AI × VTuber「IZUMO」始動、仕掛け人はあの連続起業家【インタビュー】

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ニュースサマリ:AIとWeb3技術を基盤にしたVTuberプロジェクト「IZUMO」を手がけるAnotherBallは5月17日、エンジェルラウンドで約3億円を調達したと発表した。

この資金調達ラウンドには、Next Web Capitalの大日方祐介氏と渡辺創太氏、Sony Group CorporationのCTO北野宏明氏、MistletoeのCEO孫泰蔵氏、元Sanrio Media & Pictures EntertainmentのCEOでChiru LabsとAzukiのアドバイザー鳩山玲人氏、KSK Angel Fundの本田圭佑氏、MercariのCEO山田進太郎氏、Polygonの創設者Jaynti Kanani氏、PlayCoの創設者Justin Waldron氏、元GoJek CEOのKevin Aluwi氏、Twitchの共同創業者のKevin Lin氏、QuantstampのCEOであるRichard Ma氏、Mask NetworkのCEOであるSuji Yan氏、そしてZenAcademyのCEOであるZeneca氏らが参加している。

AnotherBallの創業は2022年5月。同社CEOの大湯俊介氏とCTOの島田達朗氏は過去に家族向け情報サイト「ママリ」や多国籍VTuber事務所「PRISM PROJECT」を立ち上げた連続起業家で、それぞれKDDIとSONYグループに売却した実績がある。現在手掛けているIZUMOは日本のアニメ文化に根ざしたVTuberプロジェクトで、NFTなどのWeb3技術を活用した、AIキャラクター「Ailis(アイリス)」をアイコンとして登場させている。

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写真左端が大湯氏、右端が島田氏

話題のポイント:ママリなどでスタートアップした大湯さんが売却後に世界を回って再始動の準備をしていることはちらりと聞いていましたが、ようやくプロジェクトがお披露目になりました。現在、彼はシンガポールに移住し、グローバルエンターテインメント、特にクリエイター経済の領域で挑戦しようとしています。彼らの壮絶とも言える起業家物語はこちらの記事にまとめていますので、ご興味ある方はご一読いただければ

さて、そんな二人が立ち上げたのがIZUMOです。VTuberと言えば、国内ではにじさんじなど擁するANYCOLORとhololive(ホロライブ)のカバーが二大勢力として昨年から上場を果たしており、株価は乱高下はあるにせよ、非常に優れた成長スタートアップとして注目を集めています。実は大湯さんはANYCOLORに対しても初期のエンジェル投資家として参加しており、自身も多国籍VTuber事務所「PRISM PROJECT」を立ち上げ、SONYグループに事業売却した経験があります。つまり、VTuberについてはプロ筋です。

ではIZUMOはどのようなプロジェクトなのでしょうか。実はまだこれからの部分が多いのですが、ひとつ特徴としてここ数カ月で目まぐるしい変化を遂げたジェネレーティブ(生成型)AIの存在があります。国内組で記憶に新しいのがGateboxです。GPTを組み込むことでバーチャルキャラクターとの自然な音声会話を可能にしました。

ChatGPTと従来のエージェント型と言われる、定型文章を返すAIとの違いはやはり人間のようなランダムな会話です。毎回、回答を生成するので、同じような答えではなく、まるで人間のような会話の雰囲気を味わうことができます。また、レスポンスも重要なポイントで、回答までに生成時間がかかってはやはり不自然です。この辺りがOpenAIのGPT-3.5 turboによって改善されたことがキャラクターとの会話を実現させました。

この領域で大きく評価を受けているのがCharacter.AIです。彼らはカスタマイズ可能な「AI人格」を生成でき、ChatGPTのように、独自の個性と価値観を持つ各キャラクターと対話できるサービスを提供しています。3月にはAndreessen Horowitzがリードするラウンドで、10億ドルの評価額をつけています。創業からわずか2年の出来事です。

大湯さんはCharacter.AIを参考に、IZUMOでも近く同様の体験を検討しているとお話されていました。ということで、インタビューではビジネスや世界観についてお聞きしています(太字の質問は全て筆者。回答は大湯さん。敬称は略させていただきました)。

