スペイン人連続起業家コンビ、今度はカーサブスクで勝負——9割をデット調達、マーケ効果狙う自動車メーカーが支援か

Image credit: Revel

車もサブスクできるのか? 2023年9月、スペインのカーサブスクスタートアップ Revel が、投資会社 KKR(Kohlberg Kravis Roberts)と Santander Consumer Finance などから総額1億1,500万ユーロ(約182億円)を超える出資を受けたと発表した。

カーサブスクによって、消費者は莫大な出費をすることなく、また修理費用を心配することなく、ドライブの楽しみを享受することができる。しかし、提供する企業にとっては、サブスク料金と自動車を調達・維持コストのバランスを取ることは大きな課題となる。Revel は、詳細は明かさないものの、この課題を解決して投資家の信頼を勝ち取ったと述べている。

自動車にサブスクを導入、自動車所有のあり方を変える

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Revel の共同創業者 Enrique de Mateo 氏と Daniel Marcos 氏がスタートアップで手を組むのは今回が初めてではない。以前には、Neboola を共同創業し、月額フィットネス定額制プログラム「Bonofit」を立ち上げた。Bonofit はドイツのスタートアップ Urban Sports Club の注目を集め、2018年に Urban Sports Club が Bonofit を買収した。2人はまた、定額制コンタクトレンズブランド「Loopas」を立ち上げ、2020年にスペインのブランド Hawkers Group に売却した。

左から:Enrique de Mateo 氏、Daniel Marcos 氏

2人がサブスクにある種のこだわりを持っていることは明らかで、今回は自動車である。Revel は、自分の新車を所有したいが、さまざまな現実のために購入することができない消費者の市場をターゲットとして2020年に設立された。サブスクベースのビジネスモデルは、従来の自動車販売よりも急速に成長しているが、それはユーザに自動車の利用やキャンセルの自由を与えるからだ。

設立から3年間、Revel はさまざまなタイプのカーサブスクソリューションの市場調査を実施した。Revel は調査を通じて、既存企業のほとんどが3~5年の長期リースしか提供しておらず、ユーザの実態や習慣を考えると、消費者にとって魅力的なサービスではなくなってきていること、また、カーアクセサリーや保険など、追加で支払う必要のある項目が多いことに気づいた。この問題に着目した Revel は、これまでのサブスクサービス提供の経験を組み合わせ、短期間の車両サブスクサービスを開始した。

メリットのみを提供

Revel は月額利用料を徴収し、完全なオンラインリース方式を開始した。ユーザは Revel の Web サイトまたはアプリにアカウントを登録する。続いて、基本情報と運転免許証の情報を入力、事前レンタル料金を選択、指定された配達場所を入力するだけで、1週間以内に車を受け取ることができる。利用料金は車両の選択によって異なり、セダンの月額368ユーロ(約58,000円)から SUV の月額1,245ユーロ(約197,000円)まで、個人のニーズによって異なる。

Revel は、「消費者は運転にだけ責任を持ち、あとは Revel チームが面倒を見る」という考え方に重点を置いており、月額料金には基本的な車両サブスクサービスだけでなく、総合保険や車両メンテナンスなどの総合的なアフターサービスも含まれている。同時に、Revel は短期リース契約モデルを採用しているため、消費者は自動車所有後1年を経過すれば、無条件で他の車種を選択したり、Revel 定額サービスを解約したりすることができる。

Revel は現在、40以上の車種を提供しており、将来の交通政策に沿って、現在の車種の約50%は電気自動車である。また、スペインのサステナビリティ企業 CO2 Revolution との提携により、ドローンを使って、走行キロ数に応じた数の種を1台につき1ヶ月に1粒、「Revel の森」と呼ばれるエリアに植えている。

Image credit: Revel

9割をデットで調達、自動車メーカーが支援か

2023年9月、Revel は1億1,500万ユーロ(約182億円)の出資を受けたと発表したが、そのうち1億ユーロ(約158億円)はグロースのためのデット調達で、残りの1,500万ユーロ(約24億円)が事業開発のためのエクイティ調達だった。

Revel が所有する車両の出自は今日現在も謎のままだが、Mateo 氏は、同社の市場における競争力を維持するため、当面は情報を開示しない意向であると述べた。

しかし、TechCrunch によると、Revel が受けたデットファイナンスの内容から、同社と自動車メーカーとの間で、自動車メーカーが車両を提供し、Revel が車両のレンタルサブスクを提供することで、自動車メーカーの車両露出やマーケティングを支援し、Win-Win の関係を実現するようなリース契約が結ばれた可能性があるようだ。

サブスク時代の自動車リース市場の可能性

シェアリングエコノミーとサブスクサービスの時代において、SaaS は AV サービスやストリーミングプラットフォームを徐々に引き継ぎつつあり、この傾向は自動車分野にも徐々に広がっている。

カーリースなど、自動車所有に代わる選択肢は以前からあったが、サブスクは比較的新しい概念だ。サブスク導入は、自動車の所有権を再定義するカギになると考えられる。従来の自動車購入の方法には、多くの事務手続きが必要なだけでなく、購入を求めるプレッシャー、将来のメンテナンス費用がかかるため、消費者は二の足を踏んでしまうからだ。

企業にとって、サブスクの採用は、自動車業界における e コマースアプリを解き放つ鍵になると考えられる。既存のブランドロイヤルティを強化するだけでなく、オンラインサブスクは、新モデルの市場調査を行う機会としても利用できる。電気自動車を例に取ると、価格とアフターメンテナンスのために電気自動車の高い参入障壁は、サブスクの導入によって下げることができ、その結果、電気自動車の採用を促進する。

カーサブスクはまだ始まったばかりだが、過去にも他の分野でサブスクリプションサービスが導入されていることから、このビジネスモデルが一過性のものではないことがわかる。サブスク概念の導入により、より多くの消費者が関連する自動車ブランドに触れ、一連の自動車製品とアフターサービスに対する需要の高まりに応える機会が生まれる。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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