持続可能な社会を求めるZ世代——スタートアップはESGにどう取り組むべきか/GB Tech Trend

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Z世代を中心に「ESG(SDGs)」「サステイナブル」をキーワードとした購買トレンドが興りつつあります。自分たちが買う商品、サービスがどういった持続可能な仕組みの中で作られてきたのか、地球環境へどの程度ポジティブな影響をもたらすのかが購入判断軸となる流れです。

たとえばD2Cアパレル企業として著名な「Everlane」は「Radical Transparency.(過激なまでの透明性)」を特徴とし、商品が顧客に届けられる工程と、そのコストを詳らかにすることで、従来のアパレル市場の問題に切り込む意思表示をしています。

大量生産、大量消費、大量破棄され、多量の労働の対価として低賃金で働かされる持続性のないアパレル市場のサプライチェーンの現状に対して、Everlaneの商品を購入することを通じ、誰もが反対の意思表示を出せるというメッセージを「We believe we can all make a difference.(私たちは誰もが変化を起こせることを信じる)」という自社のパーパスに込め、社会から多大な信頼を勝ち取りました。

別例ではAI保険会社の「Lemonade」が挙げられます。

同社は「社会悪をソーシャルグッドに」をミッションに据えています。保険料をなるべく還元して欲しい被保険者と、事業維持のためにプール金は確保しておきたいという伝統的な保険会社との綱引きに対し「Giveback」と呼ばれる仕組みを導入したのがLemonadeです。

これは保険料の20%を手数料として徴収した上で、もし保険料のプール金に余りが発生した場合、顧客が選択したチャリティ活動へその資金を充てるというものです。Lemonadeを利用した被保険者は、自然と社会貢献に参加できるという循環が生まれ、わずか数年で上場するまでに至りました。

気候変動に端を発した全世界的なESGへの関心は、消費者マインドを人間中心から地球中心へと変化させつつあります。そして今、地球に存在するステークホルダー全員の持続可能性に絡んだサービス開発が進んでいるようです。

先日、1,450万ドルの資金調達を発表した「EcoCart」は、まさにその流れを汲んでいる企業のひとつです。同社は小売業者向けの分析ツール及び決済ページ向けアドオン機能を提供していて、EcoCartの導入企業は、自社商品開発において発生した温室効果ガスの排出量をCO2に換算した「カーボンフットプリント」の分析ができるようになります。

また、決済ページにて顧客がカーボンニュートラルに対して、少額の活動金を寄付できる機能を追加でき、各小売企業の「ESG活動推進」を支援しています。

また、累計300万ドルの調達を果たしている「Givz」のケースも参考となるでしょう。同社は先述のLemonadeのようなチャリティ寄付の仕組みをあらゆる事業者に導入するためのAPIを提供しています。

GivzのAPIを導入することで、Eコマース顧客に「購入金額のX%を寄付に充てる」という選択肢を提示できるようになるわけです。結果として購入金額の単価を上げることに繋がるだけでなく、導入事業者としてはチャリティの仕組みを構築しづらいといった課題解決に繋がります。

ESGのアプローチは時代の要請です。一方、この設計をあらゆる企業がスムーズにできるほど容易でないのも事実です。この点、事業者の課題を解決しつつ、ご紹介したスタートアップたちのようにサイトアドオンやAPI導入で軽減させるアプローチはこれからも増えてくるかもしません。

10月4日〜10月17日の主要ニュース

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