複数のフードデリバリシステムを一元管理、AI分析でバーチャルレストランのメニュー構築を支援するSuperorder

読者は、今でもフードデリバリを使っているだろうか?

コロナ禍に生じた世界的なフードデリバリのブームにより、フードデリバリのためのセントラルキッチンシステムであるゴーストキッチンが話題となっている。スタートアップの JustKitchen は、このトレンドの先端で誕生し、約20のバーチャルブランドの料理をデリバリしており、カナダ、ドイツ、アメリカの3カ国で上場している。

ゴーストキッチンを使えば、事業者が店舗を構えることなく、キッチンとデリバリプラットフォームさえあれば、営業を開始できる。これにより、飲食業の課題は、立地や回転率や客足から、経営とブランディングに変わった。Y Combinator 出身の Superorder は、オンラインレストランのオーナーに、ジェネレーティブ AI によるオンラインメニューのデザインカスタマイズなど、ワンストップのブランドマネジメントサービスを提供している。アメリカのデリバリプラットフォーム「Grubhub(編注:日本からはアクセス不可)」も、メニュー写真が有るレストランは、それが無いレストランに比べて注文数を約70%増やすことができると指摘している。

70人からなる Superorder のチームは、すでに150万件の注文を処理し、180都市で1,500のレストランにサービスを提供している。同社はシリーズ A ラウンドで1,000万米ドルを調達した。

軽食店の商圏拡大に寄与する Superorder

Raghav Poddar 氏

外食ファンで Superorder(旧Forward Kitchen)の創業者 Raghav Poddar 氏は、多くの飲食店は常連客を持つがゆえにブランディングの重要性を軽視しており、その商圏が近隣のみにとどまっていることに気づいた。彼は、これらのレストランが競争力を維持し、最小限のコストでブランドを運営し、インターネットを通じてより多くの顧客層にサービスを提供するための方法を考え始めた。

Forward Kitchen は、デリバリやピックアップサービスの台頭を見越して2019年に設立され、これまで店頭のみで営業していた小規模レストラン経営者のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援している。レストランがオリジナルの厨房機器や食事を使い、人件費を増やすことなく、オンラインでさまざまなバーチャルブランドと渡り合うことを期待している。例えば、ピッツェリアのサラダや特製ドリンクは、元々メインメニューには無かったものだが、オンライン上で別のブランドして提供することができる。

かつては、レストランの経費の大部分は、スペースと人手に費やされていた。しかし、デリバリプラットフォームを利用することで、レストランは運営に必要なスペースを手放すことができ、厨房がデリバリの提供に特化したビジネスモデルを形成することができる。

コスト削減に加え、バーチャルブランドは実店舗とは異なるメニューを提供することで、消費者のブランドイメージを更新することができる。台湾の中・高価格帯焼肉ブランド「Gyen Hutong(胡同焼肉)」は、Just Kitchen と提携し、「胡同焼肉丼× JK 廚房」のバーチャルブランドでどんぶり商品を発売、客層を(やや)手頃な市場へと拡大している。

Forward Kitchen は、オーナーがデジタルショップを立ち上げるのを支援しており、顧客はプラットフォーム上で直接注文でき、プラットフォームは顧客から手数料を徴収する。Forward Kitchen は、異なるチャネルで同時に商品を展開することで、顧客基盤を迅速に拡大できるものの、注文漏れやキャパシティーの見積もりミスが発生しやすく、ブランドイメージが低下した。

そこで、2023年には社名を Superorder に変更。飲食事業者向けにワンストップの管理システムを提供することに注力し、バックエンドシステムを構築することで、UberEats や Grubhub など複数のデリバリプラットフォームでの注文やブランドイメージを一元管理できるようにした。

Superorder はすべてのチャネルを統合するバックエンド管理システムを構築しており、店舗がプラットフォーム上でビジネス情報やメニューを更新すると、UberEats や Grubhub などすべての販売チャネルと同期される。Superorder を通じて、各チャネルから受け取った注文はシステムに取り込まれ、プラットフォーム上で統一された方法で注文受付や払い戻しを行うことができる。

取引の過程で、Superorder は各店舗の販売データも収集し、データ分析アルゴリズムを通じて消費者の好きな食べ物や嗜好を見つけ出し、市場の需要を満たすバーチャルのブランドメニューを設計する。バーチャルブランドを構築する過程で、小規模のレストラン経営者は過剰なコストをかけることなく、顧客ベースを拡大し、さらなる収益を得ることができる。

飲食事業者から見れば、バーチャルブランドやゴーストキッチンは、実店舗に伴うリスクなしに運営することを可能にする。しかし、コロナ感染が沈静化した後には自炊に戻る人もおり、デリバリ市場の発展は以前ほど楽観視できない。

アメリカ、カナダ、イギリスで700店舗のゴーストキッチンをオープンする予定だった大手ファストフードチェーン Wendy’s は2021年、コロナ禍で消費者の需要に応えられる迅速なサービスが提供できなくなったとして、アメリカ国内のゴーストキッチンをすべて閉鎖すると発表した。

Superorder はオーダーの一元管理からスタートし、ケータリング事業者の最大のペインを解決したが、次に付加価値を加えてケータリング店舗の仮想ブランドを確立したいと考えている。 たとえブームが沈静化したとしても、Superorder が事業を継続していく上でボトムアップの需要は依然として存在するはずだ。

<参考文献>

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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