欧州宇宙機関やエアバスも注目、web3で航空宇宙産業を革新するスロバキア「3IPK」

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3IPK の主要メンバー。最右が共同創業者 Juraj Zamecnik 氏
Image credit: 3IPK

目に見えないものに対して懐疑的になるのは人間の性だ。今年9月、NASA(アメリカ航空宇宙局)は月面に多数の「データキューブ」を設置した。未来の宇宙飛行士がデータキューブを使って月面でサインインとサインアウトを行い、同時にブロックチェーン上のデータを検証することで、疑念や陰謀説をブロックチェーン上のデータで裏付けることができる。

NASA だけでなく、スロバキアのブロックチェーンスタートアップ 3IPK も、宇宙におけるブロックチェーンの可能性を見出している。彼らはブロックチェーン技術を使って、航空宇宙のサプライチェーンや衛星画像データなどに関する機密性の高い情報を記録しており、欧州宇宙機関(ESA)やエアバスなどがこのソリューションに賛同している。

3IPK の共同創業者 Juraj Zamecnik 氏はイギリスで航空宇宙工学を学んだ後、ドイツに渡り、民間航空機トップメーカーのエアバスに入社した。長年にわたり、エンジニアリングやプロジェクト管理のさまざまな役職を歴任し、Airbus Defence & Aerospace の COO としてコア事業の経営を担当した。

航空機や宇宙船のサプライチェーンにおける大規模な組織でのデータ管理は複雑で、多くの場合、手作業や実地検証に頼っている。航空機や宇宙船を製造するためには、世界中からシステム、機器、部品を供給する多数のサプライヤーが存在し、あらゆる情報が信頼できるものであることが不可欠だ。もし、その情報に誤りがあれば、離陸や打ち上げ後に深刻な結果を招きかねない。

この大きな問題に取り組むため、Zamecnik 氏は同じ経歴を持つ複数のビジネスパートナーとともに、2019年に3IPK を設立した。3IPKの主な事業は、ブロックチェーン技術を使って、航空宇宙のサプライチェーンデータと衛星画像を追跡・記録し、大規模で複雑なデータを追跡可能にするだけでなく、人為的ミスや改ざんができないようにすることだ。

3IPK のサンプル画面
Image credit: 3IPK

Zamecnik 氏は、会社を設立する前から、ブロックチェーンのコンセプトと仮想通貨分野における技術の有用性を認識していた。データの正確性と信憑性が重要な航空宇宙産業において、Zamecnik 氏は、ブロックチェーンが取引プロセスにおける仮想通貨の完全性とトレーサビリティを保証するように、航空宇宙産業においても同様の問題を解決することができると考えた。

航空宇宙関連のデータには高度なプライバシーが要求されるが、3IPK はチェーンからのデータ流出を避けるため、「情報を直接アップロード」するのではなく、各データから独自の「認証メッセージ」を生成し、そのメッセージをアップロードするようにしている。パートナーは3IPK の特別なシステムを使って、認証メッセージに対応するデータを読み取る必要がある。

これにより、データ漏洩のリスクを低減できるだけでなく、データが認証されたかどうか、どこから来たものかを知ることができる。同時に3IPK は、顧客のタイプやニーズに応じて、さまざまなブロックチェーンソリューションを提供する。例えば、より機密性の高い防衛データにはプライベートチェーンが選ばれ、民間航空データなど機密性の低いデータにはパブリックチェーンを採用する。

例えば、3IPKは最近、フランスの Thales Alenia Space と提携し、気温や温室効果ガスなどの地球観測データに関するデータを管理している。このデータは、適切に管理されれば、都市計画、気候科学、農業、エネルギーなどの分野で利用できる。この提携は、衛星データの出所と信頼性を検証するための強力なソリューションの構築を目的としている。

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