過熱するAIアバタービジネス——資料作成「Synthesia」はユニコーンに/GB Tech Trend

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Image credit: Synthesia

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

AIアバターを使った合成映像を作成する「Synthesia」がシリーズCラウンドにて9,000万ドルの資金調達を発表しました。累計調達額は1億5.660万ドル、資金調達後の企業価値は10億ドルに達したと報じられています。新たなユニコーン企業の誕生です。

Synthesiaの主なサービス用途はプレゼンテーションやオンライン教育動画です。Keynoteやパワーポイントスライドを作成する要領で、好きなスライドのテンプレートを選択。その際、ライブラリーからAIアバターやBGM、発話言語も選択し、あとはスライドのデザインをカスタマイズしながら、各スライドでアバターに話させたい文言を入れるだけでピッチ動画が完成します。SynthesiaのAIは本物の俳優を使って訓練されており、俳優は自分の画像と声で生成されたビデオが作成される毎に報酬を受け取る仕組みとなっています。

Synthesiaの競合として挙げられるのは、昨年9月に1,060万ドルのシリーズA調達を発表した「Rephrase.ai」が挙げられます。また、D-IDが開発する「Creative Reality Studio」も競合となりえるでしょう。いずれのAIアバタースタートアップも、ChatGPT登場のトレンドに乗って大きく躍進をしてきました。

ただ、彼らはB2B領域のユースケースに特化していることがわかります。

AIアバターの技術が消費者向け市場で利用される瞬間を投資家・スタートアップは待ち望んでいることでしょう。たとえばSnapchatで180万フォロワー以上を持つ人気インフルエンサーCaryn Marjorie氏の声とキャラクターを模したAIアバター「Caryn.ai」が一時期有名となりました。

1分1ドルで同アバターとデートできるサービスで、立ち上げ1週間で7万ドル超の売上を達成したと報じられており、単純計算で月額単位に直すと28万ドル、年額では100万ドルを超える売上高になっています。この額はインフルエンサーの稼ぐ額としては十分と言えるでしょう。

消費者向けの潜在市場規模はすでに検証されているとも思われ、まずはCaryn.aiのようにインフルエンサーの収益拡張のためのAIアバターサービスが、Synthesiaの先に来ることが予想されます。動画市場でライブ配信アプリが多く誕生したように、アバター配信アプリのような業態の可能性もあります。

また、この数年のトレンドでは、クリエイターがプラットフォームから売上一定額の手数料を取られるモデルではなく、クリエイターに必要な機能だけを月額で提供するSaaSが人気になっています(手数料売上30%のような形ではなく、機能利用料毎月30ドルのようなフラット価格モデル)。

こうした観点から、クリエイターが自身のAIアバターを制作・配信する機能を月額提供するクリエイターSaaSなどのサービスアプローチが最も市場と相性が良いかもしれません。

6月13日〜6月26日の主要ニュース

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