MWC併設イベント「4YFN」が10周年、〝アナログ〟量子コンピュータ開発のQilimanjaroがピッチ優勝

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Image credit: 4YFN

26日〜29日、スペイン・バルセロナでは世界的テックイベント「MWC」に併設される形で、スタートアップに特化したイベント「4YFN」が開催されている。4YFN とは「4 Years From Now」の頭文字をとったもの、すなわち、「これから将来4年後に世の中を騒がせそうなスタートアップを一緒に見つけましょう」という意味がこめられている。

今年で10回目を迎える 4YFN を組織しているのは、イスラエル出身のスタートアップ投資家として有名な Yossi Vardi 氏(関連記事)で、彼は DLD(関連記事)や ロンドン・シンガポールの InnovFest Unbound(関連記事)といった他のスタートアップイベントの開催にも関わっている。今年は、MWC と 4YFN で200カ国から9万人が参加したとみられる(詳細値は未発表)。

この 4YFN でのハイライトの一つが、ピッチコンペティションの結果、審査員による投票で最優秀と評価されたチームなどに与えられる「4YFN Awards」だ。世界中からエントリがあり、予選を通過した50チームが 4YFN 会場でのピッチコンペティションに参加し、その結果、地元バルセロナの量子コンピューティングスタートアップ Qilimanjaro Quantum Tech が晴れて優勝の座を獲得した。

Qilimanjaro Quantum Tech の「X」から
Image credit: Qilimanjaro Quantum Tech

Qilimanjaro はバルセロナ大学から生まれた、ハードウェアとソフトウェアを開発するフルスタックの量子コンピューティングスタートアップで。高品質の量子ビットアーキテクチャと「量子エラー訂正を必要とせず、そのため市場投入を早めることができる超伝導ベースのコヒーレント(純量子的)量子アニーラー」の開発に注力している。

同社は、産業応用に有利な初の量子コンピュータの製造を目指している。現在のデジタル量子コンピュータはエラーが多すぎることが問題となっているが、アナログ量子コンピュータ、コヒーレント量子アニーラー、シミュレーターを用いることで、この制限を回避する。

この技術は、実世界のアプリケーションを実行するために活用が可能だが、CEO の Victor Canivell 氏によれば、Qilimanjaro のアナログ量子コンピュータは、物流、金融、エネルギー分野などでのタスク最適化、材料や製薬研究産業での化学的・物理的プロセスの量子シミュレーションの2つのユースケースで最も有望だという。同社は、Intel Ignite からノンエクイティの支援を受けている

ファイナリストには Qilimanjaro 以外に、子供がクルマに取り残されていないかを検出するレーダー検知技術を開発する韓国スタートアップ Bitsensing、高濃度乳房(デンスブレスト)の女性に対してもマンモグラフィーで乳がんの疑わしい所見を検出できる AI を開発するイスラエルの Mica Medical、「海洋生物多様性再生プログラム」を開発するバルセロナの Ocean Ecostrucutures、声帯に障害がある人の声をリアルタイムでその人の自然な声に変換するオランダ発のアプリ「Whispp」が選ばれた。

今回優勝した Qilimanjaro には、優勝賞金2万ユーロ(約327万円)が贈られた。

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