AI動画生成のSynthesia、ユニコーン目前か——卓越したディープフェイク技術が生み出す光と影

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Image credit: Synthesia

先週、2つの記事が、人の声や画像や動画を AI が生成したものに置き換えるディープフェイク(合成メディア)を作成する企業をめぐる複雑な議論に焦点を当てた。どちらも、ロンドンを拠点とするスタートアップ Synthesia が関わっており、120以上の言語のテキストを入力することで、「15分でプロの AI 動画」を作成できるとしている。

Synthesia は5,000万米ドル以上の資金調達に向け交渉中と報じられている。

まず、Business Insider が4月27日に報じたところによると、Synthesia は約10億米ドルの時価総額がつくような取引で資金調達の交渉に入っているとのことだ。ある情報筋によれば、同社は5,000万ドルから7.500万ドルの資金を調達できるという。これは、多くの人が反発しているカテゴリーおける大金である。

例えば、27日の NPR の記事では、議員らは AI が生成するディープフェイクについていけないと述べている。先週、共和党全国大会が AI を使ってバイデン大統領の2期目を想像させる30秒広告(下の動画)を作成し、話題となったとしたのもこの記事だ。

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ディープフェイクツールは「家族を騙し、銀行を騙す」可能性がある

一方、Wall Sreet Journal では、コラムニストの Joanna Stern 氏が、Synthesia を試して、この AI ツールが自分の音声や映像の仕事をより生産的にし、雑務でなくすることができるかどうかを確かめたと書いている。彼女の「AI Joanna」には、良い点があったという。それは「彼女は決して声を失うことなく、抜群の姿勢で、竜巻の中を時速120kmで走るオープンカーでさえも、彼女の髪を乱すことはできない」というものだ。

残念ながら、彼女は AI Joanna が 「家族を騙し、銀行を騙す」ことができることも知った。彼女は ElevenLabs の別のツールを使って、自分の声をクローン化した。彼女のクローン音声は最終的に家族を欺くことはできなかったが、彼女の Chase クレジットカードの音声認証システムを回避することはできた。

それでも Stern 氏は、今後もこれらのツールを使い続けるという。

ビデオクローンや音声は(「私を私たらしめているものが欠けている」という意味で)完璧ではなかったが、「本当の人間になる」ための時間を節約するのには役立つだろう。(Stern 氏)

認められたディープフェイクが生み出すビジネス

ディープフェイクという言葉は、合成メディアやジェネレーティブ AI の無断使用を意味すると主張する、ディープフェイク論争のもう一つのポイントでもあるのだ。しかし、Synthesia のようなツールや、Hour One のような企業が提供するものは、ビジネス動画制作のようなユースケースにおいて、この技術を許可なく使用することを目的としている。

そして、それこそが投資家の関心事なのだ。Forrester の2023年の AI 予測のトップの一つは、フォーチュン500企業の10%が AI ツールでコンテンツを生成するというものだった。このレポートでは、Hour One や Synthesia といった、「AI を使って動画コンテンツ生成を加速している」スタートアップが紹介されている。

Synthesia の CEO Victor Riparbelli 氏は、昨年11月の VentureBeat とのインタビューで、ビジネス面はディープフェイクの議論において「非常に過小評価されている」部分であると述べている。

この技術を使ってできる悪いことについては、視野が非常に狭くなっているのが非常に興味深い。我々が見てきたのは、この技術に対する関心がますます高まり、使用例がどんどん増えていることだと思う。(Riparbelli 氏)

Riparbelli 氏は、AI が本物の俳優を訓練し、ユーザが自分自身のビデオを作成する以外に、俳優の画像と声を仮想キャラクターとして提供し、顧客がトレーニング、学習、コンプライアンス、マーケティング動画を作成するために選択することができると付け加えた。俳優には、その画像と声で作成された動画1本につき報酬が支払われる。

企業にとって、この方法で作成された動画は「生きている動画」となり、いつでも戻って編集することができる、と彼は説明する。

また、ユーザ公認の AI バージョンを作成するという点では、この種の公認は、すでに存在するあらゆる種類のライセンス契約において一般的であると Riparbelli 氏は述べている。

キム・カーダシアンは、文字通りアプリ開発者に自分の肖像権をライセンスし、数十億米ドルの売上を上げるゲームを構築している。あらゆる俳優や有名人が自分の肖像権をライセンスしている。(Riparbelli 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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