進化が止まらない「映像生成AI」3つのトレンド/GB Tech Trend

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475万ドルの調達を発表した「Beeble AI」
IImage Credit: Beeble AI

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

プロも認める「映像AI」を目指す

まるで本物の映像のように錯覚してしまう動画生成AI「Sora」や「Runway」に注目が集まっています。しかし、いまだにこれらのAIモデルは、ランダムなコンテンツをしばしば生成してしまうなど改善点も多い状況です。プロフェッショナルが使うサービスとなるためには、たとえば元映像素材を勝手にAIが編集しないなどの、高いクオリティと使い勝手が求められます。

今回紹介するVFXスタートアップ「Beeble AI」は、こうした課題を解決した生成AIを開発し、クリエイターが完全に制御できる映像制作サービスの確立を目指しているスタートアップです。このたび475万ドルの資金調達を発表しました。同社は現在、グリーンバックにAIを活用したバーチャルライティングサービスを軸に事業を展開しています。今後は先述したようなプロクリエイター向けの映像生成AIの提供を目指しており、今回の調達はその開発に使われる予定です。

「映像生成AI」3つのトレンド

Beeble AIのような映像生成AIには、3つの新たなトレンドが起きています。

1. 個人向けサービスの発展

1つは、個人向け映像編集AIサービスの普及ですたとえば「Captions」などが先行事例として挙げられます。Sequoia CapitalやAndreessen Horowitz(a16z)らが出資するスタートアップで、Instagramなどで活躍する動画クリエイター層をターゲットに、手軽にAIを使った編集を行えるオールインワン編集サービスを提供しています。スマホファーストで活躍する、アマチュア系クリエイターなどがサービス対象です。

こうした消費者向けサービスの登場にあわせて、法人向け領域も追従して盛り上がる現象がこれまでも多くの市場で見られました。たとえばSlackのようなサービスも、FacebookやX(旧Twitter)などのソーシャルでのチャットコミュニケーションが広く普及していたからこそ、法人向け領域でも受け入れられたと言えるでしょう。Beeble AIが、消費者向けの映像系生成AIの利活用がさらに進むと考えているのであれば、このタイミングでの開発を急ピッチで進めるのも頷けます。

2.大手による買収

2つ目は大手企業による買収です直近では5月にCGソフトサービス大手「Autodesk」がAI VFXスタートアップ「Wonder Dynamics」を買収しています。またBeeble AIとは少し領域が異なりますが、動画編集サービスの「Frame.io」はAdobeに買収されました。いずれも大手サービスの手の届かないバリューを提供することで、Exitに結びつけることに成功しています。こうしたExit実績が続いているのも、映像生成AIに関するポジティブなトレンドの1つです。

3.プラットフォーム化

最後は、プロダクトのプラットフォーム化です。プロダクトに複数の機能を付与し、当該領域のプラットフォームとなる拡大戦略はこれまでもまざまな分野で見られてきました。たとえば、a16zが出資する「Descript」はPodcastクリエイターのためのAI機能をバンドル提供し、プラットフォーム化を図っています。

Beeble AIは創業チームがAIバックグラウンドを強く持っていることもあり、現在は単一機能(バーチャルライティング)の提供に制限されています。しかし、ゆくゆくは映像編集に関わるあらゆる機能を持ち得るプラットフォームへ舵を切ることも見込めるでしょう。

また、バーチャルプロダクト(CGで描いた商品)を自然な形で映像内に差し込む、ポストプロダクションサービス「Ryff」の過去事例も参考になります。残念ながら、Ryffは生成AIトレンドの前だったこともありクローズしてしまいましたが、同社の事例に倣い、映像編集 + 広告市場に打って出る戦略も考えられそうです。この拡大戦略のとりやすさも映像生成AIへの期待を後押しする要因の1つと言えるでしょう。

Beeble AIのようなAIプロダクトは今後も多く登場するでしょうが、どこが覇権を握るのかに引き続き注目が集まります。

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