ギフティ、DIRIGIOの持分法適用関連会社化で見えてきた送客事業への本気度

SHARE:
左から:DIRIGIO 代表取締役社長 CEO の本多祐樹氏、ギフティ代表取締役の太田睦氏
Image credit: Masaru Ikeda

先週、e ギフト事業大手のギフティ(東証:4449)は、飲食業向けモバイルオーダーシステム「PICKS」を展開する DIRIGIO の株式を追加取得し、持分法適用関連会社化したことを明らかにした。ギフティはこれまでにも、体験ギフト事業を展開するソウ・エクスペリエンスを子会社化(2021年2月)、カスタムアパレルの paintory を完全子会社化(2022年9月)、クラフトビールサブスク「otomoni」運営の meuron を子会社化(2023年1月)しており、大規模出資を伴う事業連携は4社目となる。

ギフティと DIRIGIO は2021年7月に資本業務提携契約を締結し、ギフティに2名いる代表取締役のうち鈴木達哉氏が DIRIGIO の社外取締役に就任していたが、今回の株式追加取得は、その関係性をさらに深めるものとなることが期待される。ギフティ代表取締役の太田睦氏と DIRIGIO 代表取締役社長 CEO の本多祐樹氏は21日で都内で共同の記者会見に臨み、両社が今後進める協業関係の展望について説明した。コロナ禍明けの急速な需要回帰と人手不足で生じた、飲食業界のペインの解決を念頭に置いたものだ。

使ったことがある人ならわかると思うのだが、ギフティの e ギフトは、一般的なオンラインコマースとは少し変わった仕組みを提供してくれる。ギフトには送る側と送られる側がいるので、商品を購入するユーザと手にするユーザが違うということだ。したがって、送られる側のユーザにとっては、自分が普段、購買習慣の無い店舗やブランドに誘導される体験が得られ、店舗やブランドにとっては、従前のマーケティングチャネルではリーチできなかった、全く新しい顧客を誘導してもらえる機会を得られる。

Image credit: Masaru Ikeda

ただ、ここで問題だったのは、新たに誘導してもらえた顧客を、店舗やブランド側はどこの誰だかわからない、という点だ。対面での接客という点では、店舗やブランドにとっての送客、新規来客者への認知に成功しているのだが、その後のフォローアップ、エンゲージメントには力を発揮することができなかった。理由は、店舗やブランドはもとより、ギフティさえも、e ギフトを送られた側(受け取った側)のユーザの情報を持っていないからだ(厳密に言えば、名前やメールアドレスくらいはわかるだろうが)。

新規顧客をリピート顧客にするという点で、モバイルオーダーはその後のデジタルマーケティングにとっても都合がよい。両社が連携したことで、e ギフトで店舗に誘導された客が、行った先の店で、その後は PICKS を使って、その店舗の〝常連客〟になってくれるという体験をデジタルで実現できるわけだ。ギフティと DIRIGIO は ID 連携をすることで、どういうユーザが送った e ギフトを、どういうユーザが受け取り、そして、受け取ったユーザがどう常連客化していったかを追うことも可能になる。

Image credit: Masaru Ikeda

両社のプラットフォーム連携によって。両社はもとより、店舗やブランド側のメリットが強調されていたが、消費者のメリットがいささか薄いようにも思えた。すなわち、e ギフトで商品をもらうだけなら、受け取ったユーザは PICKS 経由で店舗に ID 登録しないで済む。そこを敢えて、PICKS 経由で店舗に ID 登録するメリットはユーザにとって何なのか。零細個店であれば「常連客の予約が優先される」といった特典なども想定できるが、両社が対象とするのはチェーン店舗が多いだけに、ここが少し考えどころかもしれない。

DIRIGIO は2018年5月に PICKS をローンチ以降、テイクアウトを中心とした中食市場でシェアを広げてきた。e コマースやフードデリバリが、カロリーの高い(提供側にとって運用コストが高い)王道サービスだとすれば、ギフティの e ギフトも、DIRIGIO の PICKS も、両社共に、それぞれのスキマ需要(ギフトコマース、中食市場)で戦ってきた感がある。両社が手を組むことで生まれる体験からは、これまで王道プレーヤーが提供してきたサービスに似たものも増えるだろうから、彼らと競合する機会が増える可能性は否めない。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する