フィナンシェで価格が乱高下しない理由/フィナンシェ田中 × ACV唐澤・村上(5)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

今回のゲストはフィナンシェ取締役COO・CMO、田中隆一さんにご登場いただきます。

フィナンシェは、ブロックチェーン・トークンを使ったクラウドファンディングサービス「FiNANCiE」を提供するスタートアップです。創業時からこのプロジェクトを牽引し、南葛SCなどをはじめ話題のスポーツプロジェクトを数多く手がけたことでも知られる田中隆一さんにお話を伺いました。5回連続でポッドキャストから一部をテキストにしてお送りします。

ポッドキャストで語られたこと

  • スキルや価値が滑らかになる世界を求めて
  • クラファン2.0の価値とは何か
  • エンタメの次は食、地域通貨を循環させる方法は?
  • 成功体験、どう作る?
  • フィナンシェで価格が乱高下しない理由

唐澤:(中略)フィナンシェのトークンは良くも悪くもプライスが割と固定じゃないですか。そんなに乱高下しない。(中略)資産形成における期待値はもしかしたら他のサービスと比べるとちょっと低いのかなという点についてはどう思いますか?(中略)

田中:まず大事なのは、そのプロジェクトへの応援だと思ってて、そこに対してメリットがある。なので、我々もプロジェクトのファンディングで集めたところは、ほぼほぼプロジェクト側にお金を渡したりとか、売ったり買ったりの部分でも、一部の手数料の収益もオーナー側に入ります。(中略)長期的な部分でインセンティブがあるというのは今までなかったかなと。(中略)

例えばイチロー選手が若かった頃のベースボールカードとか試合球とかを持ってたら、今だったらすごく価値が出てきて、(中略)副次的に価値が上がったものもあると思うんです(中略)一気に何かをやるというよりは徐々にしっかり作り上げていくこと。じゃないと投機で終わってしまって、一時期上がったけど後はすぐ下がっちゃうみたいな形にならないかなと思ってるんですよね。(中略)しっかりとしたフェアな仕組みにしていく必要があると思ってます。

唐澤:今は値段が少し安定で、むしろ中長期的に上がっていくのが望ましい姿だと考えた時に、うまくコントロールする方法ってあるんですか。(中略)

田中:去年の5月ぐらいに、とあるスポーツチームのトークンが数百倍に上がった瞬間があったんですよ。渋谷シティFCっていうサッカーチームのトークンが数日間で200倍〜300倍まで一気に価値が上がった瞬間があってですね。まだそこまでユーザー数が多いわけではなかったんですけども、そういった事例も出てきてはいたので、そのタイミングで僕らも急に上がり過ぎないような値幅制限を設けたりしています。その辺りは随時アップデートしながらやっていくので、今後そういうことが起きても、いろいろと変えながらやっていく必要があるんじゃないかなと思ってますね。

唐澤:IEO自体あるということは口外されてるわけじゃないですか。その狙いを教えてもらってもいいですか。

田中:(中略)我々自体のプラットフォームにもう一つ階層が深まった部分での価値を作っていくというイメージなんですよね。我々のプラットフォームを最初から応援してくれているユーザーさん=今トークンをいろんなチームまたはプロジェクトオーナーさんから買っていただいてる人たちにメリットがあるような仕組み。

例えば持っている人たちにリワード的に出していくとか、それ以外にもいくつかいろんな仕組みは検討しています。根底にあるのは、最初から使っていただいている人たちにもメリットがあって、トークンを欲しいと思ってくれる人たちがさらに多く増えることで全体的に底上げしていく。そうすると今度はプロジェクトやクリエイターさんのトークンの価値も上がっていくことに連動する可能性がある。そういったエコシステムができるんじゃないかなと思ってます。

