まではユーザーID一個で、ログイン一個だったのが、今後はシーンに合せたバーチャルの人格が出てきて、人格ごとに分ければ出す情報がコントロールできるので流通してもよい人格、守りたい人格で全てをトラッキングしなくても良くなると思います。

学生は1 つのメタバースじゃダメだと言っていて、「なぜゲームで楽しむメタバースと大学で勉強するメタバースが一緒になってるんだよ!常識的にありえないでしょう。」と。どこにどんな自分を出すのか、きちんと区別するのスキルは当たり前に持つようになっていくのですかね

深津:逆に言うと、マーケティングをかける側は、個人をターゲットにするのではなくて人格をターゲットするに変わるはずです。今までの広告モデルは個人をターゲットにしてたので、私は今この人格でアプローチしてないよって時にそういう広告が入ってくるのは結構うっとうしくなるんでしょうね。

ペルソナを今まで作ってましたが、それどうするの?という問題になってきますよね。

村上:よくあるペルソナは 20何歳、どこに勤めていて、これが趣味みたいに1人の人格じゃないですか。メタバース A ではこういう人で、メタバース Bではこういう人でという区分で、その人の過処分時間のどこにリーチしてきますか?という議論がもっと盛んになってくると思います。メタバースではいくらでもなりすませます。だから確かにこの人が誰であるかを証明するところにブロックチェーンが使えるのです。

深津:バーチャルの人格が増えると本人かどうかわからなくなります。それを証明する技術が分離されるイメージです。

村上:今までお財布の根元がリアルマネーでしたが、今の学生たちは月に5000円ぐらいずつビットコインとイーサリアムを買っていて、例え上がったとしても別に円に換金するつもりはありませんと言っていてメタバースにはメタバースの財布を持ち始めているんだなと。そうなってきても、うまくトレースする仕組みが必要で、社会であったりビジネスであったり個人だったりに実装されていくのかなと少し未来が見えてきますね。

SCALARとしてその世界に対してどういうアプローチを取ろうと考えていますか?

深津:我々は基本的には企業を相手にするので、企業が他の企業、あるいは他の個人に対して自分たちは悪いことしてません、正しいことしてますよということを証明することに特化していきます。一方でそれを流出させるのは一般的なブロックチェーンがよく使われていて、NFTやDIDもそうですが、そういうところとインテグレーションしていく形になっていきます。ただ、ブロックチェーンは大量のトランザクションを捌くのは非常に苦手なので、ただトレースするだけのトラッキングデータは非常に多いんです。

例えば過去にあった発電所のIoTトレースでも 30 分や 15 分ごとにデータが発電所ごとに出てくるので、ブロックチェーンでは出来ません。そこに渡すための橋渡しを我々が担っていきます。

村上さんはいかがですか?

村上:私の働き方はスタートアップにもいてアクセンチュアにもいるので、これを最大限生かすことが重要かなと思っています。色々な所属があることで見えてくる視点もあるので、橋渡しになっていきたいですね。

映像コンテンツの権利関係の検証をやってたじゃないですか。我々の立場だと各コンテンツを持ってる会社の検証は我々の方が向いていて、コンテンツを持っている会社同士を繋ぐという調整や、仕組み作りはアクセンチュアの方が向いてると思います。

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