クラファン2.0の価値とは何か/フィナンシェ田中 × ACV唐澤・村上(2)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

今回のゲストはフィナンシェ取締役COO・CMO、田中隆一さんにご登場いただきます。

フィナンシェは、ブロックチェーン・トークンを使ったクラウドファンディングサービス「FiNANCiE」を提供するスタートアップです。創業時からこのプロジェクトを牽引し、南葛SCなどをはじめ話題のスポーツプロジェクトを数多く手がけたことでも知られる田中隆一さんにお話を伺いました。5回連続でポッドキャストから一部をテキストにしてお送りします。

ポッドキャストで語られたこと

  • スキルや価値が滑らかになる世界を求めて
  • クラファン2.0の価値とは何か
  • エンタメの次は食、地域通貨を循環させる方法は?
  • 成功体験、どう作る?
  • フィナンシェで価格が乱高下しない理由

唐澤:フィナンシェ自体が(中略)イメージとしてファントークンという側面が割と強調されて伝わったりすることもあるじゃないですか。

でも田中さんのお話を伺うと、別にファントークンっていうポジショニングではなくて、個人やクリエイター、あるいはクラブとか、いろんなトランザクションがあって、それはファンとのコミュニケーションかもしれないし、別のコミュニケーションかもしれない。そういうもののいろんなとこに介在していくみたいなことの方が捉え方として正しいですかね?

田中:サービスの手段としては、いわゆる資金調達だったりファンドレイジングといった、新しく活動資金を得ていくための手段っていうのは分かりやすい価値だと思うんですよね。そういう側面を持ちながら、(中略)さらに一歩アップデートを加えていくとしたら、継続的に応援できることかなと思ってます。

トークンを使うことで、みなさんとの関係値を継続的に持つ、または持っているものを交換し合っていくという風になっていくので、コミュニティ要素の側面が大きいと思っています。むしろそっちの中でやり取りする経済圏を作りたいんです。ただ、なかなか新しい考え方でもあるので、1個1個実際の実例をトークンを発行しているオーナーのみなさんと一緒に作っていくことを地道にやってます。

唐澤:なるほど。(中略)今後はアーティスト間とかユーザー間のトランザクションも含めていろんな方向性のトランザクションが出てくるイメージなんですか?

田中:そうですね。発行する人(プロジェクトオーナー)から支援者への一方通行ではなくて、ユーザー同士でプロジェクトに関わる価値を交換し合うことでそのプロジェクト自体の価値が高まっていくというところは大いにあり得ます。プロジェクト自体の価値がトークンの価値に反映されていくと、トークンの価値が高まっていくことで応援する人にとってもインセンティブが見えてくる。

そういったとこに繋がっていくよっていうところが、体感しないとなかなか分かりづらいことではあるので、我々としてもそういった体験をいかに提供しやすい環境にしていくかですよね。プラットフォームとしてはそこに気をつけて運営の支援やプロダクトの開発をメインでやってるんですよ。

唐澤:フィナンシェはあくまでプラットフォーマーとしていろんなプロジェクトを支援する立場を取られてると思うんですけれども、(中略)みなさんから見て成功しやすいプロジェクト、あるいは逆に失敗しやすいプロジェクトみたいな特徴ってありますか?

田中:まだ開始して2〜3年なので、これが成功だとかこれが失敗だっていうのは・・・皆で一緒に作っていく中でできるだけ成功に持っていくところではあるんですけども。

今盛り上がっているコミュニティを見ていると、発信をどう捉えるか。ファンとのコミュニケーションを義務と捉えるか、それ自体を価値と捉えていくかというところで結構変わってくるかなと思ってます。単純に高収益を得て、ファンとのコミュニケーション手段っていうのはどうしてもやらなきゃいけないこと、これはどこのエンターテインメントのサービスにしてもそうだと思うんですけども。

そこの考え方をアップデートして、それも一つの価値だと捉えていかに発信していくか。トークンを持っている人たちといかにそのトークンならではの取り組みをしていくかというのを積極的に考えているプロジェクトは、ファンの人たちもみなさんそれを感じて自分たちも盛り上がっていこうという空気感がデジタル上でも結構見えてくるんですよね。そういったところが成功する一つのポイントかなと思います。

