台湾のKeegoとRybit、欧州でフードデリバリ各社と提携——アフターコロナ、e-bikeはデリバリ需要が堅調に

Keego(智果移動)と Rybit
Image credit: Keego(智果移動), Rybit

e-bike 版 Tesla として知られたオランダのスタートアップ Vanmoof は2023年7月に破産を宣言し世界に衝撃を与えたが、だからといって、コロナ禍に端を発した e-bike ブームが去ったことを意味するわけではない。

台湾の e-bike スタートアップ Keego(智果移動)Rybit は、Vanmoof と同じく台湾のサプライチェーンをベースに e-bike を製造しており、ほぼ同時に朗報を発表した。両社はスウェーデンの Uber Eats、ヨーロッパのマクドナルドやバーガーキングと協力し、配達用の e-bike を管理している。Rybit はすでにヨーロッパ50都市で5万台の e-bike を管理しており、ヨーロッパでナンバーワンの e-bike 管理プラットフォームとなっている。

Keego が Uber Eats と提携
Image credit: Keego(智果移動)

コロナ禍が去って消費者の需要は低下したが、ビジネスの需要は持続可能な考え方により上昇している。(Keego 共同創業者の Elias Ek 氏)

e-bike は、自動車が入れない路地にも入ることができ、道路のラストワンマイル需要をよりよく解決することができる。(Rybit 共同創業者の Mark Lin=林靖徳氏)

この2つの台湾のスタートアップは、どのようにしてヨーロッパの顧客の心をつかむことに成功したのだろうか?

【ポイント1】安定かつ強力なハードウェアサプライチェーンによるメンテナンスコストの削減

配達用バイクは、通勤用やレジャー用と異なり商用車に近いため、性能や耐久性の面で再設計する必要がある。

Keegoの e-bike にはバッテリが2つ搭載されており、航続距離は90~120kmと予想される。加えて、65kg以上の重量を積載できるロングテールデザインは、収納スペースが広く、配達員にエネルギーを与え、より安定して商品を運ぶことができ、乗り心地も良い。Rybit の e-bike は、1回の充電で最大80km走ることが可能だ。

しかし、配達シーンに合わせたハードウェア設計は基本的なものに過ぎず、本当のポイントは「サプライチェーンマネジメント」にある。

Keego のチーム。共同創業者の Elias Ek 氏(中央)は、ハードウェアサプライチェーンの強さが協業を成功させるカギの一つだと分析する。
Image credit: Keego(智果移動)

企業にとって最も重要なのは e-bike の修理とメンテナンスのコストであり、メーカーには2つの方法があるという点で Ek 氏と Lin 氏は意見が一致している。

1. 部品の交換頻度を減らす

例えば、多くのバイクは駐車時の安定性を考慮してセンタースタンド(二本足)で設計されているため、配達員は無意識のうちにバイクに座って休憩し、バイクの消耗を早めてしまう。そこで、Rybit の車両デザインは、配達員の不用意な動きによって車両が損傷する可能性を最小限に抑えるため、サイドスタンド(一本足)のリクライニングバイクに変更されている。

 2. 安定したサプライチェーン

車が使用される限り、部品交換などのメンテナンスが必要になるが、これは企業にとって避けることのできないコストである。Keego と Rybit の両社は、台湾の自転車業界の強力なサプライチェーンを活用し、それぞれ台中と彰化の OEM 事業者と協力して安定した部品供給源を確保している。

Lin 氏と Ek 氏によると、e-bike のブームが e-bike 部品の「標準化」をもたらし、Keego と Rybit が必要とする部品を提供できるメーカーは、即座に供給需要をサポートすることができたという。

Vanmoof の没落は、Keego と Rybit のアプローチの正しさを証明する可能性がある。Vanmoof は、特別なデザインで独自のエコシステムを構築することを意図した新興消費者ブランドとしてスタートしたが、メンテナンス部品の供給は比較的不安定で、これは大きなリスクになった。

【ポイント2】長期リースに注目、「資産管理」に着目し B2B に参入

コロナ禍がもたらしたハードウェア標準化のメリットに加え、Rybit は別の興味深い使われ方——長期リースも発見した。

Rybit 共同創業者の Mark Lin=林靖徳氏
Photo by Zeng Linghuai(曾令懷)

自社メンテナンスと減価償却、これらすべてが企業にとって面倒なことであるため、ヨーロッパ企業のリースの仕組みは非常に成熟している。(Lin 氏)

Lin 氏によれば、2019年に Rybit が設立された際、まずはバイクシェアリングのモデルでヨーロッパ、シンガポール、台湾の市場に足がかりを作ったが(台湾では Moovo=運点科技というブランド名で運営)、ヨーロッパでは週1回や月1回の長距離レンタルが多いことがわかり、ユーザに質問してみたところ、彼らが皆、配達員であることがわかり、2021年から 2B のデリバリ市場に参入を始めた。

対照的に、「シェアリング」は、個人ユーザの超短期レンタルであるため、車両の監視、ブルートゥースの安定性、IoT スマートロック、クラウド間の連携が非常に重要であり、Rybit はまさにこれらを基盤に安定した車両制御と管理システムを確立した。企業は Rybit の車両とソフトウェアサービスを使用することを望んでいるそうだ。

当社の現在のビジネスモデルは、2種類の料金に基づいています。e-bike のレンタル料と管理ソフトウェアの月額料金です。(Lin 氏)

Rybit の e-bilke 管理システム
Image credit: Rybit

Keego と Rybit は現在、どちらも企業や配達員向けに長期リースを提供している。Lin 氏はまた、ハードウェア部品の標準化が進むにつれて、将来的には Rybitの「資産管理における優位性」が明らかになるだろうと述べた。

Rybit のチーム。Rybit はヨーロッパ市場にコミットしている。
Image credit: Rybit

「バイク王国」の台湾、ヨーロッパでどうチャンスをつかめるか?

Keego と Rybit がスウェーデンの Uber Eats、ヨーロッパのマクドナルド、バーガーキングと提携したことから、ヨーロッパのデリバリワーカーとプラットフォームの間には雇用関係があり、これはサステナビリティの波とも関連していることがわかる。

雇用と請負の違い 雇用 請負
報酬の基礎 与えられた仕事を完了しなくても報酬を受け取ることができる。 仕事の量や時間に関係なく、決められた仕事内容をこなさなければならない
権利と給付 労働基本法、労働保険事業主負担、労働災害保険、雇用保険、定年退職金の6%事業主負担。 保険による保護は一切ない。

Ek 氏によると、ヨーロッパでは Uber のようなプラットフォームが配達員やドライバーを従業員として扱い、配達員の労働権に配慮し、配達車両に補助金を支給することを常に望んでいるという。環境に優しいというコンセプトも相まって、ヨーロッパの大手企業は e-bike を第一の選択肢とすることがトレンドとなり、Uber も今年、新たな持続可能目標として「2040年までに、すべての配達員がゼロエミッション車を使用する」と発表した。

このような大きな波の中で、「バイク王国」として知られる台湾はどのようにしてチャンスを掴むことができるだろうか。Keego と Rybitという2つのスタートアップは、台湾のハードウェアサプライチェーンの優位性と IoT の力を利用し、ハードウェアの上にソフトウェアサービスの価値を導入するという重要なポイントを指摘した。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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