ヒトや犬猫の常在菌を収集し創薬などにつなげるKINS、デット含め15億円を調達——森六HD、第一生命、銀行系VCらから

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Image credit: KINS

総合的な菌ケアサービスを展開する KINS は4日、シリーズ B ラウンド(2回目)で約15億円を調達したと明らかにした。このラウンドに参加したのは、森六ホールディングス(東証:4249、以下、森六 HD と略す)、第一生命保険、SMBC ベンチャーキャピタル、みずほキャピタル。なお、調達額には、三井住友銀行、静岡銀行、日本政策金融公庫、名古屋銀行、みずほ銀行、東日本銀行からのデットが含まれる。

これは KINS にとって、2020年10月に実施した3億円の調達(ラウンド不明)、2022年2月に実施した15億円の調達(シリーズ B ラウンドの1回目)に続くものだ。今回の調達を受け、KINS の累積調達額は約30億円に達した。同社では獲得済の独自菌・原料の事業化、マイクロバイオーム研究基盤の拡大を行う。このうち、独自菌・原料の事業化では、食品やペット用品などの原料として独自菌を企業に販売する計画で、今回参加した投資家からの潜在顧客の紹介を狙う。

KINS がターゲットとするのは、ヒトや犬猫の皮膚、腸内、口腔内にいる常在菌だ。日本・台湾・シンガポールでヒトに化粧品やサプリメントを展開するコンシューマーヘルスケア事業、日本で犬などの歯科や皮膚科などを診療を行うクリニック事業を展開しており、これらの施設を通じて、健康、未病、病気の状態のそれぞれのヒトや動物の菌を集めることで、それぞれの健康状態の菌の種類や状況を把握することができる。最終的に、健康状態に応じた菌の状態の差分を得ることで、製薬メーカーが効率的な創薬に繋げられるという。

菌の状態は患者が知らないところで勝手に捕捉するわけではなく、ヒトに関して言えば、彼らの中から志願者を募り、KINS のラボに来てもらうなどして臨床しているという。ラボの創設から3年を経過し、十分なデータが溜まってきたことから、今回、新たな資金調達を行なって、創薬シーズ事業を本格化させることにしたそうだ。具体的なやり方については、例えば、欧米のスタートアップの中には、仮死状態にした菌を使用直前に混ぜて使う、肌の健康状態改善を意図したクリームや化粧品を開発したところもある。

<参考文献>

具体的にどうやるかは、我々が組む製薬メーカーさんが採用する方法によると思います。あくまで、我々は自分たちの得意とする菌の情報を集めることに注力し、創薬のフェーズは製薬メーカーさんが担当される。前半と後半で役割分担が明確です。(代表取締役 下川穣氏)

Image credit: KINS

下川氏は、口腔内・腸内フローラを専門とする歯科医で、遺伝子や菌を専門としたクリニックの理事長を務め、東京大学分子細胞生物学研究所との共同研究に携わった後、2018年10月に KINS を創業した。KINS が仮に創薬支援だけの事業だったとすれば、ディープテック的な、非常に足の長いビジネスになってしまうが、一方に、化粧品やサプリメント販売、クリニック運営といった B2C ビジネスを展開しているため、両輪でバランスよく事業展開することができるのだという。

製薬メーカーなどと組んで創薬がうまく進み、そうして生まれた成果(新薬など)をコンシューマーヘルスケア事業、クリニック事業などに還元できれば、我々のサプリメント、化粧品、クリニックなどの競合優位性がさらに高いものなります。もちろん、生まれた薬を誰かが独占するということはないので、人類全体が恩恵を受けられることになります。(下川氏)

細菌叢テクノロジーの分野では、腸内フローラ検査サービスを展開するサイキンソーが、腸内フローラ状態をケアできる食品「Mykinso Food」を展開している。また、昨年創業した NERON は、幸福度が高いことで有名なフィンランドの人々に特有の腸内細菌を特定し、それらをカプセル化して提供することで、摂取した人が同じような腸内フローラを目指せ、ひいては、幸福な状態を目指すことができるサービスを提供している。

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