クールジャパンやBEENOSが支援する台湾のVpon(威朋)、AI広告制作システム「InVnity」をローンチ

Image credit: Vpon

以前は、デザイナーが広告イメージを作るのに、スタイルの打ち合わせからレイアウトの確定、撮影、ポストプロダクションまで、約1カ月かかっていた。それが  InVnity を使えば、わずか5~7日で完成する。(Vpon=威朋のグローバルソリューション担当ディレクター Fanko Yim=厳偉浩氏)

ビッグデータ解析でクライアントの広告制作を支援する Vpon は、AI 技術によって広告制作にかかる時間と手間を削減し、より多くのクライアントとのマッチングや事業拡大を目指し、2022年末から InVnity のシステム開発に着手した。

この AI の波の中で、取り残されないという意気込みを見せている Vpon。次はどのようにチャレンジしていくのだろうか。また、他の AI 広告システムとの比較では、どのような可能性があるのだろうか。

創業15年、「老舗スタートアップ」が AI 技術開発に着手

Vpon COO の Fanko Yim(厳偉浩)氏
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2008年に設立された Vpon は、B2B データソリューションに特化し、消費者行動データの分析、マーケティング戦略のアドバイス、広告の作成、キャンペーンの実施、効果検証をワンストップで提供している。現在までに、日本政府観光局、マクドナルド、コカ・コーラ、シティバンク、アメリカン・エキスプレスなど、1,000を超える有名ブランドにサービスを提供している。

2020年、日本政府系ファンドのクールジャパンファンド、韓国政府系投資会社の STIC Investment、東京証券取引所上場のBEENOS 香港を拠点とするトラベルテクノロジー投資ファンド TripLabs の支援を受け、その年の台湾スタートアップにとって最高の資金調達実績となる4,000万米ドルのシリーズ C ラウンドを発表した。

AI とは無縁のように見える Vpon が、なぜ研究開発との掛け持ちを選択したのか?

ChatGPT が人気を集め始めてから、AI と Vpon が持つビッグデータの間に可能性を感じたので、すぐに AI システムの開発に着手した。(Yim 氏)

Yim 氏は、AI が広告デザイナーを合成や色付けなどの面倒な作業から解放し、クリエイティブなアイデアやクライアントとの広告戦略の議論により集中できるようにする良いヘルパーだと表現している。

InVnity の使い方も非常に簡単で、デザイナーはプロンプト欄にデザイン要件とキーワード(例えば「木のテーブルの上のおいしそうなイチゴのケーキ」「4K」「見映えがリアル」)を入力するだけで、InVnity は 約10秒でその画像を生成する。

InVnity は、適切な要件を入力するだけで複数の初稿を作成でき、ワークフローを大幅にスピードアップする。
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公平を期すために言えば、AI が生成するコンテンツの技術競争では、Vpon だけが唯一のプレイヤーではない。

これに対して Yim 氏は、Vpon のチームには2つの強みがあると述べた。1つ目は、クライアントの顧客データにアクセスできるため、顧客のキーワードをより正確にタグ付けできること、2つ目は、InVnity システムで生成した画像を Vpon の広告配信プラットフォームに直接転送し、さらにスタッフがバックエンドデータを通して広告の効果(コンバージョン率やクリック率など)を確認できることだ。

InVnity  が他のジェネレーティブ AI ツールと異なるのは、デザイナーが細部(背景や衣装など)に局所的な変更を加えることができる「インペインティング機能」を有している点だ。
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InVnity のAIシステムにより、スタッフはデータのフィードバックに基づき、コンテンツを調整し、より適切な画像をすぐに制作することができる。(Yim 氏)

ビッグデータを活用し、InVnity を継続的に改善

チームによると、InVnity のシステムは主に Vpon の内部でワークフローを改善するために使用され、一般には公開されていない。Vpon の全体的な価格設定については、クライアントが広告に費やす金額+合理的な範囲の追加料金をベースに、クライアントが短時間・低コストで資料を作成できるようにデータを付加し、広告効果の向上を目指すという。

Vpon の COO Arthur Chan 氏(陳明發)は、AI とビッグデータの組み合わせが広告業界にブレークスルーをもたらすと期待し、次のように述べている。

当面の間、AI はさまざな形で介入し、さまざまなビジネス活動を促進するため、Vpon は AI によるイノベーションを止めることはないだろう。Vpon は、InVnity の継続的な学習と成長のために最先端のビッグデータを活用するとともに、InVnity システムを通じて新たなデータを収集し、Vpon のオーディエンスに対する理解をビジュアルレベルで高めていく。

Vpon は現在までに、台北、香港、シンガポール、東京、大阪、沖縄、バンコク、深圳のアジア8都市に拠点を構えている。今後は、アジア市場での展開を進めるとともに、ヨーロッパや米州への展開も予定している。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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