アフリカのAmazon「Jumia」は、手付かずだったEC市場をいかにして先取したか(2)

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Image credit:Jumia

「Jumia」は今回取り上げているロジスティクス領域の中だけでなく、成功したアフリカの代表的なスタートアップとして有名だ。2012年にナイジェリアで現在でも共同CEOを務めるJeremy Hodara氏と Sacha Poignonnec氏によって創業された。2016年にアフリカで初めてのユニコーンとなり、2019年4月にはニューヨーク証券取引所に上場した。アフリカ11ヵ国へのサービス提供で、2022年第2四半期はGMVが2億7100万米ドルになり、前年比21%増の成長を続けている。

アフリカのAmazonの異名を持つ同社は、Q Commerceと呼ばれる注文された商品を1時間以内に顧客に配達するコマースプラットフォームを運用している。実際に同社のサイトを見てみると、家電、日用品、健康用品、美容用品まで豊富な品揃えがあり、Canonのカメラなどの日本製品も購入することができる。

同社は11か国の市場全体に30以上を超える倉庫と、3000箇所以上のドロップオフステーションとピックアップステーションを設置している。eコマースの売買が可能な仕組みをオンライン上に用意するだけでなく、郵便局の代替となるような物理的な場所を自社で用意している点がアフリカの市場に適応した特徴と言える。その上で、サービスの品質や配送コストの向上を目指している。

さらに、2020年にはラストマイル配送のためにこの物流ネットワークをサードパーティに解放した。2022年に世界最大の即時配送サービスで、日本進出も果たしたZiplineと提携することを発表したのが代表的な例だ。顧客が必要なときに様々なカテゴリの製品を即座にオンデマンドで配達できるようになる。

他にも同社は食品配達のJumia Food 、ホテル予約のJumia Travel、顧客が請求書を支払うことを可能にするJumia One、同社サービスで安全な支払いができるJumiaPayなどを展開している。アフリカのテックカンパニーに関する情報発信をするメディア「TechCabal」によると、これら事業を通じて現在1,000 人の従業員を雇用し、1万以上の販売代理店と350 のサードパーティーと関係を持ち、10万社の中小企業のオンライン化をサポートしているそうだ。

Harvard Business Reviewで言及がある通り、eコマースを取り巻くアフリカの環境は先進国ほど整っていない。そもそもインターネットが高く、配送インフラが未発達であるため配送コストも高いため、一般的にスーパーや市場で売ってるものよりも価格の面で不利を背負っている。また地域によっては識字率が30%を下回るため、人口に対して潜在的な顧客の少なさも課題だ。さらにフィッシング詐欺や偽造商品が出回るためオンラインショッピングへ懐疑的な意見を持つ人も多い。

しかし、依然としてアフリカのeコマース市場は明るい。International Trade Administrationの報告によると、2025年までオンライン消費者の年平均成長率 (CAGR) は17%で、ユーザー数は5億人になるそうだ。まだまだ時間と労力がかかるが、インフラを含む技術の浸透と献身的なサービス提供を続けることで徐々に改善していくことが予想できる。

次:アフリカのインフラ改善をトラック輸送から解決する「Lori System」(3)

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