唐澤:面白いですね。我々も最近コミュニティマーケティングみたいな相談を受けることがあって、(中略)よく出る議論として、運用コストはどうするんだと。

コミュニティを管理するには人を張ってコストを負って、それをやんなきゃいけないから大変だよねって議論に結構すぐなっちゃうんですよね。田中さんのお話を伺うと、そう考えてる時点でもうそれは間違いなんですね。

田中:そうですね。いわゆるソーシャルゲームの運用にかなり近いなと思ってます。結局売れるだけでいいんだったら、もうゲームで強いアイテムを出していけばいいと思うんですよ。それをやったら勝てるみたいなものを出していけばいいんですけど、それだけやってたら、いつかはユーザーさんも飽きたりとか、ゲームの中でのファンのコミュニティが崩壊してしまうこともあるんですよね。

そうじゃなくて、いかにユーザーさんに楽しんでもらってエンゲージメントを高めていく中で、徐々にユーザーさんにも中で買ってもらって継続的な収益を高めたり、他のビジネスチャンスを生んでいくか。今は、そういった考え方にアップデートされていく過渡期なんじゃないかなと思います。

唐澤:真髄を理解してるプロジェクトもそうじゃないプロジェクトもありますし、たぶんコミュニティ運営に対するノウハウの有無みたいなのもあるじゃないですか。フィナンシェとしてはどうやってプロジェクトと関わられてるんですか?(中略)

田中:そこは社内でもチームとして評価してまして、今コミュニティを支援するグループに約20名ぐらいいるんですね。社内の支援スタッフがプロジェクトオーナー、例えばスポーツチームであったりプロジェクト、エンターテインメント、地域のプロジェクトと一緒にストーリーを考えたり、トークンを持っている人たちにどういうバリューを提供していくかといったところを伴走しながら進めています。それはそれで我々の一つのノウハウであり、積み上がっている資産になっているのかなと思います。

唐澤:手離れが悪いとか手が掛かるっていう見方もあるんですけど、そこはむしろ競争の源泉というふうに捉えられてるから20名も張ったりされてるんですか。

田中:今後、プロジェクトの数はどんどん増やしていくんですけども、やっぱり最初はいろんなケースで使ってもらうことが想定できるかなと思ってます。2021年1月から始めていたのはスポーツの分野です。スポーツにはまだまだいろんなアスリートの方とかスポーツ協会のみなさんもいますし、スポーツ以外のプロジェクトでいくと、新しい機能が出てきていて、そこは僕らも入って一緒に開発して事例を作っていきます。

ただ事例を作るだけでなく横にどう展開していくかとか、機能にどう反映していくか。僕らのもう一つの強みはエンジニアリング力だと思ってまして、今開発メンバーが40名近くいて日々開発をしてますので、今は成功事例をプロダクトに落とし、仕組みに落とし込んでいく過程にあります。そういう形で効率的にしていくというとこは今まさにやってるところです。

唐澤:なるほど。カスタマーサクセスをゴリゴリにちゃんとやられてるってことですね。

田中:そうですね。やっぱり「出して集めました、それで終わりです」ってなったら、「結局トークンを使ったコミュニティって単純に資金を集めるだけの口実だったね」ってなってしまう恐れもあるじゃないですか。

とりあえず発行だけするというのであれば1日もかからずにできちゃうんですけど、1ヶ月ぐらいしっかりそのプロジェクトのオーナーやチームのみなさんとどういう形で落とし込んで訴求して発信していくかという運営の品質、そこが非常に重要なポイントかなと思ってます。

唐澤:今のプロジェクト数ってどれぐらいいらっしゃるんですか。

田中:スポーツの分野で80ぐらい、それ以外の分野が120ぐらいで、大体200ぐらいのプロジェクができている形です。

唐澤:オンボーディングにすごく時間をかけられてるということですが、新しいプロジェクトにはクライテリアみたいなものがあるんですか?例えば唐澤クラブみたいなのを申請したいと思った時に、どうしたらそれをパスできるんですか。

田中:我々が審査というのもおこがましい話ではあるんですが、立ち上げた後でいかに継続的なコミュニティとして回していけるか。企画と運営をする人たちのいわゆる運営能力がないと、買っていただいた人たちに対して、(中略)しっかりお互い運営の準備をする前に確認して、それぞれの判断で見極めていくという形ですね。ある程度事例もできているので、もうちょっとロジカルにプログラムの中でどうやって落とし込んでいくかとか、そういったところを今考えているところです。

次につづく:エンタメの次は食、地域通貨を循環させる方法は?/フィナンシェ田中 × ACV唐澤・村上(3)

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