唐澤:IEOによってもっと幅広いファンとかユーザーに入ってきてもらう。で、既存のユーザーも利益が得られる。こんな循環モデルを狙われてるってことですよね。

田中:そうですね。本当にありがたいことに、ファンの人たちがユーザーとしてついていただいてはいるんですけど、それ以上に例えば今クリプトのいろんな取引所で既に取引してるユーザーさんたちもこのエコシステムに入ってこられるポテンシャルがあって、そこに十分に適した仕組みにしていくことも大事だと思ってます。

唐澤:フィナンシェさんから見て競合はどこになるんですか。

田中:完全なる競合って、ドンピシャでこれというのはそこまでないですね。それぞれいろんな軸を持ってますし、Web3の中でも特徴はありますし。日本だけ見てもトークンを持っている人って少ないと思うんで、それぞれが認知度を上げていくことでもっともっと広げていかなければいけないですし。

強いて競合というと海外で今スポーツチームをやっているSociosさんが近いです。あとはRallyっていう海外でいろんなクリエイターを応援する仕組みがあります。違う軸で同じような領域をやっているというところはありますね。

(中略)

唐澤:最近いろんな方と話してる中で、アーリーアダプターはたぶん一周したじゃないですか。これからどうやってマスアダプションをしていくのかってなった途端にハードルが上がる。フィナンシェさんとして、あるいは田中さんとして、どうやったらこの領域をまだそこまで詳しくない方にももっと広げていくのか。広げるための方策はありますか?

田中:そこは分かりやすくメリットを伝えていくことかなと思ってます。技術的な部分って、正直、一般の人にとってはどうでもいいというか、信頼が置ければいいじゃないですか。今までの人たちは「こういう技術が面白い」、「こういう技術が可能性があるから」って言って入ってくれる人たちが多かったと思うんですけど、今後はこういうメリットがあるっていうことになると思う。そうすると、プロジェクトのオーナーのファンの人たちが分かりやすいメリットがあるから入ってきて、その人たちが体験して満足してそれを発信して、違う人たちにもそれが伝わっていくというようなところが非常に大事かなと思っています。

技術はあくまでそれを実現するための手段でしかない。それを広げていくためには技術を開発していかなきゃいけないんですけど、僕らはまだ仕組み的にはWeb3じゃなくてWeb2.5の世界を作ってるんです。2から2.5って抽象的な概念にはなるんですが、しっかりとユーザーをナーチャリングして育てて、その人たちにファンになってもらっていかなきゃいけないと思ってますね。

唐澤:一過性のブームに終わらせないために、その後に本質的な価値をちゃんと訴求して理解してもらう事例を作っていかないといけないんですね。

田中:そこに入ってくると、今度は「じゃあそれを買っとけばもしかしたら儲かるかもしれないな」って投資的な目線の人たちも入ってきて、マーケットが今までの純粋なファンだけじゃなくなる。じゃあなんでその人たちがトークンを買っておけば今後メリットがあると思うのかというと、やっぱり強力なファンの人たちがそこで盛り上がったり、価値を感じているからなんですよね。

これってアートの世界でも、そのアーティストを応援したい人たちがいて、それを見て、じゃあ買っとこうみたいな投資家、コレクター投資の人たちもいる。そこは両方とも大事かなと思いますよ。

唐澤:最後に田中さんから発信されたいことがあればお願いします。

田中:僕らの仕組みは、使ってもらう人たちの創造性によってもっともっと進化できると思ってるんですよね。なので、プロジェクトオーナー側の立ち位置もそうですし、それを支えているユーザーの立ち位置もそうですし、我々のこの仕組み自体に可能性を感じてもらってるユーザーさんの立ち位置もそうなんですけど、いろんな部分で使い方を提案してもらったり発信してもらって、どんどん新しい使い方を開発していきたいなと思っています。ぜひアイディアをSNSでもコミュニティの中でもいいんで発信してもらえると、よりコミュニティが建設的な部分で盛り上がっていくんじゃないかなと思います。ぜひぜひ参加していただけたら。トークンを持っているということも一つの体験にはなるんですけども、コミュニティに参加してもらえればなと思います。

(中略)

唐澤:長い時間ありがとうございました。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録