IZUMOの中で大湯さんはCaptain

まず、IZUMOについて。いわゆるVTuberプロジェクトですが、具体的にどういった活動を予定していますか

Captain:まさにこのキャラクターの配信に『集う』準備をしています。まさにこのキャラクターの性格を作っていくみたいなことをやっていて、短期的にはステップ1として、まず参加できるイベントがあるって感じです。その次のステップとして、実際にこのキャラクターを応援する、このキャラクターに関与するための入口のチケットとして、僕らがNFTを配布していくことを考えています。有名なイラストレーターさんとコラボして無料でNFTがもらえるっていう企画をやろうと思ってるんですね。

ウォレットをTwitterと連携するだけでかわいいイラストがNFTでもらえちゃったっていう体験を作っていこうと思って準備をしています。Web3やNFTのことがわからない人でもイラストがかわいいし、キャラクターもかわいいし、何か参加したいなと思った人が参加できるような形でこのステップ2をやっていこうと思っています。さらに先があるのですが、そこはまだ秘密です。

ちょっと意地悪な質問ですが、そもそも大湯さんは多国籍VTuber事務所「PRISM PROJECT」を立ち上げていましたよね?VTuber事業を再度手がける理由は?

Captain:なんか同じことやってもしょうがないじゃんって思いも当然ありつつ、どうして私たちはやるかっていうと、やっぱり新しい技術を組み合わせることで、エンターテインメントの領域が広がっていくということに興味を持っているからです。このモデル(芸能事務所系のVTuber事業)はそういう方向には追求できないんですよね。別にやりたくないとか思ってやめたわけではないんです。ただ、この方式でやっても技術を組み合わせるためには、やっぱり人間は全員を説得しなくちゃいけないという制約があるんですよね。これは人間の限界なんだなって感じです。

IZUMOに戻ります。既存のVTuberビジネス・世界に加えてWeb3だったりクリプトの技術を組み合わせるわけですが、NFTについてはまだまだ懐疑的な意見もあります。その点はどのように考えていますか

Captain:時間軸の存在について話すと、今の感覚や考え方は5年や10年といった長期間の中で徐々に変わっていくだろうと思っています。これが1つ目の大きな時間軸に関連する考え方です。2つ目の論点に移りますと、具体的にはまだ時間経過が10年ではないので、その間を埋めるために私たちができることは何かという話になります。

まず1つ目の話をすると、やはり世代によって感覚がどんどんずれてきていると思っています。例えば、実際に不動産を買う、買いたいという40代や50代の人たちでも、それほどのお金がないために実現できないことがあります。しかしフラグメント(分割所有)として購入すれば、実現できるしワクワクするし、実際、NOT A HOTELのNFTはかっこいいし、今の時代に即したアプローチだと思います。

確かに今、世の中の一般的な人々に対してデジタルアートに50万円払えますかと聞いた場合、絶対に払わないでしょう。ただ、実際、私はリアルな服はもう買わないですけど、レジャーやアバターの服なら、もうそれよりもっと課金しているんですよ。こういった状況の中で、デジタルにおけるアセットや資産に関する考え方は、遅かれ早かれ変化し、一般的になっていくと思います。ですので、フィットしていなくてもフィットしていくだろうという前提を持って、事業を行っているということがあります。

確かにNFTもPFPからPOAP(Proof of Attendance Protocol・イベント参加証明NFT)のような推し文化の重要なアイテムになりつつあったりするので、価値観やソリューションはまだまだ変化しそうですもんね

Captain:そもそも、スタートアップは4年先を見越しながら作るものじゃないですか。今、僕たちが取り組んでいることがフィットしてくるだろうと感じるからこそ、この先、3年で一般化していくと思って取り組んでいます。その上で、今、この1年の間に何をしているのかという話があったときに、僕としては、だからこそオタク領域なのかなと思っています。オタク領域はとてもニッチな領域であり、所有欲を非常に大切にするユーザーセグメントなんです。例えば、わかりやすくアーティストのCDを1000枚買ってしまったような人たちがいますよね。

それは何か企画にパーティプレイとして参加したいからこそ、その参加券として、その証になるものを買ってしまうような、手段が目的化できることにお金を使えるのが僕はオタクだと思っています。そのような文脈の中で、実際に僕たちはまず最初にこのキャラクターを作り上げていくんです。

ありがとうございました

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