Web3のスタートバーンと小田急がコラボ、下北沢に新たな風景をもたらしたアートフェスの舞台裏

左から:スタートバーン 代表取締役CEO 施井泰平氏、小田急電鉄 エリア事業創造部 課長 橋本崇氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

スタートバーンは Web3 スタートアップで、アートの信頼性を守るICタグ付きブロックチェーン証明」を発行する「Startbahn PORT」、NFTを使ってアートの流通や評価を実現するインフラ「Startrail」、簡単にNFTサービスを作成出来る「Startrail API/SDK」を提供しています。

スタートバーンは9月16日から10月1日まで、小田急電鉄と東京の下北沢商店連合会と共に、「月」をテーマにしたアートフェスティバル「ムーンアートナイト下北沢 2023」を開催し、その中で、スタートバーンの「FUN FAN NFT」を使ったスタンプラリーを展開しました。

新宿〜小田原などを走る小田急電鉄では、沿線人口の増加に伴い、主に東京・世田谷地域で輸送力強化のために線路の複々線化を進め、また、交差する道路の渋滞を解消する観点から、東京都が主体で30年以上かけて線路の高架化や地下化を行ってきました。

下北沢駅周辺はまさにその集大成とも言える場所で、地下化に伴い生まれたスペースを「下北線路街」と呼び、その場所で、地域イベントやコミュニティ活動などが以前に増して活発に展開されています。ムーンアートナイト下北沢 2023も、下北線路街を中心に開催されました。

小田急とスタートバーンがリアルイベントで、Web3を使ったビジネスの協業に取り組んだ理由などについて、小田急で沿線開発のための企画などを担当されている橋本崇さんと、スタートバーン代表取締役CEOの施井泰平氏に話を聞きました。

下北沢は、ライブハウスの多さにも象徴されるように、音楽の街としても有名ですね。下北沢駅の地下化の工事が終わり、跡地を開発していく中で、すでにある下北沢のカルチャーにアートを取り入れようと考えたのはなぜですか。

橋本:下北の開発は私が担当になる6年前から、更地のままフリーズしていました。何度か調査会社に調査をお願いしたのですが、その結果、商業開発は難しいという判断からでした。最終的には下北線路街ができたのですが、この企画は市場調査や過去の事例はほとんど参考にしておらず、直感と感性で進めました。

「なぜ実現できたんですか」と聞かれても、何とも答えようのないところなんです。企画のときに必要な直感と感性は、アートから生まれると思うんですね。アートは観察眼、見たままをどう感じるかがすごく大事だと私は理解しています。今の時代、市場調査とかからは生まれない感性や直感力は、アートから生まれるんじゃないかと思ったんです。

下北沢の人にインタビューすると、美術が好きとか、アートが好きとか、美術館巡りが好きとか、答えられる方が多かったんです。そこから、日常的にアートに接する機会ができることで、下北沢の土壌にある直感と感性を育てることに寄与できるのではないかと感じ、このイベントをやってみたいと思ったんです。

Image credit: Startbahn

スタートバーンさんとは、どんなきっかけで出会われたのですか。

橋本:アートにはすごく興味あったのですが、私はあまり詳しくないので、誰かとパートナーを組まなければいけませんでした。我々は支援型開発というのをやっていまして、ここでは小田急が主役ではなく、地域の方々や活動する人を支援するのが我々のミッションです。その中でアートをやりたいとすると、アーティストを支援することが、街にアートが広がることに繋がるんじゃないかと考えました。

アーティストの支援を頑張っている会社がないか探していたところ、下北沢の「BONUS TRACK」いう商業施設に「B&B」という本屋さんがありまして、そこの内沼さん(B&Bの共同経営者 内沼晋太郎氏)が本業界ではすごくネットワークをお持ちの方で、誰かいないか聞いたところ施井さんを紹介してもらいました。

オファーがきたときの印象はいかがでしたか。

施井:内沼君とは、アーティストとして、一緒にユニットを組んだこともあって信頼をしていました。彼がいうには、特定のギャラリーやアーティストではなく、ハブになっていたり、インフラを運営していたりする会社の方が、より広がりを持てるだろうということで小田急さんに推薦してくれたそうです。

橋本さんは、明らかに突破力があるビジョナリーだという感覚がありまして、お話を聞いている限り、スタートアップの社長以上にそれっぽい側面のある方で、さらに内沼君が推薦している理由や背景がわかっていたので興味がありました。大企業と仕事をする機会が多いのですが、担当者の資質がプロジェクトの運命を大きく分けるのはわかっていたので、今回、橋本さんが担当だったことが、話を進める上で前向きになれた理由として大きかったです。

下北沢でのアートプロジェクトは、どのように進めていったのですか。

施井:多くの人の手で実現した企画ですが、コアコンセプトは橋本さんと一緒に作り上げた印象です。他に第三者のキーマンとしてあえて挙げるなら、コロナかなと思います。コロナに対してどのようにアプローチするか、コロナが明けていく中で何をすればいいか、ここは重要視していました。

橋本:ワンチームで頑張ってやりきりました。細かいとこまで口を出すと人を巻き込めないので、担当に全部任せて主体的に動いてもらうようにしています。メインは担当が動いて、我々がいろんなレイヤーの中で壁を突破していくというような感じで動いていました。

下北沢は自立して活動が進んでいくところがが見えてきたので、実務はお任せして、全体の予算に収まっているかだけ見ていました。

また会社の承認を得るのは難しかったですがなんとか突破しました。一応会社には、1年目では結果が出ないので、3年間やらせてくださいと伝えているので来年も開催できると思います。

Image credit: Startbahn

去年が1回目だったと思いますが、去年と今年との違いはどうだったでしょうか。

橋本:圧倒的に人が来ました。あとは認知度が一気に上がったので、去年のことを知ってる人はもとより、SNS等での反響が大きかったので、去年のイベントを知らない皆さんにもきていただくことができ、去年の倍ぐらいになったのではないかと思います。

施井:去年と比べ、今回は事前告知時点でかなりバズっていました。去年にファンが多く生まれ、それが仕込みとなって、今年は大きく飛躍したなという印象があります。また小田急さんの頑張りで、看板だったり、商店街さんとのコラボで街中にいっぱい旗が出ていたりして、今回は最初から期待値がかなり高く、イベントとしても完成度が高かったと思います。

認知拡大に向けての仕掛け、取り組まれたことありましたか。

施井:月というみんなが知っているものをモチーフにし、いろんな作品が月をテーマにしているというのが前提にあったので、必ずしもアートに詳しくない人でも、作家が何をやろうとしてるかがある程度絞られてわかりやすくなります。

月見の文化や体験など普遍的な要素も取り入れることで、(アートに詳しい)限られた人だけが喜ぶような作品ではなく、今までになじみがなかった人にとっても楽しいものになるよう工夫しました。

どの年齢層の人たちがどういうものが好きか、価格帯がどうか、なども分析しました。しっかり分析したことが成果に繋がったと思います。20代前半から30代後半の女性が喜ぶものは盛り上がるというデータもあったので、デート需要と月のロマンチックなイベントは相性が良いということでターゲットにしました。

Image credit: Startbahn

NFTを使ったスタンプラリーを展開されたと聞いています。

施井:我々はインフラの会社であって、イベントや展覧会を主にしてる会社ではないんですが、コロナでデジタルアートのNFTが盛り上がったので、今までとは逆のアプローチで、NFTをリアルイベントに行くきっかけにするという、発想の転換ができないかということを考えていました。

なのでリアルイベントには興味はあったものの、僕らがやるべきかどうかは結構迷いましたが、コロナが来て、リアルイベントから人が離れた中で、人がリアルに戻ってくるきっかけになるような技術提供ができるならば、僕らにとってもメリットが大きいだろうということで始めました。

昨年のイベントの際にはチケッティング機能が無かったので、NFTに興味のある人しか参加してもらえなかったところがありましたが、今回はチケッティングもNFT化することによって、オンボーディングのハードルを低くしました。「もうアカウント登録したんだから、すぐにNFTを取得できる」という状態を作れたのが大きかったと思います。

月を無料で観る人たちに比べて、NFTを取得してる人の割合はまだまだ低いですが、今後はこれを高くしていって、まだムーンアートナイトの中でも伸びしろがあるコミュニティや、地域の人たちとのコミュニケーションを円滑にすることを伸ばしていきたいなと思っています。

Image credit: Startbahn

3回目(2024年)に向けた展望を教えてください。

橋本:まだ皆さんと打ち合わせできていませんが、当初からやりたいことが一つあります。それは台湾と一緒にイベントをすることです。台湾の団体とコロナ前から一緒に連携しようと話しをしていまして、最近コロナも落ち着いてきたのでそろそろ連携を復活させようと動き出しています。台湾のアート業界と日本を繋いで、一緒に月を見上げられたら面白いなと考えていますがまだまだ調整が必要ですね

施井:月というモチーフは普遍的なので、ムーンアートナイトの1回目から、日本国内だけじゃなくてタイ、ドイツ、中国、台湾など世界的にバズりました。この普遍性を生かして、グローバルに展開するのは非常に面白いなと思ってます。

下北沢は、意外にも展覧会や美術作品を置くスペースが少ないので、どうしても展示作品数が少なくなってしまってたんですが、来年、以降可能ならば、店舗内などのスペースも活用させていただき、たくさん作品が展示できるようにして、若手の勢いのある作家の作品をたくさん展示したいです。

あと映画館、ライブハウス、劇場、音楽バーなど、そういった下北沢ですごく活動が盛んなカルチャースポットと連動することは、今後のムーンアートナイトの伸びしろの一つとして捉えています。

Image credit: Startbahn

下北線路街と、今後、どのようなことに取り組みたいですか

施井:地域×アートという取り組みにおいては、ムーンアートナイト下北沢は、業界でも類を見ないぐらい成功してるモデルなんじゃないかと思っています。具体的に関係者からフィードバックを受けることもあり、これほど多くの人が喜んでくれるアートイベントは今までになかったと思います。

アートは大衆化しづらく、不特定多数の老若男女、誰もが楽しめるようなアートはなかなか作れません。一般ウケしようとするとポップになりすぎてアート好きが離れていったり、アート好きが多すぎて、誰も見に行かなくなってしまうかのどちらかになる傾向があります。

ムーンアートナイト下北沢は奇跡的なバランスで両立の可能性が広がっているので、この上でやれることは多いと思います。最初の頃に期待してた以上の何かができるかもしれないと思っています。

橋本:駅をもっと使いたいです。駅の空間は大きいのに何も使ってないので、ギャラリーにしたいなと思っています。期間中、駅は一番人が集まるところなので、そこにサービスを提供していきたいです。

ありがとうございました